さぬきうどんのメニュー、風習、出来事の謎を追う さぬきうどんの謎を追え

vol.60 新聞で見る讃岐うどん

新聞で見る平成の讃岐うどん<平成14年(2002)>

(取材・文: 記事発掘:萬谷純哉)

  • [nazo]
  • vol: 60
  • 2023.02.02

セルフチェーンの県外進出が始まる

 平成14年(2002)に入って「讃岐うどん」を紹介する全国ネットメディアはどんどん増え、それに伴って全国からの讃岐うどん巡り客も増加の一途をたどり、「宮武」「山越」「がもう」「谷川米穀店」「なかむら」「山内」「田村」といった今日の“製麺所型レジェンド店”は週末の大行列が常態化。この頃にはすでに、人気うどん店が“観光地”の様相を呈していました。

 そんな中、「はなまるうどん」と「めりけんや」と「さぬき小町うどん」の3社が「セルフチェーン」というビジネスモデルで県外進出を開始。讃岐うどんビジネスにおいて全く新しいスタイルの挑戦が始まりました。さらに、うどん巡り客の急増に伴ってお土産うどんの売上も急増。旅行業界からは「讃岐うどん巡りバスツアー」が次々に企画される等々、「讃岐うどん巡りブーム」は民間ビジネスの活性化に目に見えて波及しています。

 一方、行政も主催イベントに相次いで讃岐うどんを絡めたプログラムを組み入れ、雇用対策事業で高松高等技術学校に「さぬきうどん科」を設置したり、「さぬきの夢2000」の普及PRにも力を注いだりして(ちょっと前のめり気味ですが・笑)、ブームに本格的に乗っかり始めました。そんなエネルギッシュな平成14年の讃岐うどん界を、メディアの記録から見ていきましょう。

全国ネット雑誌の「讃岐うどん紹介」が花盛り!

 まず、この年の全国ネットの雑誌・書籍に特集された「讃岐うどん」の主なラインナップをまとめておきます。

【全国雑誌・書籍】

(1月)
●男性ファッション誌『Boon』が、「2001年うどんの旅」と題して讃岐うどんと『恐るべきさぬきうどん』を4ページ特集で紹介。
<掲載店>讃岐家、鶴丸、山越、小縣家、谷川米穀店、宮武、がもう

(3月)
●バイク雑誌『MOTONAVI』が、「BMWで巡る麵ロードの旅」と題して讃岐うどんを3ページ特集で紹介。
<掲載店>山越

(4月)
●女性ライフスタイル誌『LEE』が、「ケンタロウさん讃岐うどんを食べに行く!」という讃岐うどん特集を6ページで掲載。(案内人:田尾和俊)
<掲載店>山越、あたりや、中村、谷川米穀店、おか泉、小縣家、うどん棒、讃岐家

●漫画雑誌『COMIC CUE』で、「食べ物天国/讃岐うどんツアーのこり火編」と題して江口寿史画による讃岐うどん特集が掲載される。
<掲載店>がもう、山越、山下

(10月)
●グルメ情報誌『dancyu』が、「讃岐うどん天下無敵」と題して讃岐うどんを11ページの大特集で紹介。(文:勝谷誠彦、案内人:田尾和俊)
<掲載店>山越、池上、彦江、長田in香の香、おか泉、さか枝

(12月)
●情報誌『東海ウォーカー』が、名古屋の讃岐うどん店6軒を1ページで紹介。

●トレンド誌『日経トレンディ』が、「トレンド探索/讃岐うどんで味の秘境巡り」と題して讃岐うどん巡りブームを4ページ特集で紹介。
<掲載店>がもう、山越、なかむら、郷屋敷

●文庫本『さぬきうどんマニアックス』発刊。(小石原はるか・極東うどん喰え喰え団著・小学館)

 「讃岐うどん」を特集的に取り上げた全国ネットの雑誌・書籍は、大きなものだけでも過去最多の8本を数えました。その内容を見ると、男性ファッション誌『Boon』やバイク雑誌『MOTONAVI』、漫画雑誌『COMIC CUE』など、これまでのグルメ系、レジャー系雑誌を超えたジャンルの雑誌が次々に「讃岐うどん」を扱い始めていることがわかります。また、前年の女性情報誌『メイプル』の平野レミさんに続いて、女性ライフスタイル誌『LEE』が料理研究家のケンタロウさんを「讃岐うどん巡り」に起用。讃岐うどん巡りはタレント仕様にも耐えられるコンテンツになってきました。

 さらに注目は、『さぬきうどんマニアックス』が発刊されたこと。著者の小石原はるかさんは『スターバックスマニアックス』を発刊して“偏愛(マニアックス)系ライター”として話題になった方ですが、その「マニアックスシリーズ」の「スターバックス」に続く第2弾に選ばれたのが「讃岐うどん」。この、讃岐うどんにとってはある意味“快挙”のような書籍が発刊されたということが、「讃岐うどん」が“ワンランク上の全国区”になったことを如実に表しています。また、各雑誌の特集に掲載された店のラインナップを見ると、全国メディアが讃岐うどん巡りにどんな付加価値を求めているのかがよくわかりますので、併せてご確認ください。

 一方、ローカルメディアの「讃岐うどん特集」は、以下のようなラインナップです。

【県内書籍】

(1月)
●『恐るべきさぬきうどん』第5巻発刊(麺通団著・ホットカプセル刊)。

(10月)
●『さぬきうどんメニュー大全珠玉の90品』発刊(ホットカプセル刊)。

(11月)
●『讃岐うどん全店制覇攻略本』2003年度版発刊(ホットカプセル刊)。

(12月)
●『超麺通団 ―団長田尾和俊と12人の麺徒たち』発刊(西日本出版社刊)。

【ローカルTV】

(3月)
●山陽放送『VOICE21』が、「あの店この店大集合 讃岐うどん&ラーメンの華麗なる共演」を放送。

(6月)
●山陽放送が全国ネットで1時間半の特番『絶品!最強のパスタ!?さぬきうどん』を放送。
<出演:セイン・カミュ、藤崎奈々子他、案内人:田尾和俊>

(8月)
●山陽放送『VOICE21』が、「2002年讃岐うどん巡礼秘話~太田君新記録と新店情報」を放送。

 1月に『恐るべきさぬきうどん』第5巻発刊。その後、私事ですが筆者は訳あって3月にホットカプセル社を退社することなり、『恐るべきー』シリーズは5巻で終了しました。折しもインターネットの普及で「穴場うどん店探訪記」はその役目を終えつつある時期でもあり(「食べログ」は2005年に開始)、以後、筆者の讃岐うどん本は切り口を変えた『超麺通団』シリーズに移行していくことになります。

 では、ここから地元四国新聞に載った讃岐うどん関連記事を。

「はなまる」「めりけんや」「さぬき小町うどん」が県外展開計画を発表

 この年の讃岐うどん界最大のトピックスは、「セルフチェーンの県外進出」です。その口火を切ったのは、「はなまる」でした。

(3月10日)

讃岐スタイルうどん、東京で受けるか 「はなまる」直営店、来月オープン

 県内でうどん店5店を経営する「はなまる」(高松市)は、価格もメニューも地元と同じでお客がお盆を持って並ぶ半セルフ式の店を4月中旬、東京・渋谷にオープンする。目玉は「かけの小で100円」という首都圏では異例の安さ。ファストフードの激戦区で讃岐スタイルが当たるかどうか、注目を集めている。同社はフランチャイズ方式による全国展開を狙っており、前田英仁社長は「関東から東北に向けてはほとんど未開拓のマーケット。宣伝効果に加えてチェーン店スタッフの研修施設にしたい」という。直営を含め今後1年間で県内外に40店前後の出店を目指す思惑を秘めた東京進出だ。

 同社は、前田社長が経営するアパレル卸会社「エイジェンス」と高松に本社を置くリサイクルブックストアの大手「フォー・ユー」(新谷幸由社長)が共同出資して昨年11月に設立した。東京の第1号店は渋谷の公園通りに面した都内でも屈指のにぎわいエリアに立地。当面、月商1000万円を目標にしている。前田社長は一昨年6月、「エイジェンス」の飲食部門として、自ら素材、調理法を吟味した半セルフ方式のうどん店事業をスタート。若い女性や家族連れを意識した明るい店舗デザインなどが人気を集め、一年足らずで県内4店に拡大した実績を自信に、新会社として全国展開を打ち出した。さぬきうどんのフランチャイズ展開は珍しいが、前田社長は「成長の可能性がある一つの事業ととらえた異業種からの参入だけに、早めに全国展開したかった」と話している。

