さぬきうどんのメニュー、風習、出来事の謎を追う さぬきうどんの謎を追え

vol.6 新聞で見る讃岐うどん

新聞で見る讃岐うどん<昭和24年(1949)>

(取材・文:  記事発掘:萬谷純哉)

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  • vol: 6
  • 2018.10.04

主食のヤミ取引と取り締まりのイタチごっこの中、飲食店が増え始める

 戦後4年目の昭和24年になりました。戦後の食糧不足、物資不足の中で、主食(米、麦、乾麺等)を中心に統制経済が続いており、主食のヤミ取引も後を絶ちません。そんな中でも会社やお店はそれなりに営業し、庶民もそれなりに我慢したり浮かれたりしながら何とかやっている…という時代。うどん関連の記事は相変わらずほとんど出てきませんが、飲食関連ということで、まずはこんな記事から紹介しましょう。

昭和24年に香川県内で製粉業者が2000軒もあった!

(1月9日)

製粉業に多い天引横流し 悪の防止に許可制復活の声湧き上がる

 食糧取扱い業者の米麦、鮮魚等の横流しを未然に防止するため、香川地方経済調査庁では主食(西讃方面の農協、配給所、加工業者、輸送機関を対象)を昨年12月16日から、また同26日からは鮮魚を主とする生鮮食品の現地査定を行っていたが、1月7日、その中間結果を発表した。これによると、配給所、農業、倉庫、輸送業者間ではほとんど中間搾取行為は見られないが、主食、特に製粉横流れの本命と目されるのは加工業者で、査定対象となった10カ所の製粉業者のうち、1斗の小麦に対して規定量7升3合の粉を渡しているのは12軒で、他はいずれも7升位しか渡しておらず、3合ないし4合を天引きしているというのが実態。
 これは、11月末から自由業になったため、勢い業者の乱立(昨年10月末900軒が最近では2000軒)を来たし、行政官庁の監督が不行き届きになった反面、業者自体も同業者が増えたため、機械を動かすだけの手持ち麦が集まらず、自然農日村からヤミ麦を仕入れて都会に流すという脱法行為を生んだもので、この防止のためには「許可制」を復活、加工業者を粛正するより他なしとされている。一方、生鮮食品、中でも鮮魚はコスト高のため、従来のリンク制度を拡充しない限り、現在の取締り一本ヤリでは市場から魚が姿を消すのではないかとの見方が強い。。

 「食糧取扱業者の米麦、鮮魚等の横流し(正規ルート以外に転売)を調査したところ、小麦の製粉業者の不正が一番多かった」という記事ですが、その最大の原因が「製粉業者の乱立」だという。それも、昭和23年に香川県内に900軒あった製粉業者が、24年には2000軒(!)に増えたとのこと。まあ、個人レベルの小さいものがたくさんあったのでしょうが、それでも、讃岐うどんブームがピークに達した2000年代のうどん店の数が800~900軒だったことを思うと、とんでもない数の製粉業者があったようです。昭和22年~23年に製粉機メーカーの広告がずいぶんたくさん載っていましたが、おそらくこの年は売上が倍増したんじゃないかと思います。ちなみに、記事中の「製粉業者が小麦を持って来た人に規定量の粉を渡していない」という話は、「開業ヒストリー」の中にもチラッと出てきます。いろんな証言がだんだんつながってきました(笑)。

「ヤミ取引」に「ヤミ飲食店」も続々検挙

 さて、経済混乱期に付き物の「ヤミ取引」の話は相変わらず続いていますが、この年は1月から「ヤミ飲食店」の取り締まり記事がいくつも出てきましたので、列挙してみましょう。

(1月20日)

