香川県民のさぬきうどんの記憶を徹底収集 さぬきうどん 昭和の証言

高松市庵治町・昭和30年生まれの男性の証言

ビニール袋に入った八百屋のゆでうどんしか知らなかった

(取材・文:

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  • vol: 93
  • 2015.08.13

ビニール袋に入った八百屋のゆでうどんしか知らなかった

 兄ちゃん、昔のうどんのことを調べよんな? でも、お門違いやで。庵治はうどんの不毛地帯やからな。昔から。縁遠いところやよ。香川の西の方や東の方では昔、家でうどんを作っとったらしいけど、庵治で作っとったゆう話は聞いたことがない。

 うどん言うたら、八百屋やスーパーで買って来るビニール袋に入ったゆでうどんが当たり前やった。だからホンマの手打ちうどんを食べたんは、だいぶ後やで。高校に上がって(昭和48年)、庵治から出るようになってからや。それで初めて、家で食べるうどんが〝ぐにゅぐにゅ〟の麺ゆうのが分かった。

夏はざるではなく、サクランボ入りの冷やしうどん

 その〝ぐにゅぐにゅ〟の麺で、小さい頃はかけうどんや、暑い時分には冷やしうどんにして時々食べた。ざるうどんやなくて、冷やしうどんな。冷やしそうめんのうどん版。クリスタルガラスを真似たそれっぽい模様の入る安物のガラス鉢に、麺と水と氷、ほいで彩りにサクランボが入っとるんや。ダシを入れる器は低くて幅のある、麦茶を飲む時にも使っとったガラスのコップでな。

庵治にあった3軒のうどん屋

 昔、庵治にあった店も、家と似たような感じのうどんを出しとったで。今は保健センターになっとる建物の前に「岡田」言ううどん屋があったけど、そこも麺は店では打ってなかった。夏は冷やしうどんもやっとったよ。

 それと一品もんで、いなり寿司や押し抜き寿司もあった。昔ながらのガラスの陳列ケースにたくさん並べられとったなぁ。うどんよりもそっちの方が看板やったんとちゃう? 岡田は今から8年くらい前(2007年頃)に閉めたんかな。小さい頃からあって、何十年も営業しとったけど。

 もう一軒、庵治の北側に「山下」言う店もあった。そこは自分とこで麺を作っとったけど、やっぱり優しい感じの麺やったな。バラ寿司も置いとったけど、いつまで営業しとったかは憶えてない。

 あとは山の方に湧き水を使った「たらいうどん」を食べさてくれる店もあったらしいけど、行ったことがないからよく知らん。昔、庵治にあったうどん屋で知っているのはその3軒くらいやな。たらいうどんのとこは知らんけど、岡田と山下はセルフの店やない。食堂の感覚に近い店や。

 庵治は漁師が多いけど、昼飯は家や船の上で食べる。だから、うどん屋があんまり流行らなんだんとちゃう? それと、水揚げされた魚は漁港で買えんし、昔はなかなか手に入れることもできんかったから、凝ったうどんのダシを作ることもまず、なかったやろ。今は地元の魚介類を使ったダシでうどんを食べさせてくれる店があるらしいけどな。

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