映画『UDON』が公開される!
平成18年(2006)の讃岐うどん界最大の話題は、映画『UDON』の公開です。丸亀市出身の本広克行監督のもと、3月から県下各地でロケが始まり、そこに県の「フィルムコミッション事業(映画ロケ誘致事業)」が乗っかって大々的に宣伝&サポート活動が展開され、8月26日に晴れて全国で封切りとなりました。その間、地元メディアでは県内ロケの様子から、監督や出演者等へのインタビュー、地元の盛り上がりぶり、公開時の盛況ぶり等々が盛んに報道され、県内は“お祭り騒ぎ”の1年になりました。ではまず、映画『UDON』の関連記事から見ていきましょう。
本広監督、丸亀お城まつりの「お城村」の村長に就任
映画『UDON』は「讃岐うどん巡りブーム」たけなわの平成16年(2004)頃に本広監督が構想を練り始め、そこから2年近くかけて脚本や配役、撮影スケジュール等が決まり、平成18年(2006)3月8日にニューヨークでクランクイン。そして3月19日から香川県内での撮影が始まりましたが、県内ロケが始まると、県下各所で「本広監督を担ぎ出そう」という動きが起こります(笑)。そしてさっそく5月に本広監督の出身地の丸亀市が動き、丸亀お城まつりの「お城村」の村長に本広監督が就任しました。
本広監督が村長に 来月の丸亀お城まつり イベントや映画盛り上げに協力
来月開く「第57回丸亀お城まつり」の第31回丸亀お城村の村長に5日、丸亀市内をメーンに撮影中の映画『UDON』の本広克行監督(40)が決まった。お城村実行委は「期間中に監督に来場してもらい、祭りや映画のPRに協力してもらいたい」としている。本広監督は丸亀西中、琴平高卒。バラエティー番組のディレクターなどを経て映画監督デビューし、『踊る大捜査線』などのヒット作を手がけた。最新作の『UDON』は8月末に全国公開される。…(以下略)
本広監督は『踊る大捜査線THE MOVIE』の大ヒットで、すでに知名度は全国区。地元丸亀市は、“郷土出身の有名人”をさっそく「お城村の村長」に起用です。
県内ロケが始まる
県内ロケ開始から1カ月後の4月20日、本広監督と亀山千広エグゼクティブプロデューサー、主演のユースケ・サンタマリアさん、小西真奈美さん、鈴木京香さん、トータス松本さん、小日向文世さんが来県して、映画製作の中間報告会が行われました。
見たことない作品に 丸亀で映画『UDON』制作報告会 本広監督、地元で意欲 主演のユースケさんら会見
丸亀市出身の映画監督本広克行さん(40)が指揮を執る今夏公開される話題の映画『UDON』の撮影が折り返しを迎え、20日、同市内のロケ地で制作報告会があった。本広監督は「故郷を舞台にした映画にこれまでの経験をすべてぶち込み、全く見たことがない作品に仕上げたい」と意欲を語った。
映画は、香川を飛び出して渡米したうどん屋の息子が夢破れて帰郷。ふとしたきっかけでうどんの素晴らしさに気づき、タウン誌にコラムを連載すると、全国にブームがわき起こるという物語。本広監督が『踊る大捜査線THE MOVIE』や『交渉人 真下正義』などに出演したユースケ・サンタマリアさん(35)とタッグを組んだエンターテイメント作品。会見には本広監督、主演のユースケさんと小西真奈美さん(27)、鈴木京香さん(37)、トータス松本さん(39)、小日向文世さん(52)、亀山千広エグゼクティブプロデューサーが出席した。…(中略)…
地元でのロケは2本目となる本広監督。「(元タウン誌編集長の)田尾和俊さんに影響されてスタートしたこの作品で、世界に羽ばたきたい」と力強く語った。同映画は3月8日、米国ニューヨークでクランクイン。同19日に県内ロケがスタートし、丸亀市を中心に4月末ごろまで撮影する予定。…(以下略)
実はこの映画の企画が始まる前、本広監督が筆者のところへ「讃岐うどん巡りブーム」の発端の経緯と麺通団の活動内容を何度か聞き取りに来られました。そこでいろいろ話しているうちに、筆者に「脚本を書いてくれないか」と依頼されたのですが、スケジュール以前に「能力不足でとても無理だ」ということでお断りをしたら(笑)、その後、ちゃんとした脚本家の方の手によって、恐れ多くも「麺通団の活動内容をベースにした映画」に仕上がってしまいました。
ちなみに、映画の登場人物のモデルは、まず、主人公のユースケ・サンタマリアさんと編集者役の小西真奈美さんと編集長役の升毅さんは麺通団団長の筆者がモデル(筆者のやってきたことが3人の登場人物に分割されています)、地元広告営業マン役のトータス松本さんは麺通団員A藤がモデル、編集部制作担当役の要潤さんは麺通団員S原がモデル、松井製麺所の大将役の木場勝己さんは元祖「宮武」の対象の宮武一郎さんがモデルです。
あと、記事に「地元でのロケは2本目となる本広監督」とありますが、1本目は前年に公開された、四国学院大学の古い校舎をメイン舞台にした『サマータイムマシン・ブルース』。
本広監督が宇多津で記者会見
続いて4月29日に、今度は本広監督が単独で、宇多津のホテルで記者会見を行いました。
「うどん通うならせる」 本広監督会見 ロケに手応え 素晴らしいバックアップに感謝
丸亀市を中心にロケを行い、今夏公開される映画『UDON』の指揮を執る本広克行監督(40)=同市出身=が29日、宇多津町内のホテルで記者会見を開いた。完成を前に、川北副知事が感謝と激励の気持ちを込めて記念品を贈呈。本広監督は「3分の2は完成したが、大切なのはここから。子どもからお年寄り、うどん通をもうならせる手応えはある」と自信を示した。…(中略)…
