さぬきうどんのメニュー、風習、出来事の謎を追う さぬきうどんの謎を追え

vol.4 新聞で見る讃岐うどん

新聞で見る/昭和45年の讃岐うどん

(取材・文: 、田尾和俊)

  • [nazo]
  • vol: 4
  • 2017.02.06
 昭和45年(1970)の日本で一番の出来事は、3月から9月まで約半年にわたって大阪で開催された万国博覧会でしょう(あの「月の石」がやってきた大阪万博です)。で、「万博と讃岐うどん」と言えば、香川の讃岐うどん界には「大阪万博で讃岐うどんの店が大人気を博し、一気に讃岐うどんの名が全国に広まった。また、それを機に香川県内でうどん専門店が増え始めた」という話が、どこからともなく薄く伝わっているようです。かつて、讃岐うどん界の長老の方々から「万博会場で手打ち実演の讃岐うどんが大人気を博した」という証言があったり、後に香川県のタウン誌『TJーKagawa』が平成10年ごろに存在した香川のうどん店約700軒の「開業年」を調査したところ、昭和46年からうどん店の開店数がぐっと増えていることを発見したこともあって、「万博が讃岐うどん隆盛の一つの契機になったのではないか?」という仮説が出てきたのではないかと思いますが、当時の新聞記事を集めてみると、どうもその仮説の雲行きが怪しいような…。とりあえず、昭和45年の万博関連の記事からご覧ください。讃岐うどん、何か冷たい扱いをされていますよ(笑)。

<昭和45年 大阪万博の香川県関連記事>

5月8日

●万国博にねらう 「香川県の日」の大うちわ
入場者にプレゼント 宣伝にも一役果たす

 丸亀団扇商工業協同組合では県からの注文で万国博「香川県の日」へ出品する大うちわ四本を作っていたがこのほど完成、県を通じて万国博会場へ送ることになった。この大うちわは同組合の職人五人が約一週間がかりで作り上げたという超特大級。うちわの高さは一・三メートル、幅一・六五メートル、うちわの持ち手だけでも一・二メートルから二メートルもあるという。

 十三日から十六日に「地方自治体館」と「いこいの広場」に出品され、香川県の宣伝に一役果たすことになった。このほか、十センチ余りのミニうちわ八千本も作られ、これには香川県の代表的な民踊が紹介されている。このうちわは期間中会場を訪れる人たちにプレゼントされるが、地元ではこれを機会に”丸亀うちわ”を売り出そうと張り切っている。

→大阪万博の「地方自治体館」というパビリオンで、47都道府県が4日ずつ「○○県の日」という地元PRの催しをやりました。さて、「香川県の日」に香川はどんなことをやったのか?

5月14日

●「香川県の日」開幕 万国博
薫風に県旗高らか 世界に讃岐紹介
「一合まいた」で景気づけ

 世界の人たちに香川県の姿を紹介する万国博・地方自治体館「香川県の日」が十三日開幕した。同日は朝からカラリとした”さつき晴れ”に恵まれ、”光あふれる香川”の行事にピッタリするような初夏の太陽が輝き、万国博会場へは午後五時現在で二十四万人の観客が繰り込んだ。

 午前九時半から地方自治体館中庭の”いこいの広場”で原香川県企画部長、村上地方自治体館副館長、桜井香川県大阪事務所長ら関係者約六十人が出席して開会式が行なわれた。

 まず自治体館ホステスの三好久美子さん=善通寺市稲木町出身=をはじめ、ミス万国博の小沢亨子さん=高松市西ハゼ町出身=藤本京子さん=同市仏生山町出身=ら女性五人が県民歌演奏のうちに五本のポールに県旗を掲揚した。

 次いで原香川県企画部長が「万国博会場を訪れた内外の人たちを通じて力強く発展する郷土・香川の姿を知ってもらう絶好のチャンス」とあいさつ、村上地方自治体館副館長が「古い伝統を持ち、新しい産業が芽生えている香川なので、きっと立派な県の日の催しとなるでしょう」と祝辞を述べた。最後に、この日会場に一番乗りの静岡県磐田市の吉沢直記ちゃん(四つ)らが紅白のテープにハサミを入れ開会式を終わった。

 このあと、正午から「いこいの広場」の六角ステージで郷土民謡が披露される予定だったが、観客が早くから詰めかけたため、開演時間を繰り上げ午前十時、鎌田郷土民踊団長の「芸どころ讃岐の心意気を見せよう!」との合図で、この日のために練習を重ねてきた踊り子四十人が繰り出し、高松まつりでおなじみのさぬき踊り「一合まいた」や全国に知られる「こんぴら船々」ら五つの郷土民踊を次々に披露、外人を含めた観客の盛んな拍手を浴びた。

