さぬきうどんのメニュー、風習、出来事の謎を追う さぬきうどんの謎を追え

vol.66 新聞で見る讃岐うどん

新聞で見る平成の讃岐うどん<平成20年(2008)>

(取材・文: 記事発掘:萬谷純哉)

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  • vol: 66
  • 2023.07.17

ブームは依然として第2次“高値安定期”

 平成20年(2008)の「讃岐うどん巡りブーム」の状況は、言わば“嵐の前の静けさ”の1年。「讃岐うどん巡りブーム」は平成12年(2000)頃に第1次のピークを迎え、平成18年(2006)の映画『UDON』公開で“2段ロケット”が発射し、平成21年(2009)の「瀬戸大橋の通行料が土日1000円」という政策で爆発的な“3段ロケット”に点火するわけですが、その“3段ロケット”の直前の年です。

 ただし、そのあたりの「讃岐うどん巡りブームの現場」の情報が新聞に全く出てこなくなりましたので(ニュース価値がないと見られていたのか、単にフィールドワークをしていなかったのか・笑)、2000年代前半の流れを大ざっぱに把握するために、確認できる数字として県内のうどん店数と新規オープン数の推移を並べておきます。

確認できた県内うどん店数(『さぬきうどん全店制覇攻略本』より)

●平成10年(1998)…うどん店数・711(新規オープン数・27)
………
●平成12年(2000)…うどん店数・710(新規オープン数・35)
●平成13年(2001)…うどん店数・721(新規オープン数・61)
●平成14年(2002)…うどん店数・754(新規オープン数・60)
●平成15年(2003)…うどん店数・778(新規オープン数・68)
●平成16年(2004)…うどん店数・811(新規オープン数・60)
………
●平成20年(2008)…うどん店数・698(新規オープン数・39)

 まず、うどん店の「新規オープン数」を見ると、平成13年(2001)に前年までの約2倍の年間61店に激増し、以後数年間「年間60店」ペースが続いています。これは明らかに2000年頃に迎えた第1次「讃岐うどん巡りブーム」の影響で、ブームの衝撃的な大きさが改めて数字で確認できます(「うどん店数」が「新規オープン数」ほど増えていないのは、閉店した店があるからです)。その後、平成17年(2005)~19年(2007)はデータが確認できませんでしたが、平成20年(2008)になると、「うどん店数」も「新規オープン数」も少し減ってきました。

 これには、2つの要因が推測されます。まず1つ目は、「“オーバーストア”状態から次第に適正な数に淘汰されてきた」という側面。すなわち、平成16年(2004)の「うどん店数・811(新規オープン数・60)」という数字は、いかに県外客が増えてきたと言ってもさすがに店が多すぎたようで、その“うどん店バブル”とでも言うべきオーバーストア状態が正常な数に落ち着いてきたのではないかという推測です。

 そしてもう1つは、大人数を収容できる「大衆セルフ」のチェーン店が平成17年(2005)あたりから明らかに増え始めたため、県全体のうどん客数が増えても、それまでより少ない数の店で収容できるようになってきたことが挙げられます。つまり、「店の数は減ったけど、うどん店全体の収容可能人数は減っていない(あるいは増えている)」という推測ですが、いずれにしろ、「讃岐うどん巡りブームは依然として高値安定期を続けている」ということをまず念頭に置いて、平成20年(2008)の新聞に載ったうどん関連記事を見ていきましょう。

「さぬき」の商標問題勃発

 まず3月に、台湾の讃岐うどん店「土三寒六」(前年に県の「さぬき大使館」に認定されたうどん店)が台湾の大手冷凍食品メーカーの「南僑化学工業」という会社から「さぬき」という名称の使用差し止めを求められるという事件が起こったことで、台湾で現地企業が「さぬき」という言葉を商標登録していることが発覚。県行政やさぬきうどん業界が、かなりザワつきました。

(3月4日)

「さぬき」商標使えず ローマ字、漢字も 台湾、現地企業が登録 県、対応に苦慮

 台湾の大手冷凍食品メーカーが「さぬき」の名称を台湾知的財産局に商標登録していたことが3日までに分かった。日本から進出した讃岐うどん店「土三寒六」(台北市)が「さぬきうどん」を名乗れなくなったという問題はあるが、今のところ、うどんを輸出している県内企業や観光キャンペーンで「さぬきブランド」を使う県への抗議といった動きはなく、県は対応に苦慮している。