地元での撮影について本広監督は「同級生や仲間が多いことに加え、フィルムコミッションがしっかりしているので、すべて言わずとも相通じるものがあった。素晴らしいバックアップだった」と感謝。「できるだけ地元の人に出演してもらった。子どもたちの柔らかな表情などは、他に代わるものがない」と地元ならではの持ち味が生かせたことに満足そうな表情を浮かべた。『UDON』は、8月26日から全国東宝系で一斉公開。県内ではワーナー・マイカル・シネマズ高松と同宇多津で上映される。
記者会見に合わせて、県の川北副知事から本広監督に記念品が贈呈されました。川北副知事は、平成14年に開催された「第16回全国スポーツ・レクリエーション祭~スポレク香川2003」で「うどんツルツル! スポーツスルスル!!」という斬新な(笑)大会スローガンを打ち出したご本人で(「平成14年」参照)、今回の映画『UDON』でも県のバックアップ体制の“元締め”をやられていたようです。
県が映画『UDON』の広告宣伝に乗り出す
そして、その県が2600万円の予算を投入して、映画『UDON』の広告宣伝を開始しました。
『UDON』電車、山手線を走る 映画公開前17日から車体広告 香川の認知度向上へPR
『UDON』電車が出発。県は17日から、JR山手線の車体に、8月から全国公開される『UDON』を活用したラッピング広告を始める。讃岐うどんをテーマにした映画の出演者2人を起用して香川県をPRし、認知度アップや集客につなげる。
車体広告は山手線外回りの1編成(11両)に、主演のユースケ・サンタマリアさんと小西真奈美さんが飯野山(讃岐富士)を背景に讃岐うどんを食べる様子などをデザイン。「いま、『UDON』・香川が熱い」のキャッチコピーをあしらっている。10月8日まで約3ヶ月間運行する。また、東京モノレールなど首都圏3路線の車内や東京のアンテナショップ「せとうち旬彩館」などに同様のポスター4700部を掲示。ロケ地マップも配布する。県内では、うどん店や駅、学校、企業などあらゆる施設にポスターの設置を働きかける他、県外客を対象にうどん店や宿泊施設などを巡るスタンプラリーを実施する。予算は約2600万円。…(以下略)
普通は行政が民間の事業に大きな予算をつけて肩入れすることはないのですが、香川県が地域活性化事業の一環として観光協会内に「フィルム・コミッション(映画のロケを誘致する事業)」を設けたことから、予算付きでロケのサポートや大々的な広告宣伝を行うことになりました。
「松井製麺所」のロケセットがプチ観光スポットに
映画『UDON』のメインセットになった「松井製麺所」の建物は丸亀市の飯野山を望む宮池の畔に建てられましたが、撮影が終わると、映画ロケ地のシンボルとして「建物を保存しよう」という動きが起こりました。
映画『UDON』のセット「松井製麺所」保存しよう 丸亀で30日にフォーラム
映画『UDON』のロケのために丸亀市内に造られたセット「松井製麺所」。その建物の保存について考えようと、地元の青年団が30日、製麺所の近くで地域住民らを集めたフォーラムを開く。青年団は「せめて1年、できれば永久に残したい」としており、席上、存続のメリット、デメリットなどをテーマに意見を交わし合う。
松井製麺所は映画の主人公の実家。丸亀市土器町の宮池のほとりに建てられ、3月中旬から5月初旬にロケが行われた。木造2階建ての古い家と製麺所からなり、飯野山を望む豊かな自然の中にある。現在は撮影した当時のままの状態で、映画の制作会社が所有する。フォーラムを開くのは製麺所がある川古地区の青年団。「セットは観光名所となる一方、残せば維持費や交通渋滞なども問題になる」と悩んでいたが、まずは関係者の声を聞いてみようと企画した。会議には地元のPTAや丸亀市の関係者ら約20人が出席する他、制作会社の担当者も参加する。…(以下略)
その後、「せめて1年、できれば永久に」という希望は叶いませんでしたが、封切り直前に「年内まで保存して一般公開する」ことが決まり、建物は現地でそのまま、内装の主な小道具はレオマワールドで展示することになりました。
映画『UDON』ロケセット、年内保存決まる 26日封切りに合わせて公開 内装はレオマで再現
26日公開の『UDON』の撮影セット「松井製麺所」(丸亀市土器町)が、年内は同所に保存されることが23日、明らかになった。同所に残るのは建物の外観だけだが、封切りに合わせて公開する。地元ではロケセットの保存を希望する動きが起こっていることもあり、新たなうどんブームの人気スポットとなりそうだ。
制作したフジテレビジョンが、同市出身の本広克行監督や地元の思いに応えようと、土地の賃貸契約が切れる年内までの保存を決め、ニューレオマワールドの運営会社レオマユニティーに管理を委託した。…(中略)…レオマユニティーは撮影当時の建物外観に戻すとともに、同所でTシャツやキーホルダーなどの関連グッズを販売。セットの近くには40台分の駐車場を確保した。内装などは小道具製作会社の協力を得てニューレオマワールド内に復元、9月中旬から衣装やロケ風景の写真とともに公開する予定。…(以下略)
そして、公開された「松井製麺所」のロケセットは映画の封切り後、一時的にではありますが、ロケ地跡のプチ観光スポットになりました。
映画『UDON』、ロケセットで余韻味わう 関連グッズも人気 週末には県外車で賑わう
公開中の映画『UDON』の撮影に使われた丸亀市土器町のロケセットが連日、家族連れなどで賑わっている。週末には県外ナンバーの車も周辺に長い列を作り、来場者は赤とんぼが飛び交う初秋の田園風景を楽しみながら、のんびりと劇場の余韻に浸っている。…(中略)…現地では携帯電話のストラップやハンカチ、マグカップなどの関連グッズを販売している他、週末には地元の青年団やPTAのメンバーらがうどんのバザーを出店。…(中略)…会場には8月26日の一般開放から1日平均約1500人が詰めかけている。…(以下略)
