香川県民のさぬきうどんの記憶を徹底収集 さぬきうどん 昭和の証言

観音寺市観音寺町・昭和31年生まれの男性の証言

昭和の観音寺のうどんの記憶(器屋茶房がらん堂 真鍋泰明さんのお話)

(取材・文:

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  • vol: 281
  • 2018.09.20

大野原の萩原のおばあちゃんが打ってた細麺のうどんがおいしかった

 子供の頃(昭和40年前後)、近くにあったのは「ふみよ」っていううどん屋さん。うどん屋といっても、麺は確か「柳川」から仕入れてたと思うんだけど。うちにお客さんが来たら親に「ちょっと出前頼んでこい」って言われて、「ふみよ」さんからきつねうどんを運んでもらったりしてた。「きつねうどん」って呼んでなかったかもしれんけど、アゲが乗ってたから。

 幼稚園の頃(昭和35年頃)は家でもうどんを打ってて、よく踏むのを手伝わされた。でも、踏んだというのは覚えてるけど、食べたというイメージが全然ないんよね(笑)。家でうどんを食べたので覚えてるのは、大学を出てこっちに帰って来た頃(昭和50年代前半)、大野原の萩原のおばあさん(私の祖父の妹)が「うちで打ったんや」いうて持って来てくれた細麺のうどんを食べた記憶はあるんよ。親父がそのうどんが好きで、「あー、やっぱりおばさんのうどんはうまいわ」言うて食べてたのを覚えてる。萩原のおばあさんの家は兼業農家で(私の祖父はそこから養子に来てた)、家で代々うどんを打っていたのが続いてたんだろうと思いますね。

 法事のうどん? このあたりは浄土真宗が多いみたいですけど、法事でうどんは出さないですね。家内の実家は金蔵寺(善通寺市)なんですが、そっちに行ったら必ずうどんが出ますし、お代わりもしないといけない(笑)。

昔は製麺所とうどん屋さんが別々に存在していたような気がする

 うどん屋に行ってうどんを食べるようになったのは、大学を出てこっちに帰ってきてからですね。でも、昼はほとんど店にいるから、だいたい自分の店でお昼ご飯を食べることが多くてね。誰か来た時に「じゃあうどんでも食べに行きますか」とか言うぐらいで。あとは柳川さんでうどん玉を買ってきて、家でダシを作って食べるっていうのが普通のパターンで。だから、当時のうどん屋さんのことはあまりよく知らないんですよ。

 覚えてる限りで言うと、私が大学から帰ってきた昭和57年頃には、豊浜の箕浦の駅のところで「かな泉」が営業してたかな。あと、観音寺の競輪場の近くに「一(いち)」っていうセルフの店があったけど、あそこはこのあたりではセルフの始まりくらいじゃなかったかな。

 ただし、昔は製麺所とうどん屋さんは別みたいな感じで、自分のところで麺打ってるところはあんまりなかったように思います。柳川さんは昔から製麺と食べるんと一緒だったけど、他は柳川さんや他の製麺屋さんからうどん玉を仕入れてうどんを出してる食堂みたいなうどん屋さんが多かった。

 製麺屋さんでは、今はもうなくなったけど「岩田屋」さんがおいしいと評判で、朝は結構たくさんの人が押しかけてましたね。ゆで麺をスーパーなんかに卸してましたけど、そりゃ打ち立ての方が断然おいしいから(笑)。でも、ああいう町の製麺屋さんはほとんどなくなりましたね。後継者がいなかったり、駐車場がなくて車社会から置いていかれたりして。

NHKの番組に一言(笑)

 話は変わるんですけど、昔のNHKの番組で平賀源内を題材にした『天下御免』(1971年10月~1972年9月)っていう番組があったんですけど、その中で平賀源内が江戸に向かう途中に「さぬきうどん」だったか「うどん」だったかの看板を出した店を見つけて「ええっ、こんなところに讃岐うどんの店があるとは」と言って店に入っていったんです。そこで、平賀源内がそのうどん屋のおばさんに「あんた、どこの出身?」と聞いたら、おばさんが「観音寺です」と言ったんですけど、その「かんおんじ」のアクセントが全然違ってて、すごく幻滅したのを未だに覚えてますよ(笑)。まあ、全国ネットのドラマなんかで方言のアクセントがおかしいのはしょっちゅうあるけど。

 それにしても、何で「観音寺の人がやってるうどん屋」という設定になってたのか(笑)。脚本の早坂暁が愛媛の人だったから、近いところにある観音寺が浮かんだんかな? 明治時代に観音寺は愛媛県に吸収されてた時代もあったからな(笑)。

●編集部より…昭和の観音寺の有名製麺屋さんは「柳川」と「岩田屋」。それにしても、文化財級の佇まいを持っていた岩田屋さんの閉店は、讃岐うどん文化の継承的観点からも実に惜しまれます。「萩原のおばあちゃんの細麺」も、昔の「家で打つうどん」の話の中に「細麺」という言葉や実感が出てきたのはたぶん初めてなので、ちょっと引かれました。あと、方言のアクセントは、例えば「さぬき」は「さ」にアクセントを置く発音がNHK等で正式アクセントとされたそうですし、「せとうち」も「と」にアクセントを置く(それは「寂聴」じゃないか・笑)のが正式とされるなど、もう“中央”のやりたい放題なのであきらめましょう(笑)。

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