さぬきうどんのメニュー、風習、出来事の謎を追う さぬきうどんの謎を追え

vol.15 新聞で見る讃岐うどん

新聞で見る讃岐うどん<昭和33年(1958)> 

(取材・文:  記事発掘:萬谷純哉)

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  • vol: 15
  • 2019.09.09

うどんの記事はほとんどなし

 昭和33年の「うどん関連記事」は1本しか見当たりませんでしたので、精麦やそうめん、物産等の記事と合わせて章立てなしで全部並べてみましょう。

(2月15日)

近く給食室を 高瀬高で建築

 高瀬高校では近く給食室を建築する。定時制生徒の健康増進と時間的な便をはかるもので、うどんなどを給食する。高校の給食室は小豆島高についで県下では2番目。工費は5坪で約20万円。

 「うどん関連の記事か?」と言われれば相当苦しいのですが、これしかなかったんだからしょうがない(笑)。とりあえず、前年の「定時制高校で給食希望者のニーズを聞いたらうどんを希望する者が圧倒的に多かった」という調査結果の流れで、高瀬高校に給食室ができることになりました。わざわざ付け加えられた「うどんなどを給食する」という一文が、いかにも讃岐らしさを醸し出しています。

 というわけで、うどん関連記事は以上。続いて精麦業界では、坂出で労働組合が結成されました。

(12月27日)

年末手当支給を叫ぶ 坂出精麦 7工場で”合同労組”結成

 株式会社の企業形態を持ちながら別々の雇い主と雇用契約で結ばれていた労働者が、暮も押し迫って労働組合を結成、年末手当の要求を始めている。

 坂出市梅園町、坂出精麦株式会社(西川実社長)は市内に8ヶ所の精麦工場を持っているが、会社直営の銀麦工場(人造米製造)を除く7つの精麦工場はそれぞれ別個の業者が運営しており、いわば企業組合の形態を採っている。従業員は全部で88人いるが、一つ一つの工場の従業員は7人から16人程度で、それぞれ各工場の責任者(元の雇い主)に雇われた形をとり、給与や労働条件も違っていた。このうち第一工場(西川製麦)では昨年9月、16人の従業員中13人が組合を結成、また第二工場(吉原精麦)でも今年初め16人中15人が組合を作ったが、互に連絡もなく、その他の工場では未組織のため材料不足で工場側が操業を止めても労働者は給料をもらえず、家事手伝いなどに回される状態だった。こうした特殊事情のため、香川地評では今年初めから企業を中心にした組合の結成を働きかけていたもので、去る23日にようやく従業員88人のうち65人がまとまりをみせ”香川精麦合同組合”が生まれ、26日から年末手当30日分と企業主側の休業には労働基準法に基づき6割の休業手当を支給するよう要求している。

 近代的な企業形態を作りながらいまだに親方と職人といった雇用関係に結ばれていたことが今度の労組結成へ動いた大きな理由の一つだが、しかしここ当分は各工場単位の組合を合同したものとして団体交渉も”企業主集団”対”組合集団”の形で進められていく。これは、従業員のほとんどが日給制で雇われ、雇用契約も不安定なものが多いのと、従業員の中には組合加入が雇い主に知れてやめさせられるのを恐れている者が多いための暫定的な手段で、組合結成を働きかけた地評としては次の段階で一つの企業の組合にまとめ、雇用条件の統一をはからなければならないとみている。

 一方、西川実社長はこれについて「組合が結成されるのは結構だが、坂出精麦は工場の経営をやらない企業組合だから全く見当違いだ。従業員の要求も各個人工場へ話してもらわなければならない。しかし、個人企業は大企業と違うのだから親方、子方で互いに面倒をみるもので、組合を作れば情がなくなるから労働者の損になるのではないか。いずれにしても円満に話がつくだろう」と話している。

 「企業組合」という組織の経営責任体制がよくわかりませんが、とりあえずこの頃、香川地評(香川地方労働組合評議会)がいろんな所に労働組合の結成を働きかけていたらしく、香川の精麦業界にもその動きが出てきたということのようです。

(11月30日)