 今日ではあまり知られていないようですが、「はなまるうどん」の全国展開は最初、アパレル会社「エイジェンス」(前田英仁社長)とリサイクルブックストア「ブックマーケット」を運営する「フォー・ユー」(新谷幸由社長)の共同出資による新会社で事業計画が立てられていました。そのあたりの経緯について、他の資料も交えて整理すると、

(2000年)
●アパレル卸会社「エイジェンス」が飲食部門を創設して、高松市木太町にセルフスタイルの「はなまるうどん」をオープン。

(2001年)
●「はなまるうどん」が高松市に今里店、田町店、レインボー店、丸亀市に丸亀城西店をオープン。香川県内5店舗のセルフうどんチェーン店になる。
●「エイジェンス」と「フォー・ユー」が共同出資して、セルフうどんチェーンの全国展開を目的とした「株式会社はなまる」を設立。

(2002年)
●「株式会社はなまる」が、「4月中旬に東京・渋谷で直営店をオープンする」と発表。

ということのようです。この「はなまる」の発表が3月のことで、その2カ月後の5月、今度はJR四国が子会社の「めりけんや」の東京進出計画を発表しました。

(5月28日)

JR四国、讃岐うどん店を首都圏へ 8月、恵比寿駅に1号店

 JR四国は27日、今夏から子会社の「めりけんや」(宇多津町)が運営する讃岐うどん店を首都圏で展開すると発表した。「めりけんや」が食材や経営ノウハウを提供、JR東日本の子会社の日本レストランエンタプライズ(東京)が店舗運営することで業務提携が成立した。「めりけんや」は、これまで県外直営店をJR岡山駅構内に展開しているが、業務提携による県外進出は初。

 年内に開業予定となっているのは、JR山手線の恵比寿駅(8月)と上野駅(10月)の駅構内。いずれも店舗面積は約50~60平方メートル。同社によると、恵比寿駅の利用客は女性を中心に1日25万人、上野駅は男性を中心に1日38万人に上る。「高松駅の1日3万人弱とはケタ違い。讃岐うどんの全国的な認知も高まっており、採算確保は可能」と判断、東京進出を決めた。営業形態や価格については、駅を利用する客層などを考慮しながら、今後JR東日本側と詰める。売上は両店舗とも1日に最低30万円を見込んでいる。会見で梅原社長は「東京進出はかねてからの念願。全力を注ぎたい」と強調。今後の首都圏進出計画については「直営店の展開は難しいが、業務提携などで2、3年で30店、将来は100店ほどを目指したい」としている。

 「めりけんや」の東京進出は直営店ではなく、同じ“JRつながり”でJR東日本の子会社の「日本レストランエンタプライズ」が店舗を運営し、「めりけんや」は食材(うどん)とノウハウを提供するという形の事業計画です。これで、「はなまる」と「めりけんや」の2つの讃岐うどんチェーンが東京進出に向けて動き出すことになりました。ところが…

「フォー・ユー」が「はなまる」と分かれて「さぬき小町うどん」の全国展開を発表

 3月に「エイジェンス」と「フォー・ユー」の共同出資による「株式会社はなまる」が「4月中旬に東京・渋谷で直営店をオープンする」と発表した矢先、「フォー・ユー」が同社から離脱することになりました。

(8月10日)

フォー・ユー、はなまるとの提携解消へ 独自にうどん店展開

 フォー・ユーは9日、讃岐うどんチェーン「はなまるうどん」を展開する「はなまる」(高松市)と業務提携を解消することで合意したと発表した。正式な解消は今秋がめど。フォー・ユーは今後、独自にうどんチェーンを全国展開する方針。同社によると、理由は「店舗展開に対する考え方の違い」。同社と子会社が保有する「はなまる」の40%の株式については、「はなまる」に譲渡する方向で協議している。

 フォー・ユーは昨年11月に「はなまる」と業務提携。子会社が今年7月、フランチャイズ形式で北海道札幌市に店舗を出店したが、近く契約を解消する方針。また、東京への出店計画は「はなまる」が単独で実行する。フォー・ユーは今後、全国10社の店舗運営子会社などで独自にうどん事業を展開するという。

 記事によると、共同出資で始めた「はなまる」はフォー・ユー側が40%、エイジェンス側が60%の株式構成でスタートしていたようですが、ここから別々に全国展開を目指すことになりました。そして、業務提携解消後すぐに、「フォー・ユー」が「さぬき小町うどん」というブランドで全国展開すると発表しました。

(8月24日)

フォー・ユーが讃岐うどん店全国チェーン展開へ 2004年6月めどに100店目標

 中古本販売のフォー・ユーは9月から、讃岐うどん店「さぬき小町うどん」の全国チェーン展開に乗り出す。セルフ方式で「かけうどん小」1杯が100円という価格設定。9月中に北海道で1号店をオープンさせるのを皮切りに、来年6月までに直営、フランチャイズ合わせて15店、2004年6月までに100店の出店を目指す。1店あたりの年商は7800万円を目標にしている。

 同社は、9月末をめどに讃岐うどんチェーン店を展開する「はなまる」との業務提携を解消する方針を明らかにしており、独自のうどん事業戦略を検討。中古本や古着を扱う店舗を全国展開する中で培ったノウハウを活用していく。店舗展開は、FC加盟店募集や店舗開発を手がける同社の子会社「ティー・プロジェクト(仮称)」(旧ジャンクション)をうどん事業の中核に置き、全国10カ所にある同社の店舗運営子会社を活用しながら、直営とFC形式の2形態で推進。

 席数は各店舗とも80席前後を準備。内装は女性が一人で気軽に出入りできるよう、清潔感を重視し、色使いにも配慮していく。麺の製造は高松市内に工場を設けて一括生産し、生麺を各店舗に輸送する方法で品質を確保。店舗拡充を見込み、近く同市内に新たな生産拠点を設ける計画があるという。1号店は、7月に札幌市内で開店した「まんまるはなまるうどん」(フォー・ユー子会社が運営)を改装。その後、10月に新潟県内に3店、来春には東京都内にも進出する予定。今や空前のうどんブームとあって、新谷幸由社長は「中長期的には全国1000店の出店を目指したい」と意気込んでいる。

 これで、「香川発・全国展開」を目指すセルフうどんチェーンが「はなまる」「めりけんや」「さぬき小町うどん」の3つになりました。このうち「さぬき小町うどん」は札幌、新潟といった地方都市から全国展開を始める計画を打ち出していますから、このあたりが「はなまる」との方向性の違いの一つだったのかもしれません。

 ちなみに、記事によると、業務提携解消前の7月に札幌市内で開店した「まんまるはなまるうどん」は、昨年11月に共同出資で設立した「株式会社はなまる」ではなくて「フォー・ユー子会社が運営」とあります。さらに、のちに「はなまる」が渋谷にオープンした店は「まんまる・はなまるうどん」という名前でしたが、店名がどう受け継がれたのかも記事からはわかりません。ビジネスは当然そのあたりをきちんと整理しながら進められているはずなので、記者がよくわからないまま記事を書いたのかもしれません。

 そして、いよいよ「めりけんや」と「はなまる」が東京の店をオープンしました。

「めりけんや」と「はなまる」が相次いで東京でオープン!