 また、”栗林公園箱松”の大写真パネルを飾った特別展示室では、キンマ、存清など伝統美術、工芸品、盆栽、カンカン石の民芸品などが展示され、観光映画の上映も行われた。いこいの広場では、丸亀特産の大うちわを飾り、踊り見物客には、県職員らがミニうちわを配った。香川の日は十六日までで、地方自治体館のレストランでは讃岐名物の手打ちうどんもメニューに加えるなど、期間中地方自治体館を香川一色に塗りつぶす。

「格調高い展示」と自画自賛の金子知事

 ”エー 一合まいたモミの種”地方自治体館・いこいの広場は、十三日終日にぎやかな讃岐民謡のおはやしが流れ花やいだふん囲気。出しものは「こんぴら船々」「こんぴら船々ばやし」さぬき踊り「一合まいた」「正調一合まいた」「讃岐ばやし」の五曲。

 踊り子四十人は香川民踊連合会讃岐囃保存会、こんぴら民謡保存会、観音寺民俗芸能協会から選抜の連合チーム。およそ一年前に人選、毎週一回の割りで練習を重ねてきたという。六角ステージのまわりは厚い人がきが作られたが、中でも「さぬきばやし」のコミックな踊りが人気を集め、外人も”コミックフォークダンス”に見とれていた。

 また、福井から来たある団体客は「こんぴら船々」の踊りに「金刀比羅宮は参拝したこともあるが、一度正調こんぴら船々の踊りを見たかった…」と喜んでいた。

 舞台構成に当たった島田・島田芸能舞踊学校長は「舞台効果も予想通り、観客の評判もよい。一日三回の公演だが、ゆくゆくは観客にも踊りの手ほどきをして踊りの輪に加わってもらう」と話していた。金子知事は忠子婦人とともに午後四時前、会場を訪れ、特設展示室では「格調高い展示」と自画自賛、ステージの踊りに拍手を送っていた。

→「香川県の日」の香川の演し物は、「踊り」と「特産品展示」の二本立てで構成。新聞記事は「踊り」の紹介がメインで、物産紹介がちょっとだけ。讃岐うどんは館内のレストランで出した程度で、どうもほとんど力が入ってないみたいです。

5月15日

●讃岐の踊りはえーのぅー 万国博香川県の日
“生きる喜びがある” ミニうちわもPRに一役

 万国博・地方自治体館”香川県の日”二日目の十四日は初日以上の”さつき晴れ”で観客の足を誘った。香川県関係者は、観客にPRのマッチやミニうちわをサービス、郷土芸能の踊り子も一だんと張り切るなど香川県の日の盛り上げに一生懸命だった。

 開幕以来五回目の万国博見物という中川以良万博香川県推進運動協議会会長(四国電力会長)が昼前地方自治体館を訪れ、特設展示場を見たあと、同館中庭のいこいの広場のステージ脇の郷土芸能に見入っていた。「高松まつり・一合まいた」などなじみのおはやしが流れ出すと手拍子を打つ熱の入れようで、「お天気に恵まれたのは何よりだ。特設展示場は香川の伝統美術工芸の粋を見るようだし、踊りも讃岐の風土をよく表して面白い。他の県の日の催しに絶対負けないものだ」と印象を語っていた。

 ステージを取り巻く観客の中には外人の姿も目立ち、踊りの輪にカメラを向ける人やゆかた姿の踊り子と一緒に写真をうつす一コマも見られた。アメリカ・テキサス州からきたというインテリアデザイナーのユージン・フレッシャーさん(四〇)は「動きがとても美しく、生きる喜びが踊りににじみ出ているようだ。それに年をとった人がうまく踊るのに驚かされた」とほめていた。

 午後二時前、坂出農協(本部・坂出市元町一丁目)の団体四十五人がいこいの広場に現われた。一行は、この朝九時の開門と同時に入場、アメリカ館、みどり館、三菱未来館を見物して地方自治体館に着いたものだった。いこいの広場に着くなり「ああ歩き疲れた…」といすや地面にどっかと腰を据えた。ちょうどこの日二回目の郷土芸能が始まったところで、郷土の踊りに「やっぱり讃岐の踊りはえーのぅ…」と語り合っていたが、一行の坂出市宮下町、本丸太洋さんは「香川県の日に万博見物が出来たのはラッキーだった。みやげ話が一つふえました」と喜んでいた。踊り子も郷土勢の声援を得て猛ハッスル。屋島ダヌキのぬいぐるみも浮かれ出て「さぬきばやし」をおどけた身ぶり、手ぶりでひと踊りして人気を集めていた。