手延そうめんの製造本格化 池田町の名産品

 小豆郡池田町で特産の手延そうめんの本格的生産が始まった。昨年冬に生産した手延そうめんは今年の夏に売切れ、小売店のストックが全然ないので、注文が殺到している。今年の生産目標は昨年同様の3万7000箱(1箱18キロ入り)で、先頃から製造を開始、来年3月までに終わる予定。

 毎年何度も出てきていた「そうめんの生産情報」は、今年はこれだけです。特に状況に変化がなくて書くことがなかったのかもしれません。続いて、一応これまでに何度か取り上げたので、その流れで「食用ガエル」の記事を1つ。こんなのまで動員しないといけないくらい、この年は本欄で扱う記事がありません(笑)。

(9月3日)

食用ガエル増殖へ 捕獲禁止期間延長などで協議会

 香川県では8日午前9時半から県庁で、食用ガエル増殖のため捕獲禁止期間を延長してはどうかにつき、関係者を招いて協議する。香川の冷凍食用ガエルは特産品としてかつては年間187.5トンをあげ、全国第1位を占めていたが、乱獲と農薬のため最近は年間26トン~30トンに減っている。県ではこの対策として、いままでの捕獲禁止期間6月15日から7月14日までの1ヶ月を、1月1日から6月30日までの半年間に延ばし、食用ガエルの繁殖をはかろうとしているが、同日の協議で最終的な結論が出る予定。

 かつて「香川の食用ガエルの生産は年間5万9800貫(約224トン)で中四国一だった」というデータがありましたが(「昭和26年」参照)、何と全国一だったとは! ちなみに、昭和31年に県が国分寺町で「香川県食用カエル養殖場」の建設に着工し、国分寺町長も「将来、町の新産業計画にとり入れたい」と意気込んでいましたが(「昭和31年」参照)、近年の生産量は年間30トン以下にまで落ち込み、ここにきて捕獲禁止期間の延長を図ろうとしているのでは、ちょっと戦略が迷走気味かもしれません。

 続いて、物産展のニュースはこの年は1本だけ。

(2月7日)

買われる”郷土色” 名古屋の四国観光物産展好評 香川からは漆器や盆栽を出品 民踊と踊り披露 値ごろな品に重点置く

 四国の特産品の紹介と名古屋地方へ販路を伸ばそうとする四国瀬戸内海観光物産展が6日、名古屋市中区栄町丸栄百貨店で開幕した。伊予ガラスの実演、観光ニュース映画の上映、4月から高知市で開かれる南国博の案内をはじめ、会場にあてられた250坪には青い空気や南への郷愁をしのばせる四国各県の特産物、金額にして約1000万円がいっぱいに並べられ、開幕早々から客足は好調でにぎわっている。8、9両日には四国民踊と踊大会で、高知県太刀踊、愛媛県伊予万歳、徳島県阿波踊、香川県金毘羅舟々を地元各県の有志70人が参加して、この物産展を盛り上げようとしている。

 特に目立った特徴は、各県とも名古屋の土地柄、客筋の性格を考えて比較的買いやすい値ごろの特産品を並べて、宣伝販路を拡げたいという意欲に燃えていることで、観光方面では四国の処女地としての足摺岬の宣伝が積極的であることだ。

 香川県では県下26業者、金額150万円の特産品を出品、讃岐漆器、鬼無盆栽、魚せんべい、大和豆腐、神楽獅子、オリーブ油、木製食器などを陳列しているが、地元から派遣されている関係者の話では、金額の大きい讃岐漆器は名古屋の卸業者に売込み、契約も進んでいる。高額な香川県のみやげ品は避けて、名古屋の土地柄に合ったわらべ焼の鬼無盆栽や大和豆腐など以前と趣きを変えてやっていたが、人気を呼ぶだろうかと真剣な顔で話していた。