 県によると、このメーカーは台北市の南僑化学工業。台湾で冷凍うどんの高いシェアを持ち、1999年に「さぬき」「讃岐」「SANUKI」などを商標登録。実際に「讃岐」と印刷したパッケージで冷凍うどんを製造販売している。一方、「土三寒六」は県内で修業を積んだ経営者が06年6月に出店。しかし、昨年11月に南僑側から「さぬき」という名称の使用差し止めを求める内容証明が届き、その後、看板の表記を変えなければ刑事告訴するなどとの抗議を受けたことから、「さぬき」の文字を看板から外したという。

 外務省と経済産業省の認可団体、交流協会台北事務所によると、台湾の商標法でも商品の品質や産地を誤認させるおそれのあるものは商標の不登録事由に当たり、著名な外国地名は登録できないが「一般に認知されてない場合は登録できる」という。登録を取り消すには無効裁判を起こし、観光ガイドブックや雑誌などで「さぬき」が紹介され、登録時には広く一般に知れ渡っていたことを証明する方法がある。「さぬき」の名称使用が差し止められたことに対し、県に何らかの対応を求める声もあるが、「9年前に一般的だったことを証明するのは容易ではない」(県担当者)のが実情。さらに、県内企業の輸出への影響などもない現状で、県が当事者として審判を起こすことが適当かどうかという問題もあるという。川池秀文県観光交流局長は「讃岐は香川県の旧国名であり、関心を持って調査している。国際的な事案であり、どのような対応が適切か検討中」と話している。

 この事件において解決すべき問題は、

(1)「さぬき」の名称使用差し止めを突きつけられた讃岐うどん店「土三寒六」の救済をどうするか?
(2)台湾をはじめ、海外で「さぬき」の言葉を勝手に商標登録されないためにどうするか?

の2つあるわけですが、記事にあるように、県としては(1)の「土三寒六の救済」についてはノータッチ、(2)の「商標の防衛」についても台湾企業から香川県に抗議が来ているわけではないので対策に苦慮中というスタンスです。このうち、(1)については民間のうどん店のビジネス上の揉め事なので、ビジネスの原則から言えば県が拙速に救済に乗り出すのは少し筋が違うということで、ノータッチも仕方がないところでしょう。

 ただし、(2)については、まだ台湾企業から香川県に直接抗議がないとはいえ、当時すでに中国で「青森」の名称が商標登録されて問題になっていたことからすると、当初の香川県の対応は「少し鈍い」と捉えられたようで、この記事が載った1週間後にさっそく四国新聞の一面下コラム「一日一言」で、苦言が呈されていました。 

(3月11日)

コラム「一日一言」

 災難と言うべきか。 中国で「青森」という商標が申請されていると青森県が知ったのは5年前。公告期間中に偶然情報をつかんだ。現地企業が登録しようとしていた。これは一大事。中国には特産のリンゴなどを輸出している。中国は世界一のリンゴ生産国だが、青森リンゴは高級品として珍重されている。影響は小さくない。直ちに異議を申し立てた。早めに芽を摘もうと弁理士事務所に依頼し、同じ漢字圏の香港、台湾でも同様の公告が出ていないか監視し始めた。攻めにも転じて、来年度からは県産品を海外で商標登録する場合は補助金を出し、輸出品に統一マークを付けることも考えているという。幸い中国での申請は却下された。だがそれには5年を要した。対策もただではない。監視だけで年間約300万円。「青森」を守るため、結構な手間と金と時間をかけるよう迫られた。

 それと比べて香川県。「讃岐」が台湾で9年前に商標登録されていたため、日本発のうどん店が「さぬきうどん」を名乗れなくなった。店はもちろん大弱り。でも県は、当惑しても青森ほど困った様子はない。なぜなら他に被害報告がないから。讃岐の名が付くブランド農産物も全く輸出されていない。だから大がかりな対策を求められることもない。今回、相手企業や台湾政府に働きかけても、訴訟ではないから金はかからない。財政難の折、ホッとした県職員すらいるかもしれない。しかしこれは、県が県産品の売り込みに熱心でなかったことの何よりの証拠だ。海外で「讃岐」が認知されていないことをも示している。 喜ぶべきか悲しむべきか。災難と言うべきか。

 すると、このコラムを機に、県や県議会や組合がいろいろと動きを見せ始めました。まず5月に、議員とうどん関係者が東京の「台北駐日経済文化代表処」を訪れて、商標問題の解決を要請。

(5月8日)

