さぬきうどんのメニュー、風習、出来事の謎を追う さぬきうどんの謎を追え

vol.73 新聞で見る讃岐うどん

新聞で見る平成の讃岐うどん<平成26年(2014)>

(取材・文: 記事発掘:萬谷純哉)

  • [nazo]
  • vol: 73
  • 2023.12.07

台湾、韓国、中国からのうどん客が増加。讃岐うどん界は県主導のイベント以外大きな動きなし。

 2010年代は、インターネットやSNSで讃岐うどん情報が盛んに飛び交い始めた時代。2005年に始まった「食べログ」はますます隆盛を極め、2010年代初頭に登場したインスタグラムやフェイスブックも一気に広がり、県内や全国の「讃岐うどん巡り客」の多くがネットやSNSの情報で動き始めた時代です。ただし、そのあたりの事情は新聞にはあまり取り上げられておらず、平成26年(2014)の新聞には、讃岐うどんに関するめぼしい話題はほとんど載っていませんでした。

 では、その数少ない讃岐うどん関連記事を。

「高松駅弁」が解散

 駅弁の製造販売に加えて高松駅で「連絡船うどん」も運営していた「高松駅弁」が、本体の駅弁事業の売上減による赤字が続いて解散することになりました。

(4月17日)

「高松駅弁」9月解散へ 競争激化、赤字続き

 JR四国は、グループ会社で、駅弁の製造販売などを行う「高松駅弁」(高松市)を9月末に解散する方針を固めた。鉄道利用者の減少や、コンビニエンスストアなどとの競争激化で、赤字傾向が続いていた。今後は弁当の製造を外部に委託、販売はグループ内で行う。

 「高松駅弁」は1943年設立。高松市内の本社工場で弁当を開発・製造し、特急車内などで販売。店舗運営も行い、高松駅構内で弁当販売の「高松駅弁」、うどん店の「連絡船うどん」「うどん処艶艶」、ゆめタウン高松内で土産物店を展開している。高速道路などとの競合などで鉄道の利用者が減少する一方、コンビニやパン店などの出店が相次ぎ、競争が激化。弁当の売り上げが伸び悩み、2013年3月期は売上高が5億6800万円、経常損益が5900万円の赤字。債務超過額は6800万円となっていた。

 JR四国は本年度中に債務などを清算し、特別損失を計上する方針。駅弁の製造は6月20日に終了するが、アンパンマン弁当など今後も需要が見込める商品もあるとして、外部に委託。車内販売はグループのステーションクリエイト東四国(高松市)が継承する。運営する店舗は全て5月11日に閉店する。このうち、うどん店2店はグループ会社のめりけんや(宇多津町)が引き継ぎ、再オープンの予定。…(以下略)

 前年に「讃岐うどん弁当」の発売を開始して新聞に載っていましたが(「平成25年」参照)、やはり商品開発1つぐらいでは駅弁事業全体の回復には至らなかったようです。でも、「連絡船うどん」は引き続き営業とのこと。

台湾、韓国からの“うどん客”が増加中

 「台湾や韓国、中国等からの観光客が増えてきて、うどん店も受け入れ態勢を整え始めた」という記事が載っていました。

(5月9日)

外国人もうどんブーム 本場の味求め観光客増 アジア中心に知名度上昇

 県内のうどん店を訪れる外国人観光客が増えている。特に多いのは、高松空港に直行便がある台湾や韓国からの観光客で、個人で有名店を巡ったり、うどんを打ったりと国内観光客と変わらない体験を満喫。店側も外国語を話せるスタッフを雇うなど受け入れ態勢を強化している。…(中略)…

 県内のうどん店によると、外国人観光客が増え始めたのは2年ほど前。「中国や韓国の観光客を見ない日はない」とは坂出市富士見町の「日の出製麺所」。うどん店ツアーを行っている琴参バス(丸亀市)では、多い時には外国人観光客の予約が月100人以上あるといい、担当者は「団体よりも個人の予約が多い。知識も豊富で、製麺所で難なく注文する人も少なくない」と話す。

 人気の背景には、讃岐うどんの知名度向上があるとみられる。海外ではアジア圏を中心にうどん店が次々にオープン。県内の店舗も各国に進出しており、県観光振興課は「香川県より讃岐うどんの方が知名度が高い」とする。高松空港発着の国際線が増えたことも来県者増を後押ししているようだ。外国人観光客の増加に合わせ、各店も対応を進めている。「わら家」(高松市屋島中町)では英語のメニュー表を用意。土庄町のセルフ店「来家」では中国人スタッフが注文の仕方を教えている。…(以下略)

 うどん店への外国人観光客が増え始めたのは2年ほど前(2012年頃)とのこと。その理由として、県内うどん店の海外進出や高松空港発着の国際線の増加が挙げられていますが、「情報を調べて来る個人客が多い」ともありますから、やはりインターネットやSNSの普及で人の動きに新しい局面が訪れているということでしょう。

「海賊うどん」と「オリーブ牛肉うどん」

 続いて、新メニュー情報が2つ。

(5月16日)