ヤミずし屋挙がる

 高松市警察署では18日、高松地裁の差押え捜索令状により、高松市片原町「○○○」こと○○○○氏(42)=すし賃加工兼飲食旅館業=宅を食糧管理法違反容疑で捜索、鮮魚10貫900匁、米1斗2升、中華そば78玉の他、卵、すし飯などを押収したが、同店は昨年12月以来、すし賃加工の名目のもとに使用人12名中2名を米、鮮魚等のヤミ買いに走らせて、ヤミずしを売っていたものである。

(1月30日)

うどんなど押収

 高松署経済防犯課では28日午後3時を期して旧正あてこみの市内料理飲食店の一斉取締りを実施、違反者100余名を検挙、うどん990玉、そば80玉、その他すし、もち、回転焼など多量を押収した。

(2月10日)

香西町署で主食類一斉取締り

 香川県香西町警察署では8日、管内の飲食店、菓子店、露店等の一斉取締りを行い、玉ウドン65個、生菓子1700個を押収。貧困者および幼稚園児童にそれぞれ配給した。

 何度も出てきますが、この時代は「米、麦、めん類などの指定主食およびそれを使った料理は指定された食堂以外では売ってはならない」という統制経済の時代でした。しかし、ニーズがあればそれを商売にするのは人の常。従って、当然違反する飲食店が出てきて、それが「ヤミ飲食店」として検挙されていたわけです。ちなみに、この頃はまだ「うどん専門店」はほとんどなかったと思われますが、記事からは、後の「うどん食堂」の定番と言われる「うどん、中華そば、寿司」の形が見えてきます。

(2月23日)

7日で135俵 国警香川 主食取締り成績

 超過供出を促進するため、国警香川本部では7日以来各自治体署と協力して主食取締りを行っているが、22日発表した13日までの第一次取締り成績では、わずか一週間で検挙人員女174名を含む441名、摘発した主食は135俵に達し、仕向け地は県外では阪神方面、徳島、岡山県、県内では高松、坂出、小豆、丸亀となっており、生産地では綾歌郡が最も多く、以下大川、三豊、仲多度郡の順となっている、検挙された者の業態別、摘発食糧量、仕向地などは次の通り。

▽業態別=消費者が236名で最も多く、ブローカー108名、生産者54名
▽摘発主食量=米4897キロ、小麦粉934キロ、カンメン343キロ、雑穀141キロ、イモ類287貫
▽仕向地(米、麦のみ)=阪神方面127件・1915キロ、大阪市55件・1305キロ、神戸市14件・145キロ、徳島県46件・720キロ、岡山県21件・310キロ、高松市52件・760キロ、坂出市14件・347キロ、小豆郡10件・151キロ、丸亀市7件・206キロ
▽生産地(米のみ)=綾歌郡1273キロ(うち多い村二村は坂本、岡田…以下同じ)、大川郡638キロ(鴨部、造田)、三豊郡384キロ(財田、麻)、仲多度郡311キロ(南、吉原)

 さらに主食取締りのニュースは続きますが、こちらの検挙は「1週間で441人が検挙された」という凄まじさ。生産地を見ると、綾歌郡の坂本、岡田地区で生産された米が一番多くヤミに流れていたようです。

(4月27日)

丸亀市の主食取締り

 丸亀市署の主食一斉取り締まりが25日行われ、16件の違反を摘発した。その主なるものはヤミパン、もち、うどん玉、芋あめなどの加工品を秘かに売買していたもの。

(5月6日)

禁制品ハンラン 高松の主食品に手入れ

 料飲再開の声につけ込む不正業者一掃のため、高松市署では国際新世界マーケットの手入れに引き続き、4日午後4時から3時間にわたって市内の主食類一斉取り締まりを行ったが、すでに警告を発してあるにもかかわらず禁制食料品がハンラン。合計104件にのぼる違反を摘発、うどん1500玉、パン411、すし192、菓子247、餅214個等を押収した。同署では今後も引続き取り締まりを行う方針であり、押収品は讃岐、斯道両学園養老院へ無償配給した。