「松井製麺所」のロケセットは、本広監督お気に入りの県内の製麺所型うどん店をいくつか取り合わせたような見事なセットで、年内公開の予定が「帰省客にも見てもらおう」ということで翌年1月8日まで延長公開されました。その後、取り壊されることになったのですが、「あのまま誰かが買い取ってうどん店を始めたらいいのに」という声も。いいうどんを出せば絶対人気店になったと思いますが、残念ながらそうはいかなかったようです。
写真展やマップ作成等で映画『UDON』をサポート
県の映画サポートは、写真展やマップ作成からライトアップまで、「なんでもやります体制」です(笑)。
明日の封切り待ちきれない 琴電瓦町駅で映画『UDON』写真展スタート
映画の舞台裏を楽しんで。讃岐うどんをテーマにした映画『UDON』の公開を前に、県内での撮影風景や映画のシーンを捉えた「ロケ写真展」が24日、琴電瓦町駅コンコースで始まった。「わがかがわ観光推進協議会」と県観光協会が開催。写真パネル16枚や映画のPRポスターを展示している。…(以下略)
映画『UDON』今日公開 ロケ地マップ作製 県観光協会、28日から無料配布
映画『UDON』が26日に全国公開されるのに合わせ、県観光協会(香川フィルムコミッション)は、映画のロケ地を紹介したガイドマップを作製、28日から順次、各地で無料配布を始める。マップでは映画の舞台となる「松井製麺所」のオープンセットをはじめ、瀬戸大橋記念公園や栗林公園、満濃池など主なロケ地8カ所を映画のシーンの写真付きで紹介。この他、ロケが行われたうどん店42カ所を掲載。合わせてロケ地周辺や他の観光スポットも紹介している。A3判カラー4つ折で5万部作製。…(以下略)
夜空に『UDON』
高松に『UDON』出現。高松市番町四丁目の県庁舎本館が6日、ライトアップされ、側面に巨大な『UDON』の文字がお目見えした。公開中の映画『UDON』のヒット祈願とPRを目的に県観光協会が企画。本館北面と南面の5~20階の窓を利用し、蛍光灯やブラインドで「U」「D」「O」「N」の文字を浮かび上がらせた。ライトアップは日没から午後9時まで。…(以下略)
ブームに乗って「うどんグッズ」も次々登場
「讃岐うどん巡りブーム」が第一次のピークを迎えた2000年頃から、讃岐うどんの新しいお土産商品や関連グッズがずいぶん増えてきましたが、映画『UDON』の公開を機に、新たにTシャツとバッグとネクタイが登場しました。
「ブーム持続を」うどんTシャツ、県内の経営者ら販売
映画『UDON』の制作などまだまだブームの続く讃岐うどんをさらにPRしようと、県内の若手経営者らが「うどんTシャツ」を発案、販売を始めた。…(中略)…デザインは「ざる大」「I♡釜玉」「讃岐饂飩人」の3種類。別に子供用の「ざる小」もあり、それぞれの文字を毛筆調で大きく書いた。…(以下略)
映画『UDON』バッグ進呈 土産うどん購入者対象 県が今日から
26日に映画『UDON』が全国公開されるのを前に、県は12日から県内のうどん店などで土産用うどんの購入者を対象に、映画のポスターを描いたバッグをプレゼントする。バッグを取り扱うのは映画に登場する有名うどん店など45カ所をはじめ、製粉・製麺業者、キヨスク、県農協の産直施設など県内約110カ所。東京のアンテナショップ「せとうち旬彩館」でも扱う。バッグは縦46センチ、横36センチのビニール製。出演者のユースケ・サンタマリアさんや小西真奈美さんらをイラストで描いたポスターの他、香川県の文字をあしらっている。枚数は7万8000枚。…(以下略)
うどん柄のネクタイ誕生 ブームの継続願い、県が明日から販売
ネクタイもうどんも長~く愛して。映画『UDON』のヒットで讃岐うどんブームが再燃する中、県はうどんをデザインしたネクタイを製作した。ネクタイは麺が丼から丼につながる図柄で、「よく見るとうどんとわかる」のがポイント。デザインは県地域振興アドバイザーの竹内守善さん(59)が担当。製造、販売まですべて県関係者が手掛けた。…(以下略)
「うどんTシャツ」と「うどんネクタイ」は筆者も手にしましたが、着用するにはちょっと勇気が必要で…(笑)。
「うどんタクシー」の屋根の「うどん鉢」が映画から誕生
今度は「うどんタクシー」が映画『UDON』にあやかって、タクシーの屋根にうどんのオブジェ(あんどん)を載せました。
うどん鉢屋根に中西讃を“快走” 琴平のタクシー会社
うどん鉢を乗せたタクシーが快走。讃岐うどんをテーマにした映画『UDON』の公開に合わせ、撮影に協力した琴平町内のタクシー会社が、映画そのままの「うどん鉢あんどん」を車両の屋根に設置した。中西讃を中心とした県内を走り回るユニークなタクシーが、うどん店巡りを目的とした観光客らの注目を集めている。
2003年8月から、讃岐うどんの名店や穴場を案内する「うどんタクシー」を運行しているが、映画で使用された「うどん」の文字が立っている天ぷらうどん鉢を新たにあんどんに採用した。同社は、映画中に登場する「うどんタクシー」のドライバーで主人公の後輩「水原」の名札が入った制服や帽子も用意。記念写真を撮ろうと観光客やタクシー利用者の人気を呼んでいる。…(以下略)