 当初は「はなまる」が「4月中旬にオープン予定」と発表していたのですが、前記の紆余曲折で遅れたため、先にオープンしたのは「めりけんや」の方でした。

(8月26日)

讃岐うどんの「めりけんや」
首都圏初店舗オープン(JR恵比寿駅)

 JR四国子会社の「めりけんや」(宇多津町)の首都圏初店舗となる「さぬきうどん NRE&めりけんや」が25日、JR東日本の山手線恵比寿駅構内にオープンした。開店と同時にさっそく行列ができるなど、滑り出しは順調。大勢の家族連れや若者が、本場直送の味を満喫していた。

 同店は「めりけんや」が半生麺などの食材やノウハウを提供、JR東日本子会社の日本レストランエンタプライズ(NRE)が店舗運営する。同じ形態で10月、上野駅構内に2号店ができる。既に16日からプレオープンし、14時間営業した日は1000人の来店を記録するなど、反応は上々。讃岐うどんブームを反映し、客の4割を若い女性が占めている。初めて讃岐うどんの店に入ったという会社員の加瀬友紀さん(27)は「おいしい。てんぷらなどが自由に選べるのが楽しい。店の雰囲気も、女性1人で入りやすい」と舌鼓を打っていた。

 店舗面積は41平方メートル、13座席と6人分の立食テーブルを用意。NREでは1日800~1000人の来店を見込んでいる。平日の営業時間は午前7時から午後10時まで。年中無休。開店式典に出席したJR四国の梅原社長は「讃岐うどんのブランドを大切に、安いだけでなく味とサービスを充実、さらに店舗を増やしていきたい」と話していた。

 「めりけんや」の東京進出第1号店は、山手線恵比須駅の構内でした。記事に「めりけんやが半生麺を提供している」とありますが、「めりけんや」の店舗展開は「半生麺を茹でて出す」というスタイルだったのでしょうか。もしそうだったとしたら、うどんのクオリティとしては「お土産で買ったうどんを店で食べる」みたいな話になりますが(笑)、半生にして「日持ちさせる」という効率の方を優先したのかもしれません。そして、「めりけんや」に約2週間遅れた9月6日、「はなまる」の渋谷公園通り店がオープンしました。

(9月7日)

本場の味100円で 讃岐うどんの「はなまる」、関東初店舗オープン(東京)

 県内外でうどん店を展開している「はなまる」(高松市)の関東初店舗となる渋谷公園通り店が6日、オープンした。かけ小100円という低価格で本場の讃岐うどんが味わえるとあって、大勢の若者やサラリーマン、OLらが次々と訪れた。東京都内では恵比寿駅構内に8月25日、JR四国子会社の「めりけんや」(宇多津町)が開業。好調な客足を維持しており、都心でもうまくて安い讃岐うどんブームが起きそうな気配だ。

 はなまる渋谷店の店舗面積は約160平方メートル。60席を用意し、同社は1日1000人の来客、月商1000万円を見込んでいる。同社の直営店は県内、姫路、岡山に続き10店目(フランチャイズ店を含め12店目)。11月には若者でにぎわう原宿・竹下通りにフランチャイズの店ができる。メニューは、かけ、ぶっかけなど14種類。てんぷら、コロッケなどのトッピングもあり、年中無休。都内会社員、渡辺知子さん(30)は、てんぷらなどを自由に選んでいくセルフ方式に「学生食堂のようで楽しい。だしもそうだけど、麺が特においしかった」と話していた。

 「めりけんや」が駅構内のテナント型で広さ41平方メートル(13席+立食6席)に対し、「はなまる」は路面店に近い立地で、広さも「めりけんや」の4倍の160平方メートル(60席)。その規模の大きさとオープン当初の行列のすごさから、メディアへの露出は「はなまる」の方が断然多かったようです。

 そして続いて11月30日に、「めりけんや」が上野駅構内に東京の2店目をオープンを発表しました。

(11月27日)

讃岐うどん店、JR上野駅に30日オープン 「めりけんや」運営

 JR四国は26日、子会社の「めりけんや」(宇多津町)が運営する讃岐うどん店を30日にJR山手線の上野駅に開店すると発表した。8月にオープンした恵比須駅に続く首都圏進出。運営方法は恵比須駅と同様、「めりけんや」が食材やノウハウを提供、JR東日本の子会社の日本レストランエンタプライズ(東京)が店舗運営する。…(中略)…店舗は上野駅の2階中央口改札内にオープン。店舗面積は約60平方メートルで、20席を用意。1日1200人、50万円の売上を見込んでいる。…(以下略)

  一方、「はなまる」と分かれて札幌、新潟等の地方都市から店舗展開を開始していた「フォー・ユー」の子会社の「ティー・プロジェクト」も、2003年1月の南池袋店オープンを皮切りに東京進出計画を発表しました。

(12月14日)

「フォー・ユー」のうどんチェーン店、来月東京へ進出

 うどんチェーン店「さぬき小町うどん」を展開する「フォー・ユー」(高松市)は13日、1月から東京都内に出店すると発表した。県内うどんチェーンの東京進出は「めりけんや」「はなまる」に次いで3社目。全国でさぬきうどんブームが続く中、県内チェーン同士の競争がこれから激化しそうだ。

 「さぬき小町うどん」は同社の100%出資子会社「ティー・プロジェクト」が展開。10月に札幌市内で1号店をオープンしたのを皮切りに、新潟県内などで4店を開店。年内に8店舗体制を目指している。東京進出の第1号は「南池袋店」(豊島区南池袋)で、1月下旬オープンの予定。店舗面積は約260平方メートル、客席は約100席。2月中旬には、客席数40席の「赤坂一ツ木通り店」(港区赤坂)もオープンを予定している。いずれもセルフ方式で、麺は高松市春日町の工場から直送する。1カ月の来店者数はそれぞれ約2万2000人、年商は1億8000万円を見込む。同社は「2004年6月までに全国で100店舗を目指す」としている。…(以下略)

 「さぬき小町うどん」の東京1店目となる南池袋店は床面積約260平方メートルで、「はなまる渋谷公園通り店」(約160平方メートル)よりかなり大きい店です。「さぬき小町うどん」はこの2年後に事業を「すかいらーく」に譲渡することになりますが、それも一つの経営判断。とにかく平成14年(2002)は、讃岐うどん界に新しいビジネスの“突風”が吹いた年でした。

異業種の若手ビジネスマンが起こした讃岐うどん革命

 以上が、平成14年(2002)の讃岐うどん界に起こった「セルフチェーンの県外進出」の概要ですが、この動きについていくつかポイントを挙げておくと、まず第1に、「はなまる」も「めりけんや」も「さぬき小町うどん」も、いずれも「工場生産型大衆セルフスタイル」のうどん店であることです。これは、一気に多店舗展開するには「熟練したうどん職人が店で粉からうどんを作る」というスタイルでは構造的に職人の数が追いつかないため、「工場で麺生地あるいは麺線を大量生産して多店舗に送り込み、その先の作業をマニュアル化して、熟練した職人でなくてもある程度のクオリティのうどんが提供できるようにする」というシステム。すなわち「大衆セルフ店」による全国展開は、ある意味必然だったということです。

 第2のポイントは、「はなまる」を始めたのはアパレル卸会社の「エイジェンス」、「めりけんや」を始めたのは「JR四国」、「さぬき小町うどん」を始めたのはリサイクルブックストアを運営する「フォー・ユー」と、いずれもうどん業界とは異なる業種の会社によるうどんチェーンであることです。これは、上記「工場生産型大衆セルフの全国チェーン展開」という発想がそれまでの讃岐うどん業界になかったのか、あるいは万が一あったとしてもチャレンジ精神がなかったのか、いずれにしろ、空前の讃岐うどんブームの真っ只中にありながら全国展開を異業種に先んじられた旧来の讃岐うどん業界には、創造的なビジネスマインドが欠けていたと言えるかもしれません。

 そして第3のポイントは、「はなまる」の前田社長も「フォー・ユー」の新谷社長も、当時まだ40代前半の若手ビジネスマンであったことです(筆者も当時40代でした)。また、当時のJR四国の梅原社長は60代に入った頃でしたが、梅原社長は知る人ぞ知る、若い世代に勝るとも劣らないエネルギッシュなビジネスマンでした。さらに言えば、前田社長と新谷社長の提携のきっかけを作ったのも当時40代前半だった麺通団員の“知将”A藤氏(当時、広告代理店勤務)だったことは当人たちと周りの数人だけしか知らない事実。つまり、「讃岐うどん巡りブーム」も「セルフうどんチェーンの全国展開」も、「異業種の若手」のチャレンジが起こしたものだということです。