 「取締りを事前警告してあったのに100件も摘発された」という話。これを見ると、この頃の飲食店は禁制品なしでは成り立たない状態だったのだと思われます。ではもう一発、昨年までの摘発記事のメインだった「ヤミ船」の大捕物があったようですので、迫真の記事をご覧ください。

(2月8日)

阪神向けヤミ主食にメス 眉山丸など急襲 香川各地で一斉取締り

 阪神方面への主食横流しを防止し超過供出完納をはかるため断固取締りを声明していた国警香川本部では、7日、高松海上保安部、大川郡津田、三本松、白鳥本町、引田町各自治体署と協力、関西汽船東讃航路眉山丸(344トン)を捜査、違反者33名、米麦など646キロ(約10俵)その他白下糖、カンメン、白米など多数を押収した。一方、高松、坂出市署、多度津町署でもそれぞれ阪神向け航路の取締りを行い、期せずして県下一円の経済取締り陣が布かれた。

 この日、国警本部防犯統計課では渡辺課長、井上次席ら全員が出動。高松海上保安部早瀬丸と陸路に分かれて眉山丸の香川県内寄港最終地の大川郡引田港に待機。同船が午後3時半に港内に入るとともに、伝馬船2隻と早瀬丸で取巻いた。伝馬船の近づくにつれ、取締りを感づいた船内では主食類を隠すため船員乗客が中甲板をあわてて駆け巡る。警官たちは乗組と同時に乗客を甲板に上げ、船室、船員室を調査したが、津田、白鳥など各寄港地での港湾取締りで悪質者は挙げられているので、隠匿品もほとんど見当らず、ただ船員室のオーバをかけてある下から丁度この下に入るよう長い袋に入れられてあった白米10キロ、あわてて船員用米びつの中へ移したと思われる袋が側に取り残されていた。

 また、引田港からの「卵」と書いた木箱58個の中に白米5個を発見し、押収。違反者7名は直ちにハシケで引田町署で取調べ、米麦46キロを押収。なお証明書携行者のうち約60%の30名余りが大川郡相生村発行であったことが注目された。なお、他港での取締り成績は、津田港=違反者14名、押収米麦360キロ。三本松=8名、45キロ。その他、白下、カンメン、米麦など多数。白鳥本町=4名、45キロ。

高松では4船捜査

 高松市署では7日夜8時から約4時間にわたって、宇高連絡船上り最終便紫雲丸をはじめ、同夜高松に入港した讃岐阪神通い日本近海汽船所属貨客船八千代丸(270トン)、尼崎汽船所属同日海丸(301トン)、関西汽船所属客船須磨丸(1240トン)の4船を次々に捜索した結果、現場に出張した食糧公団職員が買上げた米だけでも約2石2斗に達し、捜査隊員が船倉および船内をしらみつぶしに調べ上げて大小荷物59個、便所船室などから現れた置去り品77個を発見。合計米約8石、メリケン粉約100貫などのヤミ主食トラック2台分を押収するとともに、八千代丸船室に大量の主食を隠していた同船一等機関士○○○○(33)=小豆島苗羽村、同一等航海士○○○○(26)=木田郡庵治村=を逮捕。高松市署へ留置した。このため、紫雲丸を除き他の3船は予定より半時間ないし1時間遅れて出航した。

坂出港で日海丸を襲う

 7日午後6時ごろ、坂出署では坂出港の主食一斉取締りを行ったが、尼崎汽船日海丸からみかん箱40個に詰めた白米を検挙した。みかんで周囲をカムフラージュして中へ白米を1個に約2斗ずつが入っており、中にはみかんばかりの箱も数個混っているが、白米だけでも16俵分にのぼる見込み。