「うどんタクシー」は今でこそ「屋根にうどんが載ったタクシー」としてすっかりおなじみですが、あのオブジェはこの年に映画『UDON』で使われたものを元にして付けられたもので、平成15年に「うどんタクシー」が登場した時にはまだありませんでした(開業記事は「平成15年」参照)。あのビジュアルはインパクト抜群ですが、「乗るのが恥ずかしい」という声もチラホラ(笑)。
8月10日、試写会開催
そして公開を約2週間後に控えた8月10日、宇多津町の「ワーナー・マイカル・シネマズ宇多津」に本広監督と小西真奈美さんを迎えて、舞台挨拶と試写会が開かれました。
映画『UDON』26日公開 ヒットへ思い熱く 監督と主演女優試写会あいさつ
(前略)…「香川の県民食・さぬきうどんを巡る人間模様を描いた映画『UDON』の本広克行監督と主演女優の小西真奈美さんが10日夜、宇多津町のワーナー・マイカル・シネマズ宇多津で開かれた試写会の舞台あいさつで、「食」をテーマにした意欲作品のヒットを願って熱い思いを語り、撮影に全面協力した県民にお礼を述べた。
…(中略)…封切りを前に開かれた試写会舞台あいさつで本広監督は「全国を回っているが、さぬきうどんはどこでも有名。この映画でビッグな波が再びやって来る気がします」と力強く語ったあと、「3年半前のうどんブームの時、映画に撮れば面白いと思いついた。見る人によって印象は違うだろうが、ラブストーリーでもあり、サクセスストーリーです。本物のうどん店も数多く出演、おじさん、おばさんに演技してもらっているのでドキュメンタリーでもあります。世界中の人に見てもらいたいが、まずは皆さんの応援をお願いしたい」と古里香川への思いを述べ、協力に感謝した。
ヒロイン役の小西さんは「香川ロケの1ヶ月半の間に、撮影だけで30~50玉、それ以外でもうどん漬けの毎日。幸せでした」と述懐。「うどん屋さんを取材して回る役柄でしたが、実在のうどん店のご主人やおばあちゃんから『お客さんが喜んでくれたらそれでいい』という言葉を何度も聞いたのが印象的だった。職人さんたちがすごく輝いて見えて、素敵でした」と讃岐うどんにエールを送ってくれた。この試写会に先立ち、県民を代表して川北文雄副知事が「ほぼ全編県内ロケのこの映画を通じ、香川の魅力を全国に知っていただき、地域活性化につなげたい。大ヒットを願っています」とあいさつ。本広監督や撮影に協力した県民らの労をねぎらった。…(中略)…
『UDON』の撮影では、丸亀市内に大型セットを建設し、3月下旬にクランクイン。延べ4000人のエキストラが出演するなど、撮影には県民挙げて協力した。県民の皆さんが、日ごろ舌鼓を打っている実物の有名店が続々と画面に登場する。店主や名物おばちゃんも出演して、うどん打ちの秘伝を披露。地元のうどん好きのお客さんも数多く顔を出している。これらが「ダシ」となって不思議な迫真性を醸し出し、さながら”県民の映画”。鑑賞した客が「うどんが食べたい」と思うような娯楽作品に仕上がっている。主演のユースケ・サンタマリアさんと小西さん、脇を固める鈴木京香さん、県出身の要潤さんらの好感度俳優が好演しているが、香川出身のタレントやアナウンサーらが数多く特別出演しているのも見どころ。地元出身タレントらの名前は「封切りまでは「ヒ・ミ・ツ!」扱いだが、随所で画面に登場して讃岐弁を連発、大いに楽しませてくれる。…(以下略)
この後、公開日までに四国新聞紙上に映画に関するコラムや本広監督をはじめ映画出演者等のインタビュー記事が何度も掲載されていましたので、ポイントだけを抜粋しておきます。まず、映画『UDON』と筆者が率いていた「麺通団」の関係に触れた記事が2本出てきました。
コラム「一日一言」
(前略)…県内で大々的なロケを行ったことに加え、監督は丸亀出身の本広克行さん。テーマが愛しのうどんとくれば、関心を示さない人はいないと言っても過言ではない。そんな映画の公開が近づいた。内容の9割は実話だ。うどんブームの火付け役になった田尾和俊さん率いる「麺通団」をモチーフに、本広監督が遊び心をちりばめた。…(以下略)
インタビュー/本広克行監督 「香川が楽しい場所だとPRできればうれしい」
ーーうどんを見事に娯楽大作に仕上げた。
「大作にするつもりはなかった。ロケもニューヨークと香川、それも中讃地区と範囲は狭い。(出身地の)丸亀市を中心に撮影したが、風景がよく、やりやすかった。見た人は『いいところだ』とか『行ってみたい』と言ってくれる。これを機会に香川が楽しい場所だとPRできればうれしい」
ーーエピソードもふんだんに盛り込まれていた。
「90%が実話。映画を作るにあたり、まず研究者を訪ね、うどんの協会を訪ね、最後に行き着いたのが田尾和俊さんだった。田尾さんの話はどれもネタかと思うくらいおもしろく、まとめてオムニバスにしようかと思ったくらい」…(以下略)
当欄でも平成に入って何度も出てきましたが、1989年に筆者と「麺通団」が“怪しい製麺所型うどん店”を発見してからタウン誌で「ゲリラうどん通ごっこ」の連載を始め、それがきっかけとなって全国的な「讃岐うどん巡りブーム」が起こった2000年頃までの10数年の経緯が、映画『UDON』の基本的なモチーフになっています。本広監督は「ストーリーやエピソードの9割が実話」と持ち上げてくれましたが、筆者の印象では、まあ7割ぐらいが実話に近いかと。ちなみに、映画の冒頭でユースケ・サンタマリアさん演じる「香助」はスタンドアップコメディアンを目指してニューヨークに行って夢破れて帰ってきますが、筆者はそんなことはやっていません(笑)。
続いて、県の「フィルム・コミッション」事業に触れた記事も2本。
コラム「一日一言」