 ちなみに、筆者が「讃岐うどん巡りブーム」を起こした時には“旧勢力”の権威筋から「歴史ある讃岐うどん文化を壊している」という論調でしばしば非難されましたが、「はなまる」が全国展開を始めた時も、同じ“旧勢力”の権威筋から「あんなのは本物の讃岐うどんではない」という批判の声が少なからず聞こえてきました。かつて、徳冨蘆花が「謀叛を恐れてはならない。新しいものは常に謀叛(むほん)である」という名言を残しましたが、今になって振り返ってみれば、当時の讃岐うどん界は、旧勢力から「謀反人」扱いされても自らリスクをとってチャレンジする「異業種の若い世代」がエネルギッシュに動いていた時代だったと思います。

「シリーズ追跡」がセルフの東京進出を特集する

 こうした「セルフチェーンの県外進出」について、四国新聞の「追跡」が特集を組んでいました。各社の店舗展開計画の概要紹介部分はこれまでの記事の繰り返しになるので、関係諸氏のコメント部分を中心に小分けにして見ていきましょう。

(9月22日)

シリーズ追跡/セルフうどん東京上陸 外食デフレの時流に乗る “新方式”面白がる若者

 (前略)… さぬきうどんは高いブランド価値があるのに、本格的な県外進出はなぜかなかった。それがなぜ今、セルフさぬきうどん? 背景にはいくつかの理由があるようだ。香川でもブームの引き金となった『恐るべきさぬきうどん』が大手出版社で文庫化されるなど、知名度は全国的にも一段アップ。「この功績は大きい」(フォー・ユーの新谷幸由社長)。…(中略)…「セルフが香川以外で通用するか」という懸念はコーヒーショップなどの人気が払しょくした。「はなまる」の前田英仁社長は「スターバックスもうどんと同じセルフ方式」とむしろ外食業界では当たり前とみる。「めりけんや」の諏訪輝生社長は「いろんな要素が今という好機を生んだ。10年前なら無理だった」と言い切った。

 「フォー・ユー」の新谷社長は、「『恐るべきさぬきうどん』に端を発する讃岐うどんの知名度アップがなければ、このセルフチェーンの県外進出ブームはなかった」というニュアンスの見方。「めりけんや」の諏訪社長はそのあたりを「いろんな要素が好機を生んだ」とぼかしています(笑)。また、「はなまる」の前田社長は「セルフスタイルは時代の要請」という視点で、柔軟なビジネス感覚を披露しています。

 そして、「はなまる」がこれまでの讃岐うどん界の慣習と思い込みを打ち破ったことにも言及していました。

 セルフうどんが時流に乗ったのは東京進出の大きな要因。だけど、それだけではない。香川の一般的なセルフ店を東京に持ち込むだけでは、まず成功は望めない。香川の繁盛店はうどんの味もさることながら、独特のシチュエーションが人気に貢献している。しかし、香川に存在してこそ”怪しさ”が県外人に通用するわけで、そのまま県外でも多店舗展開できるはずはない。

 そこを飛び越えたのが「はなまる」。文化や物産としてのさぬきうどんから脱却し、”あく”を抜いたうえで、セルフ方式やさぬきうどんの味を生かした万人向けの店でビジネス化を試みた。コンセプトは「カジュアルでポップな店」。女性や家族連れ、子供から中高年まで意識し、内外装やデザイン、スタッフ衣装に至るまで古いうどん店のイメージを一新。「和のファストフード」に変身させた。既成概念を打破できたのは、前田社長がアパレル業界から異業種参入し、うどん業界と異なる視点があったから。「セルフ店はB級グルメが人気の発端だが、切り口を変えた途端、すべての客層をカバーするビジネスの可能性が生まれた」。

 「カジュアルでポップな店」、「和のファストフード」というコンセプトで、これまで讃岐うどん界にとって難攻不落のターゲットだった「若い女性層」を取り込むことに成功したのは、間違いなく「はなまる」の功績です。もちろん、「めりけんや」も「さぬき小町うどん」も東京進出の店は古い讃岐うどんのイメージを一新していましたが、「めりけんや」は駅構内のテナント店であり、「さぬき小町うどん」は後に他社に経営譲渡したこともあってイメージが薄いため、やはり一番のパイオニアは「はなまる」だと言えるでしょう。

 しかし、先述したように、旧勢力にとっては「新しいものは常に謀叛」ですから(笑)、地元うどん業界大手からはこんな声が聞こえてきます。

 …(中略)…セルフうどんの東京進出の成否もさることながら、本場、香川の人間にとって、最も気がかりなのがうどんの味。うどん通からは「さぬきうどんの名を汚すのでは」との懸念の声も聞こえる。「業界にとっては、さぬきうどんを東京や全国に知ってもらえる好機だが、ひと口にうどんといっても奥が深い」(さぬき麺業)「『これぞさぬきうどん』と思われるのには片腹痛さも感じる」(かな泉)。期待と不安に複雑な表情を浮かべる老舗も少なくない。

 「さぬきうどんの名を汚すのでは」との懸念の声を挙げた「うどん通」とやらは、後で聞くと讃岐うどんの権威筋の識者の方だったそうです(笑)。あと、「かな泉」のコメントが「片腹痛い」という、なかなか上から目線の傲慢な感じです(笑)。本当にこう言ったのかどうかはわかりませんが、昔の「かな泉」の泉川社長ならこういうコメントはされなかったと思います。経営体制が変わって、社風も変わってきたのかもしれません。

 ちなみに、筆者もこの流れでコメントを求められたので、こんな風に答えていました。

 だが、『恐るべきさぬきうどん』の著者で、タウン情報ネットワーク副社長の田尾和俊さんは、東京のセルフうどんの味に合格点をつける。「もちろん『最高の味』ではないが、香川のセルフ店と遜色ない。東京でのビジネス展開を考えると『最良の味』と言える」。田尾さんは言わずと知れたうどん通。うどんへのこだわりも相当なものだが、今回、東京のセルフ店の盛況ぶりに認識を新たにしたという。「うどん通としてはもう少し高い質を求めたいが、香川と東京は全く異質なマーケット。讃岐のうどん文化にこだわることは今回のセルフ店展開には意味がなく、逆にビジネスの邪魔になる」と田尾さん。東京でもさぬきうどんのうまさは認知されているが、実際にホンモノを食べたことのある人はごく少数。「立ち食いよりはるかにうまいうどんを提供すれば支持される。そういう判断ができなければ東京でチェーン展開はできない」という。

 また、「フォー・ユー」の新谷社長も“セルフチェーン・バッシング”に対してこんなコメントを。

 既存のうどん店を半ば否定して生まれた格好の東京発のブーム。「あんなものはさぬきうどんじゃない」との声も聞こえそうだが、異業種参入の後発組でも「1000店になればこっちが標準になる」(新谷社長)。さぬきうどんが全国区になるか、香川のご当地商売に戻るか。2002年の東京進出はエポックメーキングになるかも。目が離せない。

 やはり、平成14年(2002)の讃岐うどん界は、新世代の“よそもの”が旧世代に対して「謀叛」を起こした年だったのかもしれません(笑)。

JR四国や大手旅行代理店が「うどんバスツアー」を続々企画

 続いて、うどんビジネス関連として、「JR四国」と「近畿日本ツーリスト」、「JTB」の「讃岐うどん巡りバスツアー企画」が新聞に載っていました。

(8月19日)

JR「うどん探検バス」発車オ~ライ 県内3コース 来月からJR四国 松山駅発好評で規模拡大

 JR四国は、香川の名産・さぬきうどんを食べ歩く「うどん探検バス」乗車券の発売を始めた。同社社員が厳選した中讃地区や高松市などのうどん店を1日に4店めぐるコース設定で、心ゆくまで本場の味を楽しめる。これまで、JR松山駅発で実施していたうどんツアーが好評だったことから、規模を拡大。JRの宇多津、坂出、多度津各駅発の3コースを設定し、立ち寄る店もコースごとにセルフ店や製麺所併設店など本場ならではの4店を選んでいる。

…(中略)…定員45人。参加費は大人、小人とも1人2200円(飲食代は含まない)。また、徳島、愛媛、高知からの参加者を対象に、列車往復乗車券と探検バス乗車券がセットになった切符を発売する。同社は、「時間待ちや売り切れが生じる可能性もあるが、それらを含めて讃岐うどんを体験してほしい」と話している。

