うどんの言葉遊び

子供の頃のうどんにまつわる思い出はありますか？

「たどつのかどのうどんやで　うどんろっぱい　はらどぶどぶ」

いきなり何ですか、それ？

　「ど」を「ろ」に替えて言うんや。「たろつのかろのうろんやで　うろんろっぱい　はらろぶろぶ」。言いにくいやろ。そんな遊び。子どもの頃、はやっとった言葉遊び。

それはいつ頃の話？

昭和16～17年頃かな。私が小学生だった頃。

高松市内のうどん屋にはかき氷もあった

子どもの頃にうどん屋はありましたか？

今の二番丁公園のあたりに当時住んどった家があって、二番丁小学校（現・新番町小学校）の南の道と権現さん（現・錦町王子神社）から香大（現・香川大学）の方に向いて行く道の交差点の東側の角に「ひろや」いううどん屋があった。二番丁公園から西に向いて、突き当たった角。今、耳鼻科（現・堀耳鼻咽喉科医院）のあるとこらへん。はす向かいに「神内」いう餅屋もあったな。

「ひろや」さんのメニューは？

かやくうどんとか、かけうどんだったと思う。他は知らん。金額はおぼえてない。病気の時ぐらいしか食べさせてもらえなんだんよ。おかもちにいれて、家まで持って来てくれよった。

出前ありだったんですね。製麺はそこでしていましたか？

しよったように思うけどなぁ。忘れた。ああ！　夏はかき氷もあった。サイダーかけて食べるんで。

うどんやで？　かき氷？

そうや。

おいしい記憶は「アズマヤ」のうどん

おいしいと思っていたうどん屋はどこですか？

「アズマヤ」やな。戦後やから昭和21～22年頃かな。前は紺屋町の角にあったやろ。あそこ。空襲で焼け野が原だった中にバラックで店が建ったんや。そこでぜんざいを売り始めたんよ。高中、高女（現・高松高校）の生徒はよう寄り道した。

うどんは？

ぜんざいから始めて、わりとすぐうどんも始めた。おいしいと評判になった。夏はソフトクリーム。さぬきは喫茶店にうどんがあると驚かれるけど、その元祖やわな。女学生は喜んで寄りよったよ。うどんは、かけうどん。鰹ダシでおいしかった。

いりこでなくて？

わからん。感じ、鰹だった気がするなぁ。今も鰹と違う？　ずっと行ってないけど。とにかく、ちょっと他と違うかったんよ。ダシの味が。

かやくは何が入っていましたか？

卵焼き、のり、ちくわ、しいたけ。七味もおいしかった。

味や具など、途中で変わってない感じ？

あんまり変わってないと思う。昔からあんな味やった。私は「アズマヤ」みたいなうどんが好きや。最近のうどん屋のうどんは固うていかん。あれ、コシとちがうで。前の方がおいしかった。さぬきの夢はいかんわ。前の方がおいしかったで。

高松市内のうどん屋の記憶

他には、どこにうどん屋がありました？

香川大学の教育学部の門を出たところあたりに一軒あった。今のローソン（番町3丁目店）のあたりかな。大学の事務をしていた職員さんの家がうどん屋を始めた。その人のおかあさんがしよった。私が大学2年の時やから、昭和28年頃かな。職員さんも事務の仕事やめて、店を手伝いよったな。うどんは、かまぼことねぎの入ったかけうどん。炒めたうどん…焼きうどんもあった。みんなで奨学金もろたらそこにうどん食べに行こう言うてて、「食学金やの」いうて言よったんや。それと、私が勤めとった頃な。鶴尾小学校の正門の前の橋の袂（たもと）にも製麺所があったで。学校の先生もよう食べに行っとったわ。うどんとばら寿司を売っりょったなぁ。学校の周りは結構うどん屋があった。

高松の商店街のあたりには？

今の片原町の丸福そばのあたりに「利休」いう店があった。昭和27年頃から、40年頃まであったと思う。もとはお好み焼き屋。お好み焼き屋と一緒にうどんするところが多かったんよ。鍋焼きうどんがあったわ。あんたもおばあちゃんによう連れて行ってもろたやろ。
＊聞き取り相手は筆者の母です（笑）。幼児期に祖母に連れられ、その店に行った記憶があります。鍋焼きうどんをいつも祖母が食べていて、それを取り分けて食べさせてもらっていました。店の入り口が石積みでした。

疎開先の丹生では煮干しとうどんを交換していた！

戦時中はどうでした？

丹生（現東かがわ市）が疎開先だった。戦時中は食糧難でな。丹生に製粉所があった。水産関係の仕事をしていたじいちゃん（母の父親）が煮干しを一袋調達してきて、その店に渡すと小麦粉を練った固まりをくれる。それを持って帰るんよ。着物の帯とかと替える人もいた。（交換としては）これくらい（両手を脇幅くらい）の煮干しの分量でこのくらい（赤ちゃんの頭くらい）くれる。わりに少ないな、ケチやなと思たけど、きれいな白い小麦粉の固まりだったけん、ええ小麦粉やったんかもしらん。それを持って帰ると大人がうどんにして食べさせてくれた。生麺より柔らかい感じのうどんだった。当時はおごちそうだったんよ。