公開中の映画『UDON』は、これでもかというくらい讃岐うどんと香川が取り上げられ、まるで香川県のプロモーション映画のようでもある。この映画の実現に一役買ったのが、映画などの撮影を誘致する「フィルム・コミッション事業」だ。2001年の発足以来、『世界の中心で愛をさけぶ』『機関車先生』『県庁の星』などで成果を上げてきた。…(以下略)
インタビュー/川北文雄副知事
(前略)…
ーー県は今回、思い切った映画宣伝を実施したが。
川北 監督は丸亀出身の本広克行氏で、ほとんど全てが県内ロケ。しかもテーマは香川の誇る讃岐うどん。地名も店名も実名で登場しており、まさに香川そのものを描いた映画だ。これがヒットすれば、必ず香川の知名度アップと誘客につながる。この機会を逃すことなく、県を挙げて積極的に情報発信してきた。…(中略)…
ーー2001年から映画ロケ誘致の「フィルム・コミッション」に注力してきた。その結果、数々のヒット映画が撮影された。
川北 東京出張時に時間を見つけては、監督や映画会社を訪ね、売り込んできた。香川にはまだ撮影して欲しい場所がある。香川が舞台の小説やゆかりの人など、取り上げて欲しいテーマもたくさんある。地道な活動は必ず実を結ぶ。香川が映画の聖地となるようPRしていきたい。また「007」映画の誘致という夢も実現したい。…(以下略)
補足すると、『世界の中心で愛をさけぶ』は2004年公開で、長澤まさみ、柴咲コウ、大沢たかお、森山未來等が出演。県内ロケ地は、庵治町や高松空港、丸亀市の本島、香川中央高、津田高など。『機関車先生』も2004年公開で、坂口憲二、堺正章、倍賞美津子、大塚寧々等が出演。県内ロケ地は詫間町の志々島や粟島、丸亀市の本島、多度津町の高見島と佐柳島、観音寺一高など。『県庁の星』は『UDON』に先駆けて2006年2月に公開され、織田裕二、柴咲コウ等が出演。県内ロケ地は香川県庁、高松天満屋など。こう並べてみると、結構一気に“固め打ち”的に、ロケ地誘致が実現していることがわかります。
ちなみに、「007映画の誘致という夢も実現したい」というのは、当時ちょっと盛り上がっていた「直島へ『007』のロケを誘致しよう」という運動のこと。『赤い刺青の男』というタイトルの「007」シリーズ最後の小説の中で「G8サミット会場」として香川県の直島が実名で出てきたため、2004年に県や映画愛好家の間で「007ロケ地誘致運動」が始りました。その後、「香川のボンドガールコンテスト」や「香川のジェームズ・ボンド選出」なんかが行われ、直島に「007『赤い刺青の男』記念館」までできましたが、残念ながらロケ誘致以前に、映画化が実現しませんでした。
というわけで、8月のローカルメディアは映画『UDON』への期待を募らせるニュースであふれ、そして8月26日、いよいよ映画が全国公開されました。
香川舞台の話題作、全国公開 『UDON』出足好調、初日から大勢の来場者
県内をロケ地に、丸亀出身の本広克行監督がメガホンをとった映画『UDON』が26日、全国東宝系で封切られた。県内ではワーナー・マイカル・シネマズ高松と同宇多津で上映がスタート。讃岐人の「ソウルフード」をモチーフにした話題作に、初日から大勢の来場者が詰めかけた。…(中略)…ワーナー・マイカル・シネマズ高松では、開館と同時に大勢が詰めかけ、初回の上映は約430席がほぼ満員。同館では「大ヒットした『世界の中心で愛をさけぶ』や『踊る捜査線THE MOVIE』より好調な出足」としている。…(以下略)
続いて公開の1週間後に出た、東京のうどん店やショップの様子をレポートした記事。
讃岐うどんブーム再来 首都圏の店舗、映画効果で売上急増
讃岐うどんをテーマにした映画『UDON』の公開から1週間が過ぎた。公開に合わせてテレビの特集番組や予告が放映されたこともあり、首都圏で讃岐うどんの人気が再び高まっている。うどん店は軒並み売上を伸ばし、県のアンテナショップの物販コーナーでも、うどん製品が昨年同期の約3倍の売上を記録する人気ぶりだ。
香川・愛媛両県が新橋駅前で運営する「せとうち旬彩館」。2階のレストラン「かおりひめ」が公開当日の人気テレビ番組で紹介され、直後から大勢の人が詰めかけた。昼時には入店待ちの列が店外まで続く。この1週間の「かおりひめ」の来店者数は前年比6割増、売上は同4割増。…(中略)…映画のモデルとなった四国学院大学・田尾和俊教授がプロデュースした「東京麺通団」(新宿区)も好調。「公開前から増え始め、今は通常の1.5~2倍くらい。映画の上映時間が終わった頃にドッと来る」という。
前回の全国的な讃岐うどんブームの火付け役となった「はなまる」の広報担当者は、「映画の予告が流れ始めた頃から売上も伸びている。パンフレットなどを持った映画帰りと見られるお客さんも少なくない」と映画効果を指摘する。「めりけんや」と提携し首都圏で讃岐うどん店を展開する「日本レストランエンタプライズ」も「昨年より1~2割は伸びた」という。今回の讃岐うどんブームはどこまで続くのか。テレビなどへの露出が減れば売上は落ち着く場合が多いが、アンテナショップ担当者は「今回は勢いがすごい。讃岐うどん人気が、より一層高いレベルで定着してくれれば」と期待を寄せている。
このあたりで映画『UDON』関連の新聞記事は一旦途切れ、年末に「一日一言」が一連の“フィーバー”を簡単にまとめていました。
コラム「一日一言」
(前略)…嘘のような逸話の数々は、丸亀出身の本広克行監督の手で映画になった。ご存じ『UDON』。県内で8万3000人が鑑賞し、ここ10年の邦画で3番目の「大ヒット」となった。いくら音頭をとった県の幹部たちが1人で5回も6回も見たとはいえ、それだけでは達成不可能。本紙十大ニュースでは2位だったが、話題性では今年最大の出来事と言ってもいいほどだった。ブーム再燃だと関係者は大喜び。
