さぬきうどんのあの店、あの企業の開業秘話に迫る さぬきうどん 開業ヒストリー

【植田製麺所(高松市栗林町)】
半世紀以上に渡り、高松市内へうどんを配達し続けた栗林の製麺所

(取材・文:

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  • vol: 14
  • 2018.10.22

第一話

植田製麺所・前編

 高松市栗林町で、平成28年7月まで営業していた「植田製麺所」。栗林小学校正門前から伸びる細い路地の奥という人目を避けるような立地だが、かつて、ここのうどんは今では想像できないほど多くの人たちの昼食を一手に引き受けていた。戦後から平成まで、ご夫婦2人に「うどんと共に歩んだ半生」を語っていただいた。

聞き手・文:篠原楠雄
お話:ご主人・植田信義さん(昭和7年高松市栗林町生まれ)
   奥さん・植田美代子さん(昭和12年高松市三谷町生まれ)

<戦後〜昭和30年代>

ご主人の実家で、兄弟で製麺業を始めた

ご主人の植田信義さん(平成28年取材当時)

ご主人の植田信義さん(平成28年取材当時)

ご主人
 うどんする前は色々した。看板描いたり、あっちこっち行たん。あれこれしよって、分からんけど、いつの間にかうどん屋しよった(笑)。組合(製麺組合)したりなんかしよったけん、始めたんは戦後か…わっせた(忘れた)わい。
奥さん
 最初は兄と兄弟でしよったんで。場所はこことちゃうけどの。そこに納田の自転車屋さん(納田自転車商会・高松市栗林町)があるやろ。あれから南行って、今マンションが建っとるところの自転車置き場が元のしよったとこ。あそこが生まれたとこの家やけんの。ほんで私が結婚したんが昭和37年の5月5日。私のうちは遠国の田舎の三谷の農家や。私やお父さんや戦死しとるけん、うちでうどんやしたことなかったのに、結婚してからずんやりうどん。うどんだけ(笑)。

 嫁に来たんは元の家やけど、30何年前に分家してこっち来たん。親が土地と家持っとって、次男やけんくれたから。元の家は長男が売ってしもたん。そこからはこの人と私の2人や。家は古かったけど、家賃がいらなんだからやれた。家賃に人手間にいうたら全然ダメ。子も1人だったし。これが人の借っとんだったら「出て行け」言われたら、今度見つけるのに困るでない。ほんで施設をこっしゃえないかんやろ。釜のおくどさんの大っけなん付けないかん。今みたいにガスでないけんの。

ご主人
 こんな大っけな、こんな釜でワーンと沸かっしょった。初めは薪じゃったわの。
奥さん
 薪は材木屋とかからもろてくるからタダやけどの。あれはこんな長いけん、割らないかんのや。オガクズも使いよったけど、どっちもやっぱり手間やけん。その後、重油になって大分なるの。もう重油は火い点けたらすぐ、何十分かしたら沸くでない。昔は釜が大けなかったけんなおさらや。
ご主人
 これ(1mぐらいの輪っか)が据わるぐらい、大けなおくどさんしよったん。破れてしもたけどの。

製麺機は縦切りから横切りに進化した

閉店後の作業場に残されていた製麺機。

閉店後の作業場に残されていた製麺機。

ご主人
 うどんする機械は最初からあった。切るんと練るんとぐらいあったんかな。練るんは、10帯をバーンと練れよった。
奥さん
 うちの機械(製麺機)は福井やったの。
ご主人
 うん。坂出の「福井工務所」。
奥さん
 福井は古いもん。
ご主人
 こう切るん(手を上に持ち上げる)もあったしの。
奥さん
 飼い葉切りみたいな。今でもあるでない。食べさっしょるとこであるで。
ご主人
 こう切るのはの、普通はカシツ切り(?)だったけど、今度横切りになったけん。横切りの方がうまいんぞ。
奥さん
 福井のは長い間、刃が縦に下りる機械だったん。大分前にのうなったけどな。横切りの方が美味しいんや。メリケン粉の練ったんをかけといて、スイッチ入れたらトントントントンて下へこう行く。生地を締め付けんでパッパと切るけん美味しいん。昔はほら、農協行たらうどんしよったやろ。アレは縦切りやったけん、あんまり美味しなかったんや。ほんでもう長い間そればっかりだったんやけど、今はこう、横切りでパタンパタンとこうするようになったわ。
ご主人
 機械まだあるけん。向こう(作業場)行てみまい。
奥さん
 もうワヤにしとんで、閉めとるけん掃除せんから(笑)。

(作業場へ移動)

製麺機についていた「福井工務所」のラベル。

取材当時の作業場の様子。

(上)製麺機についていた「福井工務所」のラベル。(下)取材当時の作業場の様子。

ご主人
 機械の横に「福井工務所」って書いてあるやろ。これでこう切るけんの。これは1回買い換えた。初めのはちょっと悪かったけんの。ほんでここが打ち台。それからここへ大きな練り機が1つあったん。
奥さん
 練り機と伸ばす機械とは、やめてた後放ってしもたん。今、あれだけ置いとる。
ご主人
 ほんで、メリケン粉は「金魚」でしよった。
奥さん
 今でも練るんと切るだけぐらいは、やっぱりみんな機械使ことるよ。それでなかったら、もうえらいえらい(疲れる)。でけへん。こんなん手足でするんは、もう食道楽のりこーげに言うて(理屈を言って)ちびっと(少ない量)してたこーに(高く)売るとこはしよんや(笑)。

高松市

植田製麺所

うえたせいめんしょ

760-0073

高松市栗林町2-8-11

開業日 昭和20年代

閉店

現在の形態 製麺所

(2018年10月現在)

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