香川県民のさぬきうどんの記憶を徹底収集 さぬきうどん 昭和の証言

綾歌郡綾川町陶・昭和23年生まれの男性の証言

綾川は「うどんを打つ文化」が根付いていた

(取材・文:

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  • vol: 276
  • 2018.08.16
 僕もうどんが大好きでな~。中学1年の時、父親に「お前もちと練習せぇ」言われて初めてうどんを打ったんや。でき立ちのうどんをすぐに醤油かけて食べたら、これが無茶苦茶おいしかって、12玉一気に食べたら「これは明日の法事に使ううどんじゃが! 無しなるでないん!」言うておばあちゃんにおっかれたんや~。でも、この時「自分で打つうどんが、こんなにもおいしいんか~」と初めて知った。

 今でこそ、うどん屋に行列ができたり、カレーうどんや肉うどんみたいないろんな食べ方があるけど、昔は醤油をかけて食べるんが当たり前やった。薄口醤油がない時代やけん、濃い口醤油やった。けど、数年前に谷川うどん(琴南の谷川米穀店)で見た「お酢」をかける食べ方には、ホンマにびっくりしたな~。

 やっぱり綾川は、昔から「打つ文化」が根付いていたように思うな。どこの家にも麺棒と打ち台があって、おいしい麦も穫れよったけん、近所での集まりごとや法事や、田植えが終わって「足あらい」をした後には必ず打っちょった。その時の「煮干だし」はおいしかった。やっぱり香川県はおいしい煮干しが獲れるけんやろ。観音寺の伊吹島の煮干はおいしかったで。

 うどんを「打つ」いうのは「打ちつける」の意味があるんやけど、「押し引きのタイミング」も大事でな。35歳の時、高知の学生にうどんの打ち方を教えたら、朝の10時から夜の10時までかかったわ。それほど難しいんや。僕は今「綾川町うどん研究会」に入って9年目やけど、その日の気温、粉の種類、水や塩の加減で全然味や硬さが変わってくる。ホンマにうどんは奥が深い。生きとるからな。

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