(12月25日)

うどんツアー盛況 県外客中心 週末、目立つ大型バス

 全国的な讃岐うどんブームを受け、県内のうどん店の食べ歩きツアーが人気を集めている。JR四国の「うどん探検バス」をはじめ、大手旅行代理店が首都圏や関西の若者層をターゲットにした多彩な企画を投入。1日に数店を巡るだけでなく、手打ち体験を盛り込むコースもあり、週末のうどん店では自家用車に加えて大型バスも目立っている。

 近畿日本ツーリストでは今夏から、大阪発の日帰りバスツアーを企画。現在は、手打ち体験とこんぴら観光をセットにした入門編や、名店から穴場まで5店を食べ歩く上級者向けなど4コースを設定する。観光はほとんどなく、うどん店を巡るだけのツアーだが、若い人を中心に人気は上々。「曜日やコースによっては予約がいっぱいで申し込みを断ることもある」(同社)という。JTBでも10月末から首都圏発の「四国讃岐うどんの旅」を発売。羽田~高松の往復航空券にホテル、手打ち体験などがセットになったフリープランで、自由にうどん店巡りや観光を組み合わせることができる。

 9回開催したJR四国の「うどん探検バス」ツアーは、全コースが満席。同社によると、9割以上が岡山、愛媛を中心とする県外からの参加者で、3分の2が女性。40歳代以上が半数を占め、「食べ歩き」の浸透ぶりをうかがわせる。好評を受け、同社では来年1月から6月にかけて第2弾を実施する。計4店をめぐる5コースを設定し、同社社員が「うどん案内人」を務める。この他に新企画を予定している旅行代理店もあり、「讃岐うどんツアー」の人気は来年も続きそうだ。

 その他、レンタカー会社がうどん店情報を盛り込んだカーナビを導入したりして、旅行関連業界も讃岐うどんブームをビジネスにすべく動き始めました。それぞれ売上規模としてはかなり小さい企画ですが、こうやって次々にビジネスチャンスにチャレンジし、うまくいかなければまた新たな戦略を考えて実行し…という繰り返しが、民間ビジネスのダイナミズムです。

 ではここから、行政と組合の動きを拾っていきましょう。まずは、行政と組合にとっては「讃岐うどん界最大の希望」であるかのような、「さぬきの夢2000」の状況から。

「さぬきの夢2000」のPR作戦

 平成12年(2000)に品種登録申請された県産小麦「さぬきの夢2000」は、平成13年(2001)にイベント等でデモンストレーション的に提供されたり、作付面積を拡大したり、まだ広く一般に普及していないのに県と生麺組合が主催する「さぬきうどん品評会」が「さぬきの夢2000の部」を新設したりしながら(笑)、やや“前のめり”気味に普及活動が始まりました。そしてこの年は収獲量も少し増えて、組合加盟店を中心に「さぬきの夢2000」を使ううどん店も増え始めたようです。

(1月3日)

「地のもんが一番や」 香川県産の小麦「さぬきの夢2000」 究極のうどんが誕生 今秋からお茶の間に

 讃岐うどんブーム21世紀も。県が開発した独自の小麦品種「さぬきの夢2000」を使用した、香川でしか食べられない”真の讃岐うどん”が今秋からお茶の間に流通する。…(中略)…昨年11月3日、高松市内で行われた全国うどん交流会などのイベントで提供した他、試験販売も展開。麺の品質保持に不安の声があるものの、「明るい淡黄色でつやがあり、食感のバランスに優れる」など評判は上々だ。…(中略)…

 最初の収穫の2001年産は63トン。県は新品種への全面切り替えを基本に、02年産400トン、03年産1600トン、04年産4000トン、05年産5200トンと生産量を増加する計画。うどん店、スーパーで手軽に食べて、購入できる機会が徐々に増えていく。現在、国に品種登録を出願中で、当面は県外での生産を認めない方針。香川でしか味わえない究極の味が、うどんブームに欠かせない重要なファクターとなるに違いない。県民の期待は高まるばかりだ。

 正月にさっそく、「さぬきの夢2000」を展望する記事が載っていました。収穫量の計画を見ると、この年の収穫量(6月頃収獲予定)は作付面積の増加で前年の63トンから400トンに増える見込みです。ただし、県のHPによると平成14年の香川県のうどん用「小麦粉」使用量は5万6755トンとありましたから、これを歩留まり70%で「小麦」に換算すると約8万1000トンになり、「さぬきの夢2000」は讃岐うどんに使われる小麦全体のまだ0.5%程度にしかすぎません。

 あと、ちょっと気になるのは「真の讃岐うどん」という表現。実は当時、「さぬきの夢2000」をPRするパンフレットに「これが本物の讃岐うどん」という表記があったのですが、それを見た人気うどん店から「我々のうどんは本物じゃないと言うのか?」という声が挙がっていました。「讃岐うどん巡りブーム」は圧倒的多くのオーストラリア産小麦を使っている店が人気になって起こったもので、「さぬきの夢2000」はそこに新しい選択肢として登場したわけですが、それを県や組合といった権威筋が「これが本物だ」という表現をするのは、ちょっと勢い余ってやりすぎた感もあります。

 続いて4月に、県が「さぬきの夢2000」に対する消費者の評価アンケート結果を発表しました。

(4月8日)

県がアンケート うどん用小麦「さぬきの夢2000」
7割「いつもよりおいしい」 食感、のどごし高評価 「切れやすい」との声も

 讃岐うどん用に開発した小麦品種「さぬきの夢2000」に対する消費者の反応を探ろうと、県が実施したアンケート調査がまとまった。総合評価は、一般のうどん店で5割、うどん会館(綾南町滝宮)で7割の来店者が「いつも食べているうどんよりおいしい」と回答。食感やのどごしへの評価が高く、県農業生産流通課は「おおむね好評で、普及推進や生産拡大の励みになる」としている。

 調査は「さぬきの夢2000」を使ったうどんの商品化に向け、消費者の評価を確認するのが狙い。昨年10月末から12月にかけて行った試験販売に合わせ、高松市内などのうどん店28店とうどん会館で計約4300人に調査した。アンケートは、色、香り、こし(麺の硬さ)、食感、総合評価の5項目について、普段食べているうどんと比較した感想を質問。総合評価では「おいしい」と回答した人がうどん店で50%、うどん会館で73%に達した。味に関する意見では「もちもちした感じ」「昔のうどんの味」などが寄せられた。

 のどごし(食感)については、うどん店の62%、うどん会館の76%が「良い」と高評価。うどんのコシ(硬さ)は、うどん会館で6割近くが「硬い」と評価したが、うどん店では「硬い」33%、「軟らかい」が26%と評価が分かれた。その他の意見では「つるつるしておいしい」「小麦の香りがする」「県産なので安心感がある」など、地元産への期待が感じられた。一方、「切れやすい」「色が少し黒い」と改善を求める声もあった。…(以下略)

 こういったアンケートは対象者や設問内容によって数字が上下する(時には上下させる)ことがよくありますが、とりあえず半分以上の人が「いつも食べているうどんよりおいしい」と回答したそうです。

 そして、県が今度は賞品付きのスタンプラリーでPRを始めました。

(11月6日)

県産うどん用小麦をPR 「さぬきの夢ラリー」スタート

 県がうどん用に開発した小麦の新品種「さぬきの夢2000」を広くPRしようと、県は5日から県内のうどん店で「さぬきの夢ラリー」をスタートした。夢2000を使ったうどんを販売する70店が協力。このうち10店のスタンプを集めて応募すると、抽選で500人に夢2000の半生うどんなどが当たる。…(以下略)

 「70店が協力」とありますから、平成14年(2002)11月時点で県下に約700店あるうどん店のうちの約10%にあたる70店以上のうどん店が「さぬきの夢2000」を使っていたようです。ただし、前述のように「さぬきの夢2000」のシェアは0.5%しかありませんので、70店のうちのほとんどが「夢2000を100%使用」ではなく、「少し混ぜて使っていた」ということでしょう。