「さぬき」商標問題解決を 大野衆院議員ら 台湾駐日代表に陳情

 台湾の大手冷凍食品メーカーが「さぬき」などの名称を商標登録していた問題で7日、大野功統衆院議員ら県関係者6人が東京都港区の台北駐日経済文化代表処を訪れ、許世楷代表らに問題の早期解決に向けた協力を要請した。陳情に訪れたのは、大野氏の他、綾田福雄、大山一郎、新田耕造の各県議、日本うどん学会の佃昌道会長、竹林正樹副会長の6人。許代表に、商標登録をめぐり現地で看板の取り下げを余儀なくされたうどん店が出ていることや、「さぬき」の名称が日本で歴史的に広く親しまれてきたことなどを熱心に説明し、問題への理解と円満解決に向けた協力を求めた。これに対し許代表は「現在、知的財産局で商標登録の適正を審査しており、今日の陳情のことを台湾政府に報告して、円満に解決できるように努力したい。また、台湾の国民にももっと事情を知ってもらえるよう香川側からのアピールをお願いしたい」と話した。

 議員と関係団体という“外堀”が動き始めた後、いよいよ“本丸”の県の真鍋知事が、定例会見で商標問題の再発防止について触れました。

(5月27日)

「各国の情報を提供」 「さぬき」商標問題、知事が防止策検討

 台湾の大手冷凍食品メーカーが「さぬき」などの名称を商標登録していた問題を受け、真鍋知事は26日の定例会見で「これから海外進出する事業者に商標制度の情報を提供する他、県内事業団体と協力して対応方法などを検討していきたい」と、再発防止に向けた考えを示した。

 県は今回の問題が起きた後、他国でも同様の事案が発生する可能性があることから、今後の予防策を検討。具体策として、台湾や中国、韓国などの商標権制度を中心に研究を進め、商標の登録方法や取消申請方法など、実務面で不可欠な情報を事業者に提供する他、専門家を招いた事業者向けの研修会なども計画している。

 香川に縁のある名称が海外で商標登録されているかどうかを県が把握することについては、知事は「膨大な人員と経費が必要で、なかなか困難」と説明。また、商標権の運用方法について、国レベルで検討を重ね、他国の地域名を登録しないようにするなど、現行制度を見直す必要性を訴えた。

 知事が会見でコメントするということは当然、事前に県で詳しく調べた上でということですが、それによると、どうも海外で日本の地名を商標登録されるのを防ぐのはかなり面倒な話のようです。しかし「動かないわけにはいかない」ということで、県の担当者たちが台湾政府の知的財産局に問題解決の要望書を渡すことになりました。

(5月22日)

「さぬき」商標問題 県と県議会、台湾政府に解決要請へ 28日、観光交流局長ら訪台

 台湾の大手冷凍食品メーカーが「さぬき」などの名称を商標登録していた問題で、県と県議会は21日までに、台湾政府に県民の「さぬき」の名称に対する思いを伝え、問題の早期解決を図るよう要請することを決めた。28日に川池県観光交流局長らが訪台し、知的財産局の担当者に要望書を手渡す。この問題で県が台湾政府に要請するのは初めて。現在は香川からの輸出などに影響はないものの、今後の県産品の販路開拓や県内企業の事業活動に支障が出ないよう、県として台湾政府に要請することが必要と判断した。

 要望書は、「さぬき」の名称が歴史的に広く使われ、県民が愛着を持っていることなどを説明した上で、商標問題の早急な解決を求める内容という。県によると、日本人が現地で開業したさぬきうどん店が2007年11月、同メーカーからの抗議を受け、看板から「さぬき」の削除を余儀なくされた。店の経営者は今年4月、台湾の知的財産局に商標の無効審判を申請している。

 県の訪台決定を受けて最後に組合が動き、県に対して問題解決に向けた要望書を提出しました。

(5月27日)

県内製麺団体が県に要望書提出

 台湾での商標問題を受け、県内の製麺業者などで作る業界団体の代表者が26日、県庁を訪れ、問題の早期解決を図るとともに、国に対して今後の予防策を講じるよう要請することなどを求めた。訪れたのはさぬきうどん協同組合や県製粉製麺協同組合など4団体の代表ら7人。県が28日に訪台し、台湾政府に問題解決への協力を要請することから、業界の声も伝えてもらおうと、川池秀文観光交流局長に要望書を提出した。…(以下略)

 そして5月28日に、県の川池観光交流局長が台湾政府の知的財産局を訪れ、要望書を提出しました。

(5月29日)

台湾政府に要望書 