違反食糧摘発へ乗出す香川経済調査庁

 香川地方経済調査庁では、昨年末から主食横流し違反防止のため精米製粉などの加工業者を調査中のところ、相当量の主食類がこれら加工工場からブローカーを経てヤミのパン、ウドン、菓子などになっていることが判ったので、このほど地検、国警、県下3市自治署と協定。取締りの具体策を決定したので、近く、主食加工品などの販売業者、製造業者、喫茶店など全般に対し、違反物資の摘発に乗り出すことになった。なお、従来黙認の形となっていた菓子類も、主食利用品または統制類以上の物については厳重処罰の方針がとられるはず。

 昭和22年以降、「ヤミ船摘発」のニュースが毎年新聞紙上を賑わしているので、摘発された船を年ごとに列挙してみました。すると…
(昭和22年)八千代丸、ときわ丸、女王丸、福宮丸、あおい丸、甲山丸、
(昭和23年)八千代丸、ときわ丸、日海丸、弘仁丸、葵丸、金毘羅丸、久吉丸
(昭和24年)八千代丸、日海丸(2回)、眉山丸、紫雲丸、須磨丸
ということで、チャンピオン(?)は3年連続3回挙げられた「八千代丸」。次いで、2年連続3回捕まった「日海丸」と、2年連続2回の「ときわ丸」でございます。おそらくこれ以外にもヤミ船はたくさんいたはずですが、八千代丸が当局から目を付けられていることは明白です(笑)。ちなみに、昭和24年に検挙された「紫雲丸」は、昭和22年に就航し、25年~27年にかけて4度の事故を起こし、30年には5度目の事故を起こして沈没し、修学旅行帰りの児童100人を含む168名の死者を出した、あの紫雲丸です。船に罪はないけど、紫雲丸って、船を操る人の方にずーっと問題を抱えてたように見えますね。

「外食券食堂」以外の飲食店が営業を再開

 さて、かくの如き主食のヤミ商売が横行する中、これを何とかしようと、5月7日に「飲食営業臨時規整法」が公布されることになりました。その背景を簡単に説明すると、
(1)昭和16年4月…戦時体制(日米開戦は同年12月)を迎えた食糧統制の一環として米が配給制度になり、併せて「外食券」なるものが発行されて、米、麦、麺類等の「指定主食」の外食は外食券を持って外食券食堂(外食券の使える食堂)に行かないとできなくなった。
(2)昭和22年7月…敗戦後の厳しい食糧難の下、飲食営業緊急措置令が出て、外食券食堂以外の飲食店の営業が禁止になった。
 という前段があって、それがこの度の「飲食営業臨時規整法」によってようやく外食券食堂以外の飲食店も営業を再開できるようになったというわけです。

 これがなぜ「ヤミ防止」につながるのかというと、「厳しく規制し過ぎれば、ヤミ取引が発生する。それなら、許可制にして統制管理しながら、ちょっと間口を拡げてガス抜きしよう」という理屈なのですが、いずれにしろ、おそらくこれはこの年の飲食業界における最大のトピックス。その法律の内容から当時の飲食業界の様子も窺えますので、条文を抜粋して状況を確認してみましょう。

【飲食営業臨時規整法】

(第一条)この法律は、主要食糧等のやみ取引を防止し、その有効な活用を促進するため、飲食営業の合理的な規整を行うことを目的とする。
(第三条)飲食営業を営もうとする者は、次に掲げる営業の種類ごとに、主務大臣の定める手続きにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。
一 外食券食堂…………外食券と引き換えに、食事を提供する営業。
二 めん類外食券食堂…外食券と引き換えに、うどん、そば、冷や麦、中華そば、その他の麺類を提供する営業。
三 旅館…………………宿泊料を取って客を宿泊させ、外食券と引き換えに宿泊に伴う食事を提供する営業。
四 軽飲食店……………食糧管理法による指定主食(米、麦、麺類等)以外の料理、または酒類その他の飲物を提供する料亭、待合、カフェー、キャバレーその他の営業。
五 喫茶店………………酒類以外の飲物、果物、または指定主食を原材料としない菓子類を提供する営業。
(第五条)飲食営業を営む者は、消費者の委託を受けてその持参する飲食物の調理加工をしてはならない。
(第六条)旅館、外食券食堂、めん類外食券食堂を営む者がその営業上提供する場合を除き、飲食営業を営む者は指定主食を提供してはならない。
(第七条)旅館、外食券食堂、めん類外食券食堂は、外食券と引き換えでなければ食事を提供してはならない。
(第八条)軽飲食店を営む者は、主務大臣の定める副食権と引き換えでなければ料理を提供してはならない。
(第九条)飲食営業を営む者は、その提供する飲食物の価格につき、物価統制令の規定に基づいて定められた統制額を遵守しなければならない。