「さぬきの夢2000」が増産体制へ

 一方、「さぬきの夢2000」の増産体制も着々と進められています。

(3月9日)

讃岐うどん用小麦「さぬきの夢2000」 満濃町、新年度から作付け補助 県内有数の生産地活性化

 満濃町は2002年度から、町内の農家を対象に県産の讃岐うどん用小麦「さぬきの夢2000」の作付け補助を開始する。補助額は県と同じ10アールあたり5000円。有名店がしのぎを削る「うどんどころ」の同町だけに、「ゆくゆくは生粋の讃岐うどんを満濃からPRできれば」と期待している。「さぬきの夢2000」の作付けに対し、県分に上乗せして補助金を出すのは満濃町が初めて。8日に開会した定例議会で事業費約100万円を盛り込んだ2002年度一般会計当初予算案を上程した。…(以下略)

 1月3日の記事中にあった「02年産400トン、03年産1600トン、04年産4000トン、05年産5200トン」という増産計画は、「県が作付面積に応じて補助金を出す」という形で進められているわけですが、満濃町はさらに町が補助金を上乗せして「さぬきの夢2000」を栽培する農家を増やそうという方針を打ち出しました。「セルフチェーンの県外進出」は民間投資によるチャレンジで、当然補助金(税金)は使っていないわけですが、「補助金なしではビジネスとして成立しないけれど、行政が進めたい案件」は、こうやって税金を投入して動かすのが常です。

高松高等技術学校に「さぬきうどん科」が新設され、1期生21人が卒業

 県が雇用対策事業の一環として、高松高等技術学校に「さぬきうどん科」を新設、3カ月の研修を経て21人の1期生が卒業しました。

(2月23日)

こね、踏み、打ち 大奮闘 プロ目指し21人が修業  県の雇用対策事業「さぬきうどん科」

 全国にその名をはせたさぬきうどん。県内外から多くのファンが押し寄せ、まさにさぬきうどんブームだ。そんな中、県が雇用対策事業として1カ月前、高松高等技術学校に「さぬきうどん科」を設置した。生地作りから接客、経営のノウハウまでを伝授するうどんのプロ養成所。現在、21人(定員20人)が高松市内のうどん店で特訓を受けている。

 第二の人生に「うどん屋をしたい」という定年退職者、異業種からの転職組、さぬきうどんにあこがれて東京からやってきた人など、実にさまざま。「腰を入れて、もっと体重をかけて」「肩の力を抜いてリズミカルに」。講師の声が響き、受講生は粉まみれになりながら修業している。豊中町から通う白川陽一さん(35)は流通業界からの転身。「うどん店経営は10代の頃からの夢。技術を学んでセルフの店を開きたい」と粉をこねる手に力が入る。午前中は机に向かい、午後は実技。日曜日は実際に店頭に出て、接客を肌で学ぶ。生地を練り、延ばし、切り、ゆでる。すべて手打ちの「手打ちうどん」はまさに職人芸。香川の誇るさぬきうどんに、新たな風を起こそうと猛特訓が後1カ月間続く。

(3月30日)

高松高等技術学校「さぬきうどん科」修了式 1期生21人が巣立つ

 うどん職人の養成で新たな雇用を生み出す県独自の「さぬきうどん技能者育成事業」一期生21人の修了式が29日、高松市内の製麺会社で行われた。訓練生は2ヶ月間の研修で製麺技術や接客の心得などを習得。開業や就職に向け、自信に満ちた表情で第二の人生のスタートを切った。

 同事業は雇用環境の厳しい中、求職者を対象に香川の特色を生かした職業訓練を行おうと県立高松高等技術学校が1月に「さぬきうどん科」を新設。製麺会社に委託してうどんの打ち方、食品衛生学など270時間の訓練を実施した。修了式には、訓練生20人が出席。吉田弥校長が「技術向上には『習って慣れろ』が一番の近道。開業、就職に向け頑張ってほしい」と激励。開業に向けて店舗用地探しをしている高松市松福町の男性(39)は「接客、調理など本校で学んだことを生かし経営に取り組みたい」と抱負を語った。

 ちなみに、「さぬきうどん科」の1期生からは、「清水屋」の大将や「SIRAKAWA」の大将など、讃岐うどん巡りブームの“第二世代”の旗手となる人材が輩出されました。

「スポレク香川2003」の大会スローガンが「うどんツルツル! スポーツスルスル!!」に決まる(笑)

 平成15年(2003)に香川で開催される「第16回全国スポーツ・レクリエーション祭~スポレク香川2003」の大会スローガンに、「うどんツルツル! スポーツスルスル!!」という情けな…いや、ユニークなものが選ばれました(笑)。

(1月21日)

全国スポレク祭PRポスター作製 うどん店に掲示 気運を盛り上げ(県教委)

 県教委は、来年11月に県内で開催する第16回全国スポーツ・レクリエーション祭「スポレク香川2003」のPR用ポスターを作製した。「うどんツルツル! スポーツスルスル!!」というユニークな大会スローガンにちなみ、県内のうどん店などに掲示して、大会気運を盛り上げる。…(中略)…県準備委員会は「うどん店には土、日曜に多くの県外客が来店しており、大会の盛り上げにつなげたい」としている。

H14広告・スポレク

 当時、筆者が県の副知事さんにお会いしたら、このスローガンを聞かされて「どうな田尾さん、ええやろ。私が決めたんや」と言われて、「ははは…」と返したのを覚えています(笑)。そしたら続いて今度は「うどんロック&ダンス」なるものが発表され、振付を担当した香瑠鼓(かおるこ)さんが県庁を表敬訪問されたのが記事になっていました。

(11月2日)

「うどんロック&ダンス」振付の香瑠鼓さん、副知事訪問

 第16回全国スポーツ・レクリエーション祭「スポレク香川2003」の開会式で披露される「うどんロック&ダンス」の振付を担当した香瑠鼓(かおるこ)さんが1日、県庁に川北文雄副知事を表敬訪問。2日のリハーサルイベントに向け、意気込みを語った。香瑠鼓さんは「慎吾ママのおはロック」などを手掛けた人気振付師。「うどんロック&ダンス」を作曲した東祥高氏、作詞の川上勝氏らとともに訪れた。「うどんロック&ダンス」の振付は、讃岐うどんにちなんで「太く、強く、長く、真っ白」をコンセプトにしたという香瑠鼓さん。…(以下略)

 記事に一連の仕掛け人(?)の副知事さんの名前が出てしまいましたが(笑)、この「うどんロック&ダンス」、

♪ うどんでロックンロールだぜー!! イェー!!
♪ ツルツルロック!! スルスルダンス!!
♪ ツルツルロック!! スルスルスポーツ!!
♪ うどんでロックンロールだぜー!! イェー!!

で始まる、一度聴いたら頭から離れなくなるようなインパクトのある曲とダンスでした(笑)。

「讃岐うどん音頭」がリメイクされる(笑)

 昭和のベタなプロモーションの一つに「何か大きな出来事があると『音頭』と『饅頭(まんじゅう)』ができる」というのがありまして、古くは1980年代に「富士山が大爆発する」という噂が流れて大騒ぎになった時に「富士山大爆発音頭」と「富士山大爆発しないでね饅頭」ができたり、香川でも1986年に国分寺町に隕石が落下した時に「隕石音頭」と「隕石饅頭」ができて「隕石うどん」まで発売されましたが、今度は空前の讃岐うどんブームを受けて、「讃岐うどん音頭」がリメイクで復活しました。

(8月14日)

コラム「一日一言」

 (前略)…しかし今年は「讃岐うどん音頭」がある。香川県の認知度は低くても、讃岐はうどんで全国ブランド。それならうどんで勝負しようと25年前の作品リバイバルを企画したのは高松の異業種交流会「笑狸会」だという。「練って寝かされほどよく揉まれ、湯から上がった肌身の白さ、サアサあなたのお好きなように…」という色っぽい作品は、郷土作品づくりの黄金チーム、河西新太郎作詞、大川かづゆき作曲、島田雅行振り付けだった。意気に感じて高松短大生たちが全面協力し、150人のチームを作った。…(以下略)

(11月1日)