しかし普通、県内でこれだけ観客が入れば全国的にも大ヒットしそうなものだが、県外の評判は今一つだった。やはり香川が舞台の『セカチュー』の動員を上回ったのも、最初だけだった。本広監督や県民のうどんを愛する気持ちはホラ話ではなかったが、こうした県外の冷めた反応もまた事実だ。讃岐の良さやうどんのすばらしさを本当に伝えられたのか、自己満足に終わっていないか。真実をみつめる目は曇らせてはいけない。…(以下略)
映画『UDON』は「ここ10年の邦画で3番目の大ヒット」と書かれていますが、これはおそらく「香川県内だけで言えばで3番目」ということだと思います。映画の興行収入データによると『UDON』の興行収入は13.6億円で、「2006年に公開された邦画の中で39位」だそうです。しかしとにかく香川では、うどん屋やその店の大将、女将さん、スタッフから客まで、知ってる店や人がいっぱい出てるということで見に行った人が相当いたことは間違いありません。
ちなみに、一日一言士によると「県外の評判は今ひとつだった」とのことですが、映画を機に香川を訪れる讃岐うどん巡り客が急増したことは事実なので、少なくとも「讃岐うどんのプロモーション映画」という観点からは、大成功の映画でした。
讃岐うどん、出雲そば、三輪そうめんの「三麺交流」が開かれる
ではここから、映画以外のイベント関連の記事を見ていきましょう。まず、1月に琴平観光協会主催の「こんぴら温泉まつり」が開かれ、そこで「讃岐うどん」と「出雲そば」と「三輪そうめん」が一堂に会した「三麺交流」なるイベントが開催されました。
麺どころ食べ比べ 讃岐、出雲、三輪、琴平で3産地交流
全国のうどん、そば、そうめんの麺どころが一堂に会する「三麺交流」が8日、琴平町の「金陵の郷」で開かれた。会場ではそれぞれの本場の味が振る舞われ、来場者は各地の名産を堪能した。交流は、7日に町内で開幕したこんぴら温泉まつり(琴平町観光協会主催)の一環行事として初めて開催。讃岐うどんの他、同町と友好都市提携を結んでいる島根県出雲市の出雲そばと奈良県桜井市の三輪そうめんの3種類が集結した。実演販売が行われた「麺屋台」では、味わいやコシ、のどごしなどの違いを食べ比べようと、訪れた家族連れらが3種類の麺を買い求め、「おらが名物」の味に舌鼓を打っていた。…(以下略)
麺類の「日本三大」と言われているラインナップは、
「日本三大うどん」……讃岐うどん(香川)、稲庭うどん(秋田)、水沢うどん(群馬)
「日本三大そば」………戸隠そば(長野)、出雲そば(島根)、わんこそば(岩手)
「日本三大そうめん」…小豆島そうめん(香川)、三輪そうめん(奈良)、揖保乃糸(兵庫)
ですが、そうめんは「小豆島そうめん」ではなく「三輪そうめん」が選ばれて、「小豆島そうめん」はちょっとがっかりです(笑)。それにしても、麺類の「日本三大」に香川が2つも入っているとは驚き。「王国宣言」して何かできませんかね。
総本山善通寺で「うどん法要」を開催
総本山善通寺が「創建1200年祭」の中で「うどん法要」を実施しました。「うどん法要」の発案は、県観光協会です。
お大師さんに感謝込め 初の「うどん法要」
総本山善通寺で10日、讃岐うどんと弘法大師に感謝する「うどん法要」が行われた。うどんは平安時代、大師が唐から持ち帰ったとの説があり、県観光協会(梅原利之会長)が法要を発案、同寺の創建1200年祭に合わせて初めて開かれた。法要は同寺の護摩堂前で行われ、関係者15人が参列。大師に打ちたてのうどんを献上する「献麺式」に続いて「お焚き上げ」に移った。読経の中、善通寺市内外の製麺業者が古くなった蒸籠や割り箸を代わる代わる炎の中に入れ、郷土が誇る食文化に感謝するとともに、今後の一層の発展を願った。法要に先立って市民が僧侶にうどんを接待。法要後には婦人会の会員ら約320人が「讃岐うどん音頭」を披露した他、地元の郷土料理同好会などが観光客らに2000玉のうどんを振る舞った。
「うどん法要」の主要行事は「献麺式」と古くなった蒸籠や割り箸の「お焚き上げ」ですが、併せて婦人会の会員たち320人による「讃岐うどん音頭」も披露されました。この手の「音頭」はなかなかヒットはしませんが、しかるべきところではまだまだ生きているようです。
県観光協会が、“うどんのルーツを訪ねる使節団”を中国に派遣
続いて県観光協会の活動がもう一つ。「うどんのルーツを探し求める」というテーマで、中国に使節団が派遣されました。
新たなPR策求め 『UDON』のルーツ訪ねる 県観光協会、あかすら中国へ視察団
県観光協会は5日から6日間の日程で、うどんのルーツを訪ねる視察団を中国に派遣する。弘法大師空海が郷土に持ち帰ったとされるうどんの源流を探し求めてシルクロードなどを視察。うどんブーム再来の兆しが見える中、讃岐うどんを国内外に売り込む「次の一手」を探る。…(中略)…視察団は、梅原会長を団長とする官民の観光関係者ら11人。空海が密教を学んだ西安市の青龍寺を訪ねて讃岐うどんを奉納する他、シルクロードの要衝として発展し、小麦生産が盛んな新疆ウイグル自治区を訪問。現地のさまざまな麺を味わうなど、麺を通じた交流を深める。…(以下略)
うどん源流は絹の道? 県観光協会訪中視察団が報告会
弘法大師空海が持ち帰ったとされるうどんのルーツを探るため、県観光協会が中国に派遣した視察団の帰国報告会「シルクロードは麺ロード」が4日、県庁ホールであった。講演やパネル討論でシルクロードと日本の小麦の関係などが説明され、出席した約220人は古代のロマンに夢を馳せた。…(中略)…