 各県の特産品で名古屋地方の関心を呼ぶとみられるものは、
香川県=讃岐の漆器、小豆島オリーブ、神楽獅子、魚せんべい
徳島県=阿波みそ、竹製品、徳島鏡台、鳴門わかめ、ひしおみそ、阿波人形
愛媛県=伊予がすり、真竹細工、五色そうめん、姫ダルマ、牛鬼など郷土玩具
高知県=土佐紙、土佐節、土佐打刃物、さんご細工
などで、特産品中、全国に知れ渡っている伝統あるものに集中されるであろうと予想される。なお、7日には名古屋地区の地元卸売問屋、県市商工会議所の観光物産関係者と四国観光物産展の批判会を開く。会期は11日まで。

 名古屋の百貨店で行われた四国観光物産展。広さ250坪は大体サンメッセ高松の1階大展示場の5分の1ぐらいの広さですが(わかりにくいな)、そこで物産の展示即売に加えて、踊りや映画上映や伊予ガラスの実演などが行われました。でも、「手打ちうどん実演」はありません。ちなみに「手打ちうどん実演」をやると、うどん(麺線)がどんどんできていくから、そこで麺線(生うどん)を即売するか、厨房設備を用意して茹でて食べさせるかしないといけないんですね。まさか、できた麺を全部ゴミにして燃やして発電するわけにもいかないし(笑)、「手打ちうどん実演」は結構面倒なパフォーマンスなのかも。

 あと、物産関連記事でもう一つ、「鯛の浜焼」が注意を受けていました。

(6月8日)

製造日など記入を 「タイの浜焼」に警告

 讃岐名物「タイの浜焼」に不良品があると最近香川県へ苦情が2、3舞い込んでいるので、県では製造にあたって十分注意するよう7日、業者へ警告を発した。食中毒防止ならびに県特産品としての声価を保持するため、製品には製造所在地、年月日、氏名を明記し、責任の所在をはっきりすること、カビが生えたり腐敗しないように製造に注意することなどを望んでいる。

 物産展の香川の商品でしょっちゅう出てくる「鯛の浜焼」は、鯛をワラで包んで塩を振って蒸し焼きにしたもの。でも、この頃こんなにもてはやされていたのに、今日の「香川の名物グルメ」のラインナップにはほとんど出てきません。

2年連続「栄養不足」が叫ばれています

 次に「食生活」に関する記事をいくつか。相変わらず「栄養不足」の問題が盛んに取り上げられていました。

(2月17日)

食費の8割が米麦 池下部落調査にみる 動物性栄養源足らぬ

 琴平保健所では32年度厚生省指定の善通寺市善通寺町の32世帯183名を対象に国民栄養調査を4日から7日まで行ったが、その結果がまとまった。これによると、生産者世帯(田畑3反以上耕作農家)では1日の食事で大人は1人当り2226キロカロリーをとり、タンパク質は44グラム、消費者世帯では2096キロカロリー、タンパク質は65グラムで、カロリーでは大人1人の必要量(2180キロカロリー)と大差はないものの、タンパク質はいずれも必要量を下回っていた。これは米麦中心の食事を物語っている。

 また、生産、消費者世帯の1日の摂取脂肪量は16グラム、カルシウムは417ミリグラム、ビタミンB1は116ミリグラム、同B2は76ミリグラム、同Oは157ミリグラムで、いずれも必要量に満たず、副食物の改善が望まれる。なお、1人当りの1日の食費は101円2銭で、その7、8割までが米食に費やされ、副食軽視の”質より量”の昔通りの食事ぶりであることが分った。

 まずは、善通寺の農村部で栄養調査を行った結果、「米麦中心の食生活でタンパク質が足りない」「食費の大半が米麦に費やされ、副食軽視の昔のままの食生活を続けている」という指摘がありました。そして続いて、全国的な「国民栄養調査」の結果と分析記事が。

(10月17日)

栄養欠陥4人に1人 白米偏重が原因 農村部がとくに悪い 強化米や油を使って改善

 4年続きの豊作朗報は、その半面、白米偏重の悪い食生活がますます助長されて、栄養的に面白くない結果を招くものとして心配されていますが、このほど発表された「国民栄養調査」の統計にも、こうした栄養欠陥がはっきり現われています。