売れてます「うどん音頭」 踊りやすく、色っぽく CDで復刻 軽快なリズム、全国視野に

 音楽を通じて讃岐うどんを幅広く発信しようと、レコード店タマル(高松市)などでCD発売を開始した「讃岐うどん音頭」。軽快なリズムとユニークな詞が注目を集め、県内で徐々に売上を伸ばしている。全国的な讃岐うどんブームを背景に、関連商品にも人気が波及しているようだ。

 同音頭は河西新太郎さん作詞、大川かづゆきさん作曲で、1975年に制作。今年8月のさぬき高松総踊りで脚光を浴びたのを機にCDとして復刻、10月上旬から発売されている。定価は1000円で、発売から1ヵ月経たないうちに約500枚の売上。現在は全国発売を視野に入れながら、うどん店やホテルなど、主に観光客が訪れる場所で広報活動を展開している。同音頭は、阿波おどりのようにテンポがよく、大勢の人で踊りやすい曲調。歌詞は聴く人の興味を引くために、うどんを女性に見立てて色っぽさを漂わせているのが特徴だ。発売に当たって、大川さんが全面的にアレンジし直し、“平成版”としてよみがえらせた。…(以下略)

 時系列を整理すると、「讃岐うどん音頭」は1975年に「河西新太郎作詞、大川かづゆき作曲、島田雅行振り付け」で作られたそうで、それを大川先生が「全面的にアレンジし直し」、平成版「讃岐うどん音頭」としてCDにしたという経緯です。河西新太郎さん(1912~1990)は香川県出身の詩人、作詞家で、県内では高松高校や紫雲中学を始め20校近くの校歌を作詞した方ですが、この時はすでに故人となられていましたので、おそらく大川先生1人による全面アレンジ。筆者も大川先生から完成した「讃岐うどん音頭」のCDを頂きましたが、大川先生は当時すでに70代後半だったこともあってか、かなりの…というかコテコテの昭和テイストの一曲でした(笑)。

 ちなみに、原曲ができた1975年の讃岐うどん界は、県観光協会が「讃岐うどん」を前面に打ち出した観光キャラバン隊を北九州に派遣したり、「讃岐うどん」を主役にした5枚組の観光ポスターを制作したりして「讃岐うどん」が観光PR戦略の中心に置かれ始めた年ですが(「昭和50年」参照)、「讃岐うどん音頭ができた」という記事はどこにも載っていませんでした。

「さぬきうどん交流会」は第2回目

 昨年始まった「さぬきうどん交流会」が2回目の開催です。

(10月24日)

うどん好き集まろう! 香川独自の食文化普及を探る交流会 来月2~4日、サンメッセ 技能グランプリも

 うどん好き集まれ! 「2002さぬきうどん交流会」(県、県生麺事業協同組合など主催)が11月2、3、4の3日間、高松市林町のサンメッセ香川で開かれる。全国ブームを呼んでいる香川のうどん文化をさまざまな角度で紹介。技能グランプリや手打ち教室、パネルディスカッションなど、さぬきうどんのすべてを集めた3日間となる。

 テーマは「世代を超えて 食文化さぬきうどん」。うどん用の県産小麦「さぬきの夢2000」の開発を機に、改めてうどん文化の普及、啓蒙を図る。2日は地区予選を勝ち抜いたうどんを集め、技能グランプリを開催。「ゆでうどん」、「さぬきの夢2000」の2部門で、味や見た目を競う。3日は手打ちうどん&だし教室、最終日の4日は、うどん業界の代表や研究家、県民の愛好者を交えたパネルディスカッションを開く。

 売店、飲食コーナーも充実。夢2000小麦を使ったうどんの販売をはじめ、しっぽくうどんやドジョウうどんの販売・試食会などがある。また、同会場で米麦の消費拡大をPRする「米麦路(べいむぎっじ)フェスタ2000」を並行開催。県産農産物の直売コーナーのほか、料理家・平野寿将さんの料理ショー、人気お笑いコンビくりぃむしちゅーのトークショーなどがある。…(以下略)

 前年開催された「2001全国うどん交流会」は、全国5種類のうどんを集めた「全国うどん屋台」がメインイベントでしたが、第2回の今回は全国のうどん招待がなくなって、技能グランプリ、手打ち教室、パネルディスカッション、売店・飲食コーナー…という寄せ集めイベントみたいになりました。「技能グランプリ」というのは、「ゆでうどん、さぬきの夢2000の2部門」とあるので、昨年までの「さぬきうどん品評会」が名称を変えたのではないかと思われますが、どうなんでしょう。しかしそれにしても、米麦の消費拡大をPRする「米麦路(べいむぎっじ)フェスタ2000」のネーミング、一応「ベイブリッジ」と掛けているのではないかと思われますが、いかがなものかと(笑)。

“練り込み系”、“混ぜ込み系”のうどんが続々と

 この年、なぜかいろんな“練り込み系”、“混ぜ込み系”のうどんがたくさん新聞に載っていましたので、列挙しておきます。

(3月4日)

「さぬきな」シャキッ うどんめし好評

 綾南町滝宮の道の駅滝宮で発売を始めた「うどんめし」が、観光客らに好評だ。ご飯にコシのある讃岐うどんと県農業試験場が開発した「さぬきな」の浅漬けがマッチしており、独特の食感が人気の秘密。「うどんめし」はご飯の中に細かく切ったうどん、さぬきな、焼き豚、卵を入れ炒めたもので、施設の職員が全国的にヒットした「そばめし」をヒントに考案。具はすべて県産を使用、しょうゆをベースにしたさっぱり味に仕上げている。…(以下略)

(4月10日)

ワイン入りうどん発売 香り、なめらかなこし魅力(さぬきワイン)

 四国唯一のワイン工場「さぬきワイナリー」を経営する第三セクターのさぬきワイン(さぬき市小田)は、「ワイン入りさぬきうどん」を4月下旬から発売する。赤、白の2種類のワインを生地に練り込んだ。ワイン特有の香りとなめらかなこしが特徴。優れた県産農産物の証「Kブランド」の認証も受けた。同うどんは「香川を代表するうどんとさぬきワインを合体しては」との発想から、昨年末、開発に着手。市内の製麺会社の協力を得ながら試行錯誤を繰り返し、1月末に商品化のめどが立った。使用する小麦は県産の「さぬきの夢2000」に限定。小麦粉に加水する際にワインを加えた。赤、白2種類のワインを使い、紅白のうどんに仕上げた。ゆで上がった麺は、ほのかにワインの香りがする。うどんは、冷凍と半生の2種類。4月末から冷凍うどんを宅配専用で発売する。紅白の麺5食ずつが1セットで3800円(送料込み)。同うどんは、同ワイナリーのレストランのメニューにもお目見えする。半生うどんは6月にも発売予定。

(4月23日)

満濃のかりん亭、「ヤーコンうどん」人気

 リニューアルオープンした満濃町の「かりん亭」は「満濃池の畔で味わうヤーコンうどんが最高」と訪れた観光客から人気を集めています。…(中略)…讃岐うどんにヤーコンとヤーコンの葉の粉末を練り込んだ「ヤーコンうどん」。…(中略)…南米アンデス産のキク科根菜「ヤーコン」は、ポリフェノール、食物繊維、ミネラルなどが豊富で、低カロリーダイエット食品として注目されています。…(以下略)

(6月18日)

コラム「産直市の一品」…独特のぬるぬる感、のど越し モロヘイヤうどん(県農協岡田支店ふれあいセンター)

 カロチンはホウレンソウの3倍、カルシウムは約8倍という健康野菜「モロヘイヤ」が大人気。7~8月の旬には1束が100円程度で並ぶ。季節を問わず毎日でも食べてもらいたいと、女性部のメンバーが工夫を重ねて開発した「モロヘイヤうどん」が、今や一番人気となっている。粉末モロヘイヤを練り込んだうどんは淡い緑色が美しく、加熱すると野菜そのものの持つぬるぬるが出て、一層のど越しがよくなる。…(中略)…

(10月29日)