映画公開前に「海賊うどん」考案 県など 四国の海の幸たっぷり

 映画「瀬戸内海賊物語」の全国公開を前に、県などが四国各県の海の幸を具材に使った「海賊うどん」を考案。15日に東京都内で記者発表会を開き、浜田知事が「海賊が実際に食べた気がする食材。彼らの元気が詰まっている」と美味をPRした。海賊うどんは24日からの上映期間中、県内のうどん店で提供される。

 海賊うどんは県産のイイダコの煮物をはじめ、徳島の鳴門巻きや、「海賊」の焼印を入れた愛媛のジャコ天、高知のチャンバラ貝などを盛り付けたぶっかけうどん。県と四国4県観光協会連合が、県内のうどん店と共同で開発していた。…(中略)…県観光協会は「海賊うどん」の商標登録申請を予定している。

(11月5日)

オリーブ牛肉うどん 世界にアピール 「地場もん国民大賞」銀賞 来年のミラノ万博出品

 日本の食材や料理の多様性などを国内外にアピールする「地場もん国民大賞」(農林水産省主催)で、讃岐牛・オリーブ牛振興会が出品した「オリーブ牛肉うどん」が準優勝となる銀賞に輝いた。来年イタリアで開かれるミラノ万博で、日本を代表するメニューの一つとして紹介される。…(中略)…

 同大賞は昨年に続き2回目の開催。全国から880品の応募があり、オリーブ牛肉うどんは30品まで絞られる予選を経て、1日に東京で行われた最終審査に進んだ。審査前のウェブ投票は4位だったが、最終審査では試食の500食を一番に完売し、来場者投票では得票数がトップだったという。…(中略)…金賞は岡山県の「牡蠣のアヒージョ」だった。…(中略)…同振興会と県内のうどん店が提携して誕生した同うどんは、県産小麦「さぬきの夢」のもっちりした麺と、オリーブ牛の柔らかで甘みのある肉のコラボレーションが特長。現在、県内の16店が売り出している。

 いずれも県や県の関連団体が考案したうどんメニューで、映画の公開や「地場もん国民大賞」というイベントものに絡めて発表するという形。そしていずれも「うどんに県産品を乗せる」というというパターンです。振り返れば、「ぶっかけうどん」や「釜玉うどん」は登場以来すっかり讃岐うどんメニューの定番にまで広がりましたが、この手の地元産品とのコラボうどんメニューは、これまでほとんど大きな広がりを見せていないのが現実。一時的な話題性はあるのでしょうが、新しい定番メニューに育てるのなら、何か新しいプロモーションの切り口を探した方がいいかもしれません。

「全国年明けうどん大会」が始まる

 一方、全国的にジワッと広がりつつある「年明けうどん」が、全国のうどんを集めた「全国年明けうどん大会」というイベントを始めました。

(12月14日)

食べ比べを満喫 全国年明けうどん大会、今日まで

 日本各地のご当地うどんを集めた「全国年明けうどん大会2014inさぬき」が13日、高松市林町のサンメッセ香川で始まった。北海道から沖縄まで16道府県のうどんを提供するブースが並び、大勢の家族連れらが「自慢の一杯」の食べ比べを楽しんだ。14日まで。

 大会は年明けうどんの普及を目的に、県と「さぬきうまいもんプロジェクト実行委員会」が初開催した。年明けうどんは、年始にうどんを食べる習慣を全国に広めようと「さぬきうどん振興協議会」が2008年に提唱。白いうどんに赤い一品をあしらい、紅白の縁起物で年始を祝うこととしている。…(以下略)

 年末に開催された「年明けうどん大会」ですが(笑)、これも、県や県の関連団体や業界団体が組んだイベントです。「年明けうどん」は全国的に認知度が高まりましたが、いかんせん“年明け”の一時的なキャンペーンで、イベントはさらにその中の数日間だけなので、讃岐うどん全体の活性化効果としてはどうしても限定的になります。ま、讃岐うどん界のにぎわいコンテンツの1つということで。

うどん関連の新聞広告は33本のみ

 うどん関連の新聞広告は33本。1990年代初頭には年間370本を超えていましたが、90年代後半に入ると100本台に落ち、2000年代には100本を切って、この2年はとうとう20~30本台になってしまいました。うどん店の広告は完全にネットの時代、そしてSNSで情報発信する時代になりました。

<県内うどん店> 
【高松市】

「のぶや」(高松市香南町)……………5本
「さぬき麺業」(高松市松並町)………3本
「愉楽家」(高松市林町)………………2本
「うどん棒」(高松市亀井町)…………1本
「松下製麺所」(高松市中野町)………1本
「たも屋」(高松市朝日新町他)………1本
「てら屋」(高松市檀紙町)……………1本
「ヨコクラうどん」(高松市鬼無町)…1本

【東讃】

「八十八庵」(さぬき市多和)…………1本

【中讃】

「日の出製麺所」(坂出市富士見町)…2本
「塩がま屋」(宇多津町)………………1本
「小縣家」(まんのう町)………………1本

【西讃】

「フジうどん」(三豊市仁尾町)………1本

<県内製麺会社>

「石丸製麺」(高松市香南町)…………2本
「藤井製麺」(三木町)…………………2本
「こんぴらや」(まんのう町)…………2本
「木下製粉」(坂出市)…………………1本

<その他>

「うどん脳」………………………………3本
「さぬきうどん技術研修センター」……2本

(平成27年に続く)

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