 栄養調査の結果を繰り返してみますと、まず白米を食べる率が増えたために、ビタミンB1の摂取量は昨年よりもグンと減っているのが目立ちます。それに続いて、満腹感が早く得られるため副食類が少なく、脂肪やカルシウムが低下し、前年よりは多少増えている動物タンパク、ビタミンAも標準量に比べるとまだまだはるかに及びません。たとえば、成長源になる栄養、動物タンパクは1日に30グラム必要なのに、農村では19.5グラム、都会でも25.7グラム、油にいたっては1日30グラム欲しいところ、農村は19グラム、都会は24.1グラム、牛乳でもせめて1日1人0.18リットルは飲んでもらいたいのに、実際の摂取量はたった33.7グラムという状態です。そのため、栄養不足による障害は前年よりも増え、100人中25.9人までがB1欠乏のカッケ症を持っていることが証明されました。また、貧血、口角炎、むくみなどの栄養障害症も多く、国民の4人に1人はこれらの欠乏症にかかっていることになります。そして、これらの傾向は都市よりも農村に強く、栄養知識の水準が低くなっているようです。

 厚生省では近く栄養審議会を開いて根本的な食料政策を立て直すと同時に、とくに栄養障害のひどい地方には、食生活改善のための特別委員会を作って、栄養指導の3ヵ年計画に乗り出すことを決めました。ところで、これら足りない栄養を、毎日の食事の上でどう補給していったらよいのか。次に具体的な栄養計画のヒントを国立栄養研究所の森本喜代さんに教えてもらいました。一番大事なB1の補給には、強化米の利用を考えること。お米1.8リットル(1升)に対して大さじ1杯くらいでよいのですから、ごく少量ですむし、使い方も簡単、味にも変わりありません。農村には強化米のあることすら知らない人がいるらしいのですが、白米を食べる以上は必ず強化米を混ぜる習慣をつけてほしいものです。また、近ごろはB1、B2とカルシウムを強化した強化みそもできています。お値段は普通のみそと同じですし、農村では自家製みそに強化することもできます。食品からとる場合には、豚肉、大豆、レバー、乳(ヤギ乳、牛乳、粉乳など)野菜(キャベツ、モヤシ)の利用があります。レバーには好ききらいがあっても、豚肉でしたらヒキ肉にして揚げもの、いためものに料理範囲は広く、また大豆は安くて、B1のほかカルシウムや脂肪も豊富な栄養食品です。

 さらに大豆は、タンパクを含む大切な栄養源でもあります。とくに農村では一番入手しやすいものでしょう。これは植物性のタンパクですからみそ汁に、煮豆に、納豆などのほかに時おりは動物性を加えます。たとえば煮干、スルメや干ダラなどの乾物類、川魚、ヤギ乳に牛乳、卵や廃鶏も全部売らずに1個くらいは残して自家用に回しましょう。Aは一滴で千単位という水溶性のもの作られていますが、一般家庭では色のついた野菜をふんだんにとるのが早道です。この場合は油と一緒に使うと、栄養価ばかりでなく、料理も早く味もよくなります。ニンジンや大根の葉にはとくにAが豊富ですから、油で炒めてみそ汁に入れたり、ひき肉などと一緒にして上手な食べ方を工夫しましょう。

 油は量が少なくて熱量を満してくれる大切な栄養源です。一升めしを食べるという農繁期でも、野菜の油炒めやスルメ、煮干などを副食に加えていくと、主食のご飯量は少量ですむようになります。農繁期に入って急に転換するのが無理な場合には、おやつ時間に食べる小昼を、うどん、パン、握り飯などにして、それに油を使うことを考えます。粉食には野菜や肉の炒め物を加え、残りご飯はチャーハンのように油と野菜を混ぜて味よくします。また農閑期を利用してだんだんに慣らしていくのもよいでしょう。パンやうどんはすぐお腹がすくというのも、それに伴う油、タンパクが欠けているからなのです。油はバター、マーガリンのほか、ゴマ油、クルミ油など、手近にあるものをなんでも利用することを考えましょう。

 前半は「米食が増えてビタミンB1、A、動物性タンパク質等の摂取量が不足している」「栄養障害が増えている」「農村の栄養知識水準が低い」等の、これまで何度も指摘されてきた内容の繰り返し。後半も「強化米を食べよう」をはじめ、これまでと同じような料理の工夫が紹介されています。