もち麦うどん(綾上町) 素朴な生麺、食物繊維も豊富

 高松空港が見渡せる高山航空公園(綾上町)内にあるのが「たかやま市場」。綾上町東分地域の農家の女性が集まった「かあさんの会」が運営し、毎週日曜日だけ開かれている。一番人気は2年前から販売している「もち麦うどん」。細めの素朴な生麺で、見た感じはそばのよう。茹でてあっさり目のダシをかけて食べると、まさに「もちもち」という歯ごたえだ。モチムギはハダカムギの一種で、血液中の悪玉コレステロールを下げるβーグルカンという食物繊維が豊富。同町の名産として2000年から商品化している。…(以下略)

 以上、この年紹介されたのは「うどんめし」「ワイン入りさぬきうどん」「ヤーコンうどん」「モロヘイヤうどん」「もち麦うどん」の5つ。この手のアイデアはなかなか人気メニューとして定着しませんが、「讃岐うどんブーム」に乗って、いろんなところでいろんな人が動いています。

「讃岐うどん巡礼八十八カ所」の達成者パーティーが新聞で紹介される

 平成12年に筆者がタウン誌上で始めた半年間のスタンプラリー「讃岐うどん巡礼八十八カ所」が3回目を迎え、その達成者パーティーの模様が報道されました。

(12月15日)

讃岐うどん88カ所巡り 422人が大願成就 高松で祝賀パーティー

 大願成就したうどん好きが大集合。「讃岐うどん巡礼八十八カ所」の達成者パーティーが14日、高松市内のホテルであり、巡礼での苦労話などに花を咲かせた。全国的な讃岐うどんブームを裏付けるように、昨年の約2.5倍の422人が達成した。

 巡礼は、讃岐うどんをもっとPRしようと、県内のうどん好きの麺通団メンバーらが発案、今年で3回目。過去2回の達成者らの投票で選ばれた県内の88店を対象に、4月から6ヶ月間、スタンプラリー形式で実施した。達成者は20、30歳代が多く、3回連続は37人。県外組は秋田から宮崎まで20都府県で、4分の1を占めた。福井のカップルは土日を中心に7回も来県したという。

 この日は、達成者やうどん店の主人ら約430人が参加。特別ゲストとして真鍋知事や梅原利之JR四国社長も駆け付け、うどん談義に花を咲かせた。家族4人で参加した丸亀市西本町の主婦尾方美奈子さん(38)は昨年に続き2度目の快挙。「5カ月かかったが、子供と一緒にレジャー感覚で回った。来年もチャレンジしたい」と話していた。

H14記事・達成者パーティー

 「讃岐うどん巡礼八十八カ所」のスタンプラリーは毎年全国から参加者を集めるかなり大きな企画だったのですが、タウン誌ごときの企画(笑)だったせいか、これまで新聞では一度も紹介されませんでした。それがこの年初めて記事になったのは、おそらく年々規模が大きくなって全国から達成者が400人を超え、スポンサーのキリンの支社長と味の素の支店長に加え、真鍋県知事やJR四国の梅原社長まで参加したためだと思われます。

 ちなみに、先にも触れましたが、この年の3月に筆者がタウン情報の会社を退社したため、「讃岐うどん巡礼八十八カ所」の企画はこの翌年に終了。併せて、「ゲリラうどん通ごっこ」の連載と『恐るべきさぬきうどん』シリーズの発刊と「讃岐うどん王選手権」も終了することになりました。これで筆者が主導した“讃岐うどんプロモーション”は、ひとまず完了です。

オープン広告が増加

 前年60本台に落ち込んだ「うどん関連広告」が100本台に回復。最も多く広告を出したうどん店は大衆セルフチェーンの「はすい亭」で、「かな泉」の時代は明らかに陰りを見せています。製麺会社では、「石丸製麺」が志垣太郎さんを使って積極的に広告出稿を開始しました。

 併せてこの年は、オープン広告が6本も見つかりました。『讃岐うどん全店制覇』のデータによると、この年に県内でオープンしたうどん店の数は45軒。この頃すでにオープンしても新聞に広告を出さないうどん店がかなり増えてきていましたが、広告代理店が少し動いたのかもしれません。

<県内うどん店>
【高松市】

「はすい亭」(高松市成合町他)…… 11本
「かな泉」(高松市大工町他)…………8本
「こんぴらや」(高松市林町他)………7本 4月27日香川町川東店オープン 7月30日松縄店オープン
「さぬきや」(高松市塩上町)…………2本
「さぬき麺業」(高松市松並町)………2本
「桃山」(高松市丸亀町)………………1本 5月25日オープン
「さか枝」(高松市番町)………………1本
「ばん家」(高松市番町)………………1本
「川福」(高松市寿町)…………………1本
「丸川製麺」(高松市中新町)…………1本
「松下製麺所」(高松市中野町)………1本
「塩田麵業」(高松市栗林町)…………1本
「さぬきうどん」(高松市栗林町他)…1本
「山正」(高松市松島町)………………1本 7月27日オープン
「久米池うどん」(高松市新田町)……1本
「田舎人」(高松市春日町)……………1本
「わら家」(高松市屋島中町)…………1本
「讃岐っ子」(高松市多賀町)…………1本
「はまかいどう」(高松市西町)………1本
「中北」(高松市勅使町)………………1本
「千ちゃん」(高松市寺井町)…………1本
「まるいち」(高松市一宮町)…………1本
「てら屋」(高松市檀紙町)……………1本
「北山うどん」(高松市鬼無町)………1本
「ヨコクラうどん」(高松市鬼無町)…1本

【東讃】

「寒川」(三木町)………………………2本
「六車」(白鳥町)………………………1本
「桜や」(大川町)………………………1本
「吉本食品」(大内町)…………………1本
「入谷製麺」(長尾町)…………………1本
「郷屋敷」(牟礼町)……………………1本
「麺喰」(三木町)………………………1本
「もり家」(香川町)……………………1本

【中讃】

「いきいきうどん」(坂出市京町)……2本
「まえば」(綾歌町)……………………2本
「こんぴらや」(琴平町)………………2本
「日の出製麺所」(坂出市富士見町)…1本
「めん吉」(坂出市林田町)……………1本
「遊どん」(坂出市川津町)……………1本 11月20日オープン
「山下うどん」(坂出市加茂町)………1本
「あれんじ亭」(丸亀市大手町)………1本
「まごころ」(丸亀市蓬莱町)…………1本
「明水亭」(丸亀市垂水町)……………1本 2月9日オープン
「長田in香の香」(善通寺市金蔵寺町)1本 4月14日オープン
「とみや」(善通寺市金蔵寺町)………1本
「飛ざる」(国分寺町)…………………1本
「まるや」(国分寺町)…………………1本
「サヌキ食品」(綾歌町)………………1本
「小縣家」(満濃町)……………………1本
「長田うどん」(満濃町)………………1本
「こんぴらうどん」(琴平町)…………1本
「めりけんや」(宇多津町)……………1本
「おか泉」(宇多津町)…………………1本

【西讃】

「渡辺」(高瀬町)………………………1本
「将八」(観音寺市他)…………………1本

【島嶼部】

「創麺屋」(内海町)……………………1本

<県内製麺会社>

「石丸製麺」(香南町)…………………6本
「日糧」(詫間町)………………………3本
「サンヨーフーズ」(坂出市林田町)…2本
「大喜多製粉所」(宇多津町)…………1本
「大庄屋」(琴平町)……………………1本
「藤井製麺」(三木町)…………………1本

<その他うどん業界>

「さぬき麺機」(高瀬町)………………2本
「香川県生麺事業協同組合」……………1本

●「こんぴらや」(高松市林町他)…4月27日香川町川東店オープン、7月30日松縄店オープン

H14広告・こんぴらや川東店オープン

●「桃山」(高松市丸亀町)…5月25日オープン

H14広告・桃山オープン

●「山正」(高松市松島町)…7月27日オープン

H14広告・山正オープン

●「遊どん」(坂出市川津町)…11月20日オープン

H14広告・遊どんオープン

●「明水亭」(丸亀市垂水町)…2月9日オープン

H14広告・明水亭オープン

●「長田in香の香」(善通寺市金蔵寺町)…4月14日オープン

H14広告・長田in香の香オープン

●「石丸製麺」が志垣太郎さんを起用した広告を開始。

H14広告・石丸製麺

(平成15年に続く)

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