 特設展示場の入り口には、黒松、錦松、五葉松、盆栽がずらりと並べられ、同展示場を訪れる観客の人目をひいている。産地の高松市鬼無町からわざわざ取り寄せたもので、即売もしている。値段は三百円程度の錦松の苗から最高は四十万円の錦松のハチ植え。値段や栽培方法を聞く人が多いが会場は大きいものを持ち切れないのか、売れ行きはあまり芳しくないようだ。また五色台特産のカンカン石でつくった木琴ならぬ”石琴”が人気を集め、たたいて独特の音色に聞き入る人が多かった。

→「香川県の日」の2日目も、記事は「踊り」がメイン。物産は漆と盆栽がメインのようですが、盆栽の売れ行きは「あまり芳しくない」って、この頃の四国新聞は県の催しでも正直に報道してたんですね(笑)。ちなみに、讃岐うどんには全く触れられていません。

5月16日

●うっとり世界の目 万国博香川県の日

 十三日から始まった万国博・地方自治体館の”香川県の日”はきょう十六日で四日間の行事を終える。期間中、好天に恵まれて観客の出足も上々だった。これまでの「県の日」が寒かったり雨にたたられたりの連続だっただけに関係者は「全くついていた。”光りあふれる香川”を地でいったようなものだ」と手放しの喜びようだった。

 特設展示場は栗林公園「箱松」の大写真パネルをバックに香川県在住一流作家の手による漆芸を中心に展示、讃岐美術館の開館を思わせたが、一日約三千人の同展示場入場者の中には「どうも高級すぎてわからない…」ともらす人もかなりあった。この中にあって民芸品の一つとして出品したカンカン石は同種のものがほかにないためか人気を集め、即売場でもかなり売れていた。

 さらに人気を集めたのが郷土芸能の曲目を刷り込んだ丸亀特産の”ミニうちわ”。いこいの広場での郷土芸能公演のたびに踊り子がステージの回りで配って歩いたが、奪い合いになるほどの人気ぶり。このうちわで”風を切り”ながらパビリオン回りをする観客が会場のあちこちで見られ、”帽子””タスキ””ガイドブック”の万国博見学三種の神器に新しく仲間入りし”四種の神器”。

 郷土芸能の中で全国に名を知られているといえば「こんぴら船々」一つだけに「どれだけの人が関心を持って見てくれるか…」とフタをあけるまで関係者は気をもんでいたが「さぬきばやし」を中心に人気は上々。一回四十分の公演の間、ステージ周辺の観客はほとんど動かなかった。地方自治体館職員も「こんなに踊りが熱心に見られる県は珍しい」と驚いていた。リーダー格の円尾清子さんは「晴れの舞台で踊れたことは踊り子みょうりに尽きます。今後の励みにもなります」と感激の表情だったのが印象的。

 すべて好調の中にあって、同館レストランの讃岐手打ちうどんは「高くてまずい」とあまり評判は芳しくなかったようだ。総指揮に当たった原香川県企画部長は「小さな県ながら”よくやる”と印象を内外に示せたと思う成果は十分にあった」と胸を張っていた。

→やっと讃岐うどんの記事が出たと思ったら、「すべて好調の中にあって、讃岐うどんの評判は高くてまずい」って! 香川県、一世一代のPRの舞台なのに讃岐うどんには全然力を入れてないし、新聞もうどんに辛辣な報道をしていたことが判明!

5月17日

●”ミニうちわ”を贈る スウェーデン皇太子もご覧

 万国博地方自治体館「香川県の日」最終日の十六日、万国博会場を訪問中のカール・グスタフ・スウェーデン皇太子が同館に立ち寄り、香川県の郷土芸能をご覧になった。「香川県の日」は好天に恵まれ連日内外から多数の観客がつめかけ、これまでの「県の日」には見られない盛り上がりをみせていたうえ、さらに北欧の若きプリンスの来訪に県関係者は「さすが万国博、香川県の日は国際色豊か」と大喜びだった。

 グスタフ皇太子は十五日の「スウェーデン・ナショナルデー」に出席のため日本を訪れているもので、十六日はスカンジナビア館、ソ連館、みどり館、アメリカ館などを訪問したのに続いて午後二時すぎ、地方自治体館においでになった。同館の宮内弥館長や、三好久美子さん(善通寺市出身)ら同館ホステスの案内で館内をご覧になったあと、いこいの広場に立ち寄られた。ちょうどステージでは「さぬきばやし」の始まるところ。円尾清子さん(高松市福岡町)らさぬきばやし保存会のメンバー二十五人がコミックな踊りを披露、縫いぐるみのタヌキからグスタフ皇子に”ミニうちわ”をプレゼントした。宮内館長が「たくさんのタヌキが浮かれているところを踊りにしたものです」と説明していた。若きプリンスがおいでになるというのでステージ周辺にはこれまで最高のおよそ四千人の観客がつめかけたが、香川県議会の鎌田道海副議長をはじめ、議員二十三人の姿も見られた。円尾さんは「踊る手も思わず力がはいりました。県の日の最後を飾れてうれしい」と話していた。