 続いて、「栄養の足りない食事」と言えば、“あれ”です。「島の茶粥」がまたまたやり玉に挙がっていました。

(4月4日)

パン食へ移行図れ 県農業改良課、佐柳島の食生活を調査 茶ガユはカロリーが低い

 県農業改良課では昨年7月から、季節的に茶ガユを常食としている佐柳島、志々島、粟島の一部のうち佐柳島について茶ガユの実態調査を行っていたが、その結果をこのほどまとめた。この調査団には県係員、香川大学教授、県衛生研究所員などが加わり、昨年の7月、11月、本年の2月と3回にわたって調べた。結果の大要は次の通り。

 食生活の上からみて茶ガユは思わしくないので、これをどう改善すればよいかに焦点を絞って調査が行われた、実際は米が穫れないので、これが習慣となり、常食となった。茶ガユではカロリーが低く、これを農林省が調査した瀬戸内の基準量に比べると、ビタミンB1だけが上回っている。これは茶ガユの中にササゲ、ソラ豆を入れるためである。全体的にみた場合、食生活のカロリーは低く、体位が悪いといえる。対策としては、米作ができない地理的な環境から、必然的に茶ガユの質的向上が望まれる。

 また、小麦を栽培するよう作付転換をはかるべきではないか。これについては、風、乾燥などの点が今後に残された問題である。結局、パン食への移行が大切だが、今すぐ実施することはむずかしく、徐々に蒸しパンやスイトンなどから慣れて行くことが結論づけられる。

【調査結果】
 茶ガユの回数は年間を通じて1日1回以上となっており、2回程度の農家が多く、3回程度の農家は18%である。収穫期によって茶ガユの中には夏季はササゲを入れ、秋や冬はサツマ芋を入れている。また、米が不足しているので麦を混入している農家が多いが、このために各季とも瀬戸内基準に比してビタミンB1は上回っている。しかし、水分が多いので、平均4杯、最高6杯も食べないと満腹感がなく、また口の中にやけどをするほど熱いうちに食べるのがうまいといわれている。幼い学童は茶ガユのワンの数が少ないので、成長にも影響し、体力が劣っている。結局、茶ガユは栄養的ではないわけだ。

【どう改善するか】
 茶ガユは長い間の習慣となっており、急には改善できない。しかし、小麦粉の利用が意外に多く、「だんぼ」と呼ばれる蒸しパンがあり、幼い児童は昼食がわりに市販のパンを購入している。またメン類も好んでいる。これらの点から、今後は小麦栽培を導入して小麦粉の上手な利用法を指導すべきだ。しかし、老人層は1日3回の茶ガユを好んでいるので、この層には段階的に水分の多い小麦粉利用料理が導入されると考えられる。またメン類の栄養的な食べ方も指導すべきだ。野菜はほとんど自給しているが、計画的に栽培している農家は少なく、緑黄色野菜の栽培が少ないので、今後はこの方面の指導も考えなくてはならない。また各農家は今後、作付の合理化によって自家用として2、3羽の鶏の飼育も可能であり、動物性食品の摂取も向上できるものと考えられる。

 茶粥はもう、目の敵のように非難されています。そして、「茶粥をやめてパン食に移行すべきだ」「そのために小麦栽培を進めるべきだ」という方向で「茶粥抹殺計画」が着々と進んでいるようです。今考えれば「茶粥と一緒に十分な副食をとるように勧めれば、栄養不足も解消できるし茶粥も文化として残せるんじゃないか?」と思うけど、当時はそんな余裕がなかったんでしょうね。

徳島から「白麦米」の広告が

 最後に、昭和33年の四国新聞に載った「うどん」と「食生活関連」の広告を拾ってみました。まず、麦を割って米のような外観にした“なんちゃって米”の「白麦米」の広告を発見。

(3月17日)

広告/お米とかわらぬ 人形印「白麦米(はくばくまい)」

文化主食 白麦米の特徴
①白麦米は麦を二つに割って黒いオビを除き、米と同じ粒になっている
②たきぶえがし、ビタミンを含んでいるので栄養に富み経済的です
③学生、勤め人のお弁当に好適です
製造元/全国白麦米協会徳島報国精麦工場

