香川県民のさぬきうどんの記憶を徹底収集 さぬきうどん 昭和の証言

仲多度郡琴平町・昭和21年生まれの女性の証言

法事のうどんは煮干しを使わなかった?!

(取材・文:

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  • vol: 161
  • 2016.12.05

 うどんの風習なあ。法事の時な。うちは新家やから法事がなかったんやけど、本家(同じ琴平町)の法事は必ずうどんが出よったわな。昔(昭和30年代)は家でうどんをしよったんやけど、そのうちうどん屋さんが玉売りをし始めてから、それを買うようになったな。法事の手伝いの人からお参りに来る人までようけおるから、300玉ぐらい作らないかんやろ? それでうどん屋さんから玉を買うたらいっぺんに楽になるから。よっぽどこだわりみたいなのがあるか、うどんを作るのが好きな家以外は、だんだんうどん屋さんから取る(買う)ようになっていったんやろな。

 法事に行ったら、必ず「湯だめうどん」やったわ。「かけ」はせんし、うちの実家はネギも入れんかった。ダシは、煮干しを使わんかった。椎茸と昆布でダシを取りよったわ。法事に来たお坊さんもうどんを食べるやろ? それで「魚を殺生したらいかんから煮干しは使わん」みたいな話を聞いたことがあるけど、ようわからん。実家が煮干しが嫌いだっただけかも知らん(笑)。

 お祭りにもうどんは出たよ。昔は「お祭りがある」言うたら親戚が集まりよったから。昔の祭りは今みたいに土日とかじゃなくて日にちで決まってて、よその地区の祭りとかぶることがなかったから、みんな祭りで親戚に家に行ったり来たりしよった。それで、祭りのある地区の家はそのたびに、うどんと、ばら寿司やいなり寿司や揚げ物なんかをしよった。それを親戚が集まってみんなで食べて、帰りもそれをお土産に持って帰った。うちの近所にうどん屋さん(製麺所)があったけど、祭りの時はとにかく、牛が食べるぐらいようけうどんを作りよったわ。

 揚げ物のコロモには色がついとったな。芋は黄色で、レンコンは青やった。どぎつい赤の揚げ物もあったと思う。あと、実家で初めて緑のコロモの揚げ物を見てびっくりしたのを覚えとる。何の揚げ物やったのか忘れてしもたけど。

 「家を新築したら初めてお風呂に入る時にお風呂の中でうどんを食べる」いうのもやったよ。「中風にならん」言うてな。今はもうここら辺ではしよらんけど、山の方では長い間しよった。やっぱり何でも山の方が昔の風習が残っとんかな。仲南の親戚の家は、まだ旧正月をしよったわ。
 
 葬式はうどんを出さん。「不幸が長いこと続いたらいかん」言うて。それでな、近所に「わしゃ、そなな迷信みたいな話や知るかい。何日も何日もうどん食わんとおれるかい」言うて葬式の日もそのあともずっとうどん食べよったおじいさんがおって、そしたらそのおじいさんがすぐに死んだんよ。絶対うどんで死んだんじゃないと思うけど、それからそのあたりで、本当にみんな、それまで隠れて食べよった人まで葬式のあとはうどんを食べんようになった(笑)。まあ、今頃はそんなに言わんようになったけどな。

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