→「香川県の日」最終日も、讃岐うどんの記事は全くなし。

9月11日

●万国博あと2日 香川県を見る
郷土の姿浮き彫り 格調高い伝統工芸

 三月十五日に幕を開けた万国博は、あと二日で百八十三日の会期を終える。「人類の進歩と調和」のテーマのもと参加七十七カ国が技術と文化の粋を集めた”世紀の祭典”だったが、内外から万国博史上最高の六千万人を越える観客が詰めかけ、数々の話題を生んだ。会場に比較的近いという好条件に恵まれた県下からは、推定延べ六十万人が千里丘陵に足を運んだとみられ、数字だけでいえば県民の三分の二がパビリオンを駆けめぐり、催し物を楽しんだことになる。また県関係では特産品の展示や郷土民踊などの催しで郷土の姿を浮き彫りにするなど、国際交流を果たした。

 県と万国博の結びつきは地方自治体会館。同館は県をはじめ全国四十七都道府県、市町村、各議会など地方公共団体が約十五億円を出し合った。「躍進する地方自治 開けゆく日本列島」がテーマだったが、県関係は、県花のオリーブとともに”番の州工業地帯””香川用水””坂出人工土地”などを紹介するスライド上映があったほか「彫り抜き漆器」の原型といわれる”松角切り盆”や、約三百年前こんぴら参拝者のみやげ用として作られた”元黒うちわ”の展示にとどまり、観客に拍子抜けの感を与えた。

 同館の呼び物としてローカルカラーを競い合う「県の日」が催されたが、香川県は五月十三日から四日間、特設展示場で彫漆パネル、キンマ香盆、存清飾り盆など伝統工芸美術品を並べ、同館中庭の”いこいの広場”で郷土民踊を披露した。特設展示では多くの県が観光を主に花やかさを競い合った中にあって、県はいわば「渋さ」を見せたものだったが、観客の中には「どうも高級すぎてわからない…」ともらす人もかなりあった。しかし異色ということでは一応の成功といえたようで、格調高い県の印象を観客に植え付けた。四国では徳島、愛媛県もそれぞれのお国自慢を出し合ったが、高知県は台風10号で大きな被害を受け、復旧に全力を上げるため九月六日からの「高知県の日」を取りやめ、各方面の同情を呼んだ。

 世界の催しを一堂に集めたお祭り広場は、万国博の主役だった。ここでは、七月から八月にかけて全国の伝統的な祭りを紹介する「日本のまつり」が開かれたが、県からはさぬきばやしが登場した。さぬきばやしは、すでに「香川県の日」でお目見えしていたが、数少ないオリジナルもの。八木節(群馬県)佐渡おけさ(新潟県)ねぶたまつり(青森県)など他県の伝統行事に比べ観客にはなじみの薄いものだったが、コミックな踊りは好評だった。こんぴら船々のほかに全国に知られる民踊が見当たらないところから「万国博出演で評判がよかったのを機会にさぬきばやしを全国に通じる民踊に育てる」と、関係者は、売り出しに自信を強めたようだ。また、”世界の市”に出演した大川郡大川町の南川太鼓も話題の一つだった。

 県から”千里もうで”の主役は、やはり農協と修学旅行生。農協団体はほぼ連日、姿を見せた。米・ソ館に集中というスケジュールに無理があったためか、比較的観客が少なかった四月ごろでさえ疲労を訴える人が多かった。夏休みにはいっては家族連れがふえ、宇高連絡船や関西汽船は子供を連れた万国博見物客でいっぱい。万国博にはいる前から行列と忍耐をしいられていた。

 万国博会場ではミス万国博ホステス、地方自治体館ホステスなどでも県人が活躍したが、あるホステスは「日本人の観客の多くは”いくつ回った”と見物したパビリオンの数ばかり気にして、エキスポそのものを楽しんでいなかった。行列の連続で、パビリオンにはいるのに精いっぱい。”進歩”はともかく”調和”は感じられなかった」といっていた。

→そして万博終了へ。新聞報道を見る限り、昭和45年の香川県は、讃岐うどんを全国にPRしようという気があまりなかったみたいです。もしかしたら行政とは関係ないところで讃岐うどんの店が万博に出展して大盛況! ということがあったのかもしれないけど、それでも新聞で全く話題にもなってないから、やっぱりなかったのか…「大阪万博で讃岐うどんが全国に知れわたった」という話は、やっぱりどうも怪しい(笑)。

岡谷幸子、田尾和俊

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