 昭和28年に食糧不足解消を謳って政府が推奨を始めた「人造米」(小麦粉80%と砕米及び等外米の粉米20%を混ぜて米粒の形に成型したもの)は、「臭い、まずい」と言われてすこぶる評判が悪かったようなのですが、それを受けて翌29年に「米不足を補う時代のホープ」として量産が始まったのが、この麦を2つに割って黒いオビを取り除いて米みたいな外観にした「白麦米」(当初は「米粒精麦」と呼ばれていました)。この年には「文化主食」なる珍妙なキャッチフレーズまで付いています。ちなみに、昭和29年の発売開始から4年も経って徳島の製造元が香川の四国新聞に初めて広告を打ってくるということは、大人気で調子がいいから広告を出してきたというより、売り上げが伸びないので県外に販路を求めてきたようにも見えるのですが、どうでしょう。

 続いて、高松三越で行われた「讃岐うまいもの会」の広告。

(11月1日)

広告/第1回 讃岐うまいもの会

 郷土名物として誇る名代老舗が、風味自慢の銘菓、即席料理などを準備して讃岐風味をご賞味いただきます。深みゆく秋の一日、皆さまおそろいで讃岐の味をおたのしみ下さいませ。

■菓子
かまど……………荒木屋
瓦せんべい………宗家くつわ堂
木守高松さま……三友堂
なんばん焼………春風堂
源平餅……………吉岡原平餅本舗
ふどう餅…………巴堂

■特設茶屋
おはぎ……………エビスヤ
ちらしすし………花月
おそば、うどん…更科
うなぎ丼…………南風
コーヒー…………春風堂

 麺類の出店は、うどんの専門店ではなく、そば・うどんの「更科」です。職安の求人から見ると、この頃すでに「うどん店」は結構あったようですし、「源芳」は昭和22年にオープンした「築地新世界」にすでに飲食店として出店していましたから(「昭和22年」参照)「特設茶屋」くらいなら出店できるうどん店もあったのではないかと思いますが、「更科」は高松三越のすぐそばにある店なので、手近なところに頼んだのかもしれません。

 その他、5月26日に「香川県庁新築落成」の広告があり、うどん及び飲食関連では「四五銭亭」「香川県製粉製麺組合(景山薫理事長)」「香川県精麦工業協同組合(高畑勝理事長)」が協賛広告を出稿。10月14日には「鉄道記念日」の広告に「高松駅弁当株式会社」が出向していました。高松駅弁は当時、宇髙連絡船の中の売店を運営していたので、あの「連絡船のうどん」も高松駅弁がうどん玉を仕入れて営業していたと思われます。

「金泉」が年間40本近い求人広告

 求人広告では、「うどんの庄・かな泉」の前身である「有限会社金泉食糧商会」が、年間を通じて40本近い求人広告を出していました。しかも、そのうち30数本は無料の職安を通じてではなく単独の有料求人広告ですから、事業拡大か何かがあったのか、かなりの力の入れようです。その内容をいくつか紹介すると、

(単独求人広告)
▽手打うどん職人募集
・経験2年以上、年齢不問、2名、住込可能な人、委細面談
▽見習(男)、女子従業員 若干名
金泉食糧商会

▽男女従業員募集
・年齢25才迄、住込可能な方、経験者優遇
手打うどん中華そば製造卸/金泉食糧商会

(職安求人広告)
高松公共職業安定所
▽男子うどん職人
・30才迄、経験2年以上、住月収6000~8000円
某食糧商会

 「金泉」は資料に「昭和28年創業」とありましたが、昭和33年時点での肩書きは「手打ちうどん中華そば製造卸」です。うどん店の「うどんの庄 かな泉」が出現するのはまだまだ後のことです。ちなみに、職安(公共職業安定所)は公的機関なので「求人会社名を明記できない」というルールがあって「某製麺所」とか「某うどん店」という表記をしているのですが、「某食糧商会」って、「金泉」まるわかりやん(笑)。

(昭和34年に続く)

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