 大ざっぱに要約すると、
(1)外食券食堂、めん類外食券食堂、旅館は、今まで通り外食券と引き換えで飲食営業をしてもOK。
(2)営業が禁止されていた軽飲食店、喫茶店は、新たに発行する副食券と引き換えで指定主食以外の飲食営業をしてもOK。
(3)ただし、飲食物の値段は物価統制令の規定に定められた額を守ること。
 ということのようです。ちなみに、この年の12月にこの法律の修正があって、第八条とそれに関連する項目が削除になりました。つまり、「副食券」がなくなったようですが、何かうまくいかなかったのか、それともさらに規制緩和が行われたのか、記事からは不明です。

 しかし、同法律ができた後もなかなか一気に健全化とはならなかったようで…

(9月9日)

まだまだ多い料飲違反

 料飲が再開されてから3ヶ月、国警香川本部防犯統計課では無許可営業者、外食券の売買ブローカーなど悪質者を対象として去る8月23日から一週間一斉取り締まりを行った結果、165件の違反を摘発。特に悪質な29件を送庁した。これらのうち無券提供が80件を占め、一般消費者が自重して違反防止に協力するよう望んでいる。内訳は無許可56、許可営業者のうち旅館29、軽飲食店78、外食券、めん類食堂各1件で、法規の種類別にみると指定主食違反16、無券提供80、営業標示違反10、虚偽申請3、無許可56となっている。

 さらに、料飲以外の主食絡みの不正も根強く・・・

(10月18日)

ねんねこの中は小麦粉 あの手この手の主食の買出し部隊

 豊作を祝う秋まつりに香川県を狙って県外から主食の買出しが増え、取締り当局を悩ましている。
【東讃】大川地区署では、徳島県の祭りに備えて最近ぐっと目立ち始めた買出し部隊を連続的に取り締まり、ここ数日中に白米約22俵、小麦粉20貫を押収、常習犯35名を検挙した。徳島市田宮町ブローカー○○○○○(37)らは先に警察に連行されて逃走し、16日にはねんねこに子供ならぬ小麦粉10貫を包み、帽子を着せて赤ちゃんを装ったが、警官に見破られた他、最近では気の荒い青年数名が付添い暴力化の傾向がみられ、常用列車も造田駅発午後6時17分の薄暮を狙い、警察側としても逐次取り締まりの手を変え、ヤミ根絶に厳重手配することになった。
【西讃】国警三豊地区署では、徳島、高知両県から三豊郡へ入り込んでくる主食買出部隊を取り締まるため、土讃線財田駅で12日午後6時30分高知行下り終列車を急襲、被疑者7名を連行した。押収したヤミ主食類は精米405キロ、小麦粉123キロ、モチ米25キロ等に置去り分が198キロで、総計では800キロに及んだ。同署では13日も同列車を取締り、150キロを押収した。

(12月23日)