講演では、総合地球環境学研究所の佐藤洋一郎教授が、新疆ウイグル自治区にある約3000年前の遺跡で発見された小麦をDNA分析した結果、「讃岐うどんに使う小麦と同じ種類だった」と指摘。「讃岐のうどん文化の成立は、遡ると3000年前のシルクロードに行き着きそうだ」と話した。パネル討論では視察団7人が登壇。同自治区で味わった麺類「ラグマン」を紹介し、「麺の感触がうどんに似ている」「現地で食べた麺類の中で一番印象的だった」などと感想を述べた。…(以下略)
「シルクロードは麺ロード」の大きな根拠として「新疆ウイグル自治区にある約3000年前の遺跡で発見された小麦のDNAが讃岐うどんに使う小麦と同じ種類だった」ということが挙げられていますが、それは「麺」の話ではないので、「シルクロードは麺ロード」というより「シルクロードは小麦ロード」ということですね。また、ここに書かれている「讃岐うどんに使う小麦」というのがオーストラリア産小麦を指しているのか、あるいはカナダ産なのかアメリカ産なのか、あるいは国産小麦なのか県産小麦なのかがわからないので、そのあたりのつながりも少々曖昧。あと、「新疆ウイグル自治区のラグマンという麺の感触がうどんに似ている」という感想も、讃岐うどんと結びつける根拠としてはちょっと弱い感じもしますが、そのあたりも全部ひっくるめて、「古代のロマン」ということで(笑)。
『超麺通団3/さぬきうどんのめぐり方』が発刊
映画のネタ元、再び巡礼指南 軽妙な讃岐弁の掛け合い、抱腹絶倒の一冊『超麺通団3/さぬきうどんのめぐり方』出版
映画『UDON』のおかげで讃岐うどんブームが再燃の兆しを見せている中、ネタ元・麺通団が巡礼指南書『超麺通団3/さぬきうどんのめぐり方』(西日本出版社)を出版した。著者はご存じ団長・田尾和俊。再び出かけたうどん屋を巡る冒険道中、団員との軽妙な讃岐弁の掛け合いに抱腹絶倒の一冊だ。今回のメーン特集は麺通団が選定する「中讃黄金モデルコース」。人気店ひしめく中讃で、ここだけは行っておきたいという10店舗を厳選。土日曜で回りきるための順番とタイムスケジュールを提案している。
麺通団だけに、ただのうどん屋情報にとどまらない。腹ごなしに最適のレジャースポットからエンディングを締める夕焼けスポットまで、懇切丁寧に紹介。ブームの産物「うどん巡礼」をレジャー感覚で楽しめる。なぜか甘味屋が含まれているのも麺通団ならでは。…(中略)…初心者にも玄人たちにも重宝されるガイドブックであり、コラム本。おもしろすぎてひっくり返る。
筆者のうどん情報発信は、「ゲリラうどん通ごっこ」~『恐るべきさぬきうどん』の「怪しくもおもしろいうどん店発掘」という局面から、「超麺通団シリーズ」で「うどん関連のエピソードトークと巡り方指南」という局面に移りました。前年(平成17年=2005)に始まった「食べログ」をはじめ、ネットの普及でうどん店のカタログ的な基本情報があふれ始めたこともあって、「ネットにない付加価値」を提供する情報発信にシフトチェンジしようという意図です。映画『UDON』のPR番組としてこの年にスタートしたFM香川の『麺通団のうどラヂ』も、同様のテイストで放送を開始しました。
「ひょうげうどん」が再び登場
前年の「ひょうげ祭り」に登場した「ひょうげうどん」が、この年も振る舞われました。
「ひょうげうどん」を接待
高松市香川町で恒例の「ひょうげ祭り」が催されました。毎年、当日に浅野地区の婦人会の人たちが「ひょうげうどん」を接待しています。香川町は旧村の浅野、川東、大野、安原、東谷の5地区が合併して生まれたことから、おめでたい黒豆を5粒並べ、天ぷら1枚とネギ、ゴマをふりかけ、「ひょうげうどん」と名付けてお祭りに参加したスタッフやお客様に接待していました。今年は高松市へ合併したことから、「マツ」の緑を表した緑のかまぼこが一切れ添えられました。…(以下略)
香川町が高松市と合併したということで、「ひょうげうどん」に「高松」の「松」をイメージした「緑のかまぼこ」を1枚添えるという、ささやかながらも微笑ましいアレンジです(笑)。でも「ひょうげうどん」は今、ネットで検索してもほとんど引っかかってこないので、ほとんど情報発信されていないのか、あるいは消滅してしまったのか。いずれにしろ、「讃岐うどんの地域バリエーション」のラインナップに記憶を残しておきたいメニューの一つです。
讃岐うどんの韓国進出の話題が3本
この年、讃岐うどんの韓国進出に関連する話題が3本載っていました。
讃岐うどん、韓国で行列 県内修業の店主、知事に好評ぶり報告
県内で修業後、母国の韓国でうどん店を営んでいるペク・チョルギュンさん(50)が26日、県庁に真鍋知事を訪ね、「子どもからお年寄りまで幅広い世代が来店してくれる。休日には行列ができるほど」と、現地での好評ぶりを報告した。ペクさんは高松市出身の妻と来県した際、うどんを食べて感動。会社を辞め、1999年に来日して牟礼町のうどん店で修業を開始。3年8ヵ月の訓練を経て、03年5月にソウル近郊のソムナム市で手打ちうどん店を開いた。…(以下略)
韓国のうどんブーム支援 大型製麺ライン納入 日産4万8000食、海外向け最大(坂出・大和製作所)
製麺機製造・販売の大和製作所(坂出市)は3月末、海外向けとしては同社最大となる大型の製麺ラインを、韓国で百貨店などを運営する新世界グループに納入する。韓国はうどんブームとなっており、旺盛な需要を取り込みたい新世界の狙いに応える。…(以下略)
韓国に乾麺輸出へ 石丸製麺 海外の販路拡大