押収主食 7石5斗あまり

 新米出盛り期と年末を迎えて阪神方面への主食のヤミ輸送が激増したため、高松市署水上派出所では師走に入って連日、日通荷扱所の検査をするやら桟橋の張込みを強化するやらの大活躍で、裁判所へ請求する押収捜索令状だけでも1日30通平均、米だけで10俵以上を押収しているが、相変らず後を絶たないので、21日夜8時を期して同市署経済防犯課員らと協力して同港に上り、阪神航路あおい丸(加藤海運)、浪切丸(尼崎汽船)、ひかり丸(関西汽船)の3船を入港と同時に次々に捜索した結果、米670キロ(4石7斗9升)、モチ米314キロ(2石2斗4升)の他、押麦、かんめん、小麦など合計7石5斗8升を押収した。

 とにかくそういう時代でございます。ちなみに、10月18日付けの「不正な買い出し部隊(一件当たりの量は小口)」の摘発された主食品目は米と麦ばかりでしたが、12月23日付けの大規模ヤミ輸送には「乾麺」がちゃんと入っています。以上、昭和24年の飲食関係の主食取引違反に関する新聞記事でした。

讃岐うどんの生活文化が窺えるような記事は、ほとんどなし

 では、その他の「うどん」に関するわずかな記事を拾ってみましょう。まずは、5月7日付けの四国新聞一面コラム「一日一言」から。先述の「飲食営業臨時規整法」による料飲再開を受けたコラムです。

「一日一言」(5月7日)

 名前だけは殊勝に「代用うどん」としてあるが、代用うどんなど食わせるところはない。れっきとした小麦粉製品が堂々闊歩している。▲料飲再開とともに、この方も天下御免となったのだろうと勘違いしている御人も大分あろう。▲今さら禁制品の取締りといっても戸惑いするほど、実に寛大な取締り日であった。▲イギリスでは最近ようやく○○が自由販売になったと聞いているが、日本ではとっくの昔から法律など無視して行われている。▲物統令、食管法などをびしびし運用すればどんな姿になることかわからないが、時々引合いに出されるだけで、普段はクモの巣のかかっている法令を横目であざ笑っているのが現在の復興日本である。▲取締りが始まると、市場から該当品の消えることも早い。うそと思うなら、つい二、三日前まで食わせてくれた店に行ってうどんを注文して見ることだ。▲人の噂も七十五日というが、取締りの方は75日も続けたことがないから、潮時を見てまたボツボツと顔を見せる▲ハエの発生所であるゴミためや便所などを徹底的に清掃しないで一匹二匹を各個撃破する手法をとれば、大抵根負けして“没法子”を叫ばざるを得ないのだが、主食の取締りも失礼ながら下手なハエ退治とあまり大差がない。▲これで料飲再開に臨むとすれば、どんなていたらくになるかおよそ見当がつく。▲末端の事情に極めて暗いおえら方でさえ心配している副食券制度が、東洋的あきらめと抱合した場合に予想通り歯車が動くかどうか。いまから心配である。▲行政整理で浮いて来る人員を全部この方面に回しても、結局手が足りないということになるだろう。

 前述のように、「指定主食の小麦粉を使ったメニュー」である「うどん」は外食券食堂等以外の飲食店では売ってはいけないことになっているので、そういう店では「代用うどん」という名前で「小麦粉を使わないうどんのようなもの」を売っている…という建て前になっているのですが、そのほとんどが実は「小麦粉を使ったうどん」であるという、どこの店も法律なんか厳格に守っていないという話。法律を守らない日本人を嘆いているのか、あるいは「ヘタなハエ退治と同じ」ような取り締まりをやっているお上を非難しているのかわかりませんが、ここは一つ、「お上に何を言われようが、うどんはちゃんとしたうどんを出すんじゃ」という讃岐人の心意気を示唆しているという“ええ話”に持って行きたい…けど絶対違うわな(笑)。

 続いて、今度はほんとに“ちょっといい話”を。

(9月22日)

うどん、菓子で最後の晩食 丸亀で心中企てた母子救わる

 高知県安芸郡安芸町農業○○○○氏(41)の妻○○さん(39)は、21日午前3時ごろ、服毒母子心中しようと死に場所を求めてさまよっているところを丸亀市署員に発見され、同署に保護された。
 同女の話すところによると、主人が病弱のため不和を生じ、夫婦別れの相談をしたところ、○○さん(10)、○○さん(6)の二人の愛児をめぐり子を奪い合いした挙句、ついに○○さんは二児を連れて家を飛び出し、同県幡多郡昭和村の里方○○○○○さん方に逃げ帰ったが、子供を連れ帰そうと夫が再三同家を訪れるので、母子三人だけの天国を求めて去る12日○○方を家出し、死に場所を探しつつ各地を転々としたが、何も知らぬ愛児たちのいたいけな姿を見ては死の決心も鈍り、20日ようやく丸亀市に来た。ここで所持金を使い果たしたので、同夜、福島町弁天市場で子供にうどん、菓子などを与え、最後の晩食をしたため同地をさまよっていたもので、同情を集めている。

 「最後のうどん」にならずに済んで本当によかった。ちなみに、この時(1949年)のお子様たちは今(2018年)なら80歳前後。もしかしたらご存命かもしれません。

 では最後に、この年の新聞に出てきたうどんメニューのレシピ記事を一つ。

(8月7日)

北京風冷しうどん

 脂の多いブタ肉を15匁ほど、それに玉ねぎとショウガのみじん切りを油で炒め、火が通ったところでみそ、醤油、塩を加えて味をつけ、少しずつ水をさしてドロリとさせる。別に季節物の野菜を色とりどりに美しくゆでておく。冷たく冷やしたうどんにゆでた野菜をのせ、その上に炒めたものをかけていただく。北京ではこれを「ジャージャーメン」と言っている。(文部省婦人科長山多民子)

 文部省の婦人科長さんが、うどん料理のレシピを紹介しています。想像するに、出来上がりはたぶん、今で言う「肉味噌うどん」です。北京の炸醤麺(ジャージャー麺)の麺は基本的に中華麺ですが、古く中国の炸醤麺の姿を受け継いでいると言われる岩手の「じゃじゃ麺」はうどんみたいな麺を使っているから、まあその辺はみんなジャージャー麺の仲間ということで(笑)。しかし昭和24年のグルメ、すでにハイカラで侮れませんね。

 以上、この年も相変わらず四国新聞には「讃岐うどんの生活文化が窺えるような記事」はほとんどありませんでした。ちなみに、昭和24年に香川商工課から告示された玉うどんの生産者価格は「一玉7円」。販売価格としては、昭和21年に戦後のどさくさの中の自由市場で「うどん一杯10円」の記述が出てきましたが(昭和21年参照)、このあたりがこの時代のだいたいの相場のようです。

麺機のイラストが新たに2件登場

眞崎麺機株式会社の麺機

髙城式製麺機

 昭和24年の新聞広告に、麺機のイラストが新たに2件登場しました。どちらも何がどうなってうどんができるのかよくわかりませんが(笑)、とりあえずそれなりに大きな機械のようです。

 続いて、昭和24年に協賛広告等で四国新聞に広告を出した香川県内のうどん関連業者は、以下の通り。

(製麺)
香川県乾麺工業協同組合(高松市玉藻町)

(製粉)
四国物産株式会社(観音寺市)
日讃製粉株式会社(多度津町)
日清製粉株式会社坂出工場(坂出市)
石見精粉工場(綾歌郡山田村)

(製麺機)
石田鉄工所(坂出市)
宮地鉄工株式会社(高松市)
洲崎産業鉄工所(小豆島)

 以上、この年も前年とよく似た業種と顔ぶれの広告が並んでいました。ちなみに、製麺機や製粉会社の広告は何度も出てきますが、うどん店や製麺所の広告はまだ全く出てきません。おそらくうどん店(うどんを出す食堂)はどこも単独で広告費を出すほどのビジネスではなく、「近所のお客さんだけ来てくれたらいい」くらいの規模の店ばかりだったのだろうと思います。

(昭和25年に続く)

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