製麺大手の石丸製麺(高松市)は12月末から韓国への輸出、販売に乗り出す。ソウル近郊のスーパーが乾麺の販売を開始するのを手始めに、出荷する商品や取扱店舗を増やし、販路を拡大する。…(中略)…韓国は日本食ブームで、うどんも消費量が増加。日本からうどん店が出店したり、製麺メーカーも輸出しており、需要は大きいと判断した。…(以下略)
3月の記事に「韓国はうどんブームとなっており…」とありますが、「韓国のうどんブーム」とやらがどういう状況なのかは書かれていません。また、「日本からうどん店が出店したり、製麺メーカーも輸出しており、需要は大きい…」というのも1月と3月の自社記事を回しているだけなので、単に「香川の企業が韓国に進出した」というだけの話かもしれない…というわけで、これらの記事から「当時、韓国でうどんブームが起こっていた」と断定するのは、ちょっと早計かもしれません。
不正表示問題を起こした「さぬきの夢2000を100%使用した半生うどん」が販売再開
平成16年に不正表示事件を起こした県農協の「さぬきの夢2000」を100%使用した半生うどん「大地」が、約2年の“謹慎期間”を経て、「JA半生うどん」と名前を変えて販売を再開しました。
県農協、「さぬきの夢2000」100%使用半生うどんの販売を再開 「不正表示」から2年ぶり
県農協は8日、原料の不正表示問題で中止していた「さぬきの夢2000」100%使用の半生讃岐うどんの販売を20日から約2年ぶりに再開すると発表した。…(中略)…原料は製粉会社の吉原食糧(坂出市)から仕入れ、県農協の子会社フジフーヅ(さぬき市)が委託を受けて製造する。…(中略)…商品名は「JA半生讃岐うどん」に一新する。不正表示の再発防止策として、製粉と製麺にそれぞれ県の農協の職員が立ち会う他、製粉後と製麺後に県産業技術センターに依頼して小麦粉のタンパク質の成分分析を実施。「さぬきの夢2000」の証明を得てから販売する。…(以下略)
事件を起こした時と今回の再開時の“プレイヤー”を整理すると、
●事件当時…(販売元)県農協 → (製粉会社)安田製粉 → (製麺会社)美麺本舗
●再開時……(販売元)県農協 → (製粉会社)吉原食糧 → (製麺会社)フジフーヅ
ということです。トラブルを経ていろんなものが少しずつ改善されていくのが、世の中の常です。
うどん関連広告は低調のまま
平成18年の新聞に載ったうどん関連広告は87本。映画『UDON』で湧いた讃岐うどん界にあって、相変わらず低調のままです。ネットをはじめとする宣伝広告手段の変化もあって、業界の活況と新聞広告が連動しない時代に入ってきているようです。
<県内うどん店>
【高松市】
「かな泉」(高松市大工町他)…………3本
「天霧」(高松市高松町)………………2本
「さぬき麺業」(高松市松並町)………2本
「ふる里」(高松市香南町)……………2本
「山田家」(高松市牟礼町)……………1本
「松下製麺所」(高松市中野町)………1本
「さぬきや」(高松市塩上町)…………1本
「うどんバカ一代」(高松市多賀町)…1本
「麺むすび」(高松市多肥下町)………1本
「千ちゃん」(高松市寺井町)…………1本
「やすべえ」(高松市東山崎町)………1本
「愉楽家」(高松市林町)………………1本
「たも屋」(高松市林町)………………1本 8月6日林店オープン
「「うどん田中」(高松市林町)………1本
「麦○」(高松市円座町)………………1本
「竜雲うどん」(高松市仏生山町)……1本
「もり家」(高松市香川町)……………1本
「てら屋」(高松市檀紙町)……………1本
「北山うどん」(高松市鬼無町)………1本
「ヨコクラうどん」(高松市鬼無町)…1本
「黒田屋」(高松市国分寺町)…………1本
【東讃】
「郷屋敷」(牟礼町)……………………15本
「こむぎ」(三木町)……………………2本
「入谷製麺」(さぬき市長尾)…………1本
「うどん太一」(さぬき市大川町)……1本
「八十八庵」(さぬき市多和)…………1本
「寒川」(三木町)………………………1本
【中讃】
「塩がま屋」(宇多津町)………………3本
「日の出製麺所」(坂出市富士見町)…2本
「いきいきうどん」(坂出市京町)……1本
「めりけんや」(宇多津町)……………1本
「丸幸」(丸亀市飯山町)………………1本
「まごころ」(丸亀市蓬莱町)…………1本
「一屋」(丸亀市三条町)………………1本
「山下うどん」(善通寺市与北町)……1本
「こんぴら街道」(琴平町)……………1本
「長田うどん」(まんのう町)…………1本
「まえば」(綾歌町)……………………1本
「綾川町うどん会館」(綾川町)………1本
「こだわり麺や」(綾川町)……………1本
「やまだうどん」(綾川町)……………1本
【西讃】
「かなくま餅」(観音寺市植田町)……3本
「いちばん」(三豊市高瀬町)…………2本
「うどん茶屋さいた」(三豊市財田町)1本
「将八」(観音寺市他)…………………1本
「ふくや」(観音寺市大野原町)………1本
【県外うどん店】
さぬきめん坊(京都市中京区)…………1本
<県内製麺会社>
「石丸製麺」(高松市香南町)…………1本
「藤井製麺」(三木町)…………………1本
「大庄屋」(琴平町)……………………2本
「合田平三商店」(観音寺市豊浜町)…1本
<県内製粉会社>
「吉原食糧」(坂出市林田町)…………1本
「木下製粉」(坂出市高屋町)…………1本
「ホーコク製粉」(観音寺市粟井町)…1本
<その他うどん業界>
「さぬきうどん協同組合」………………4本
「香川県製粉製麺協同組合」……………1本
「さぬきうどん技術研修センター」(三豊市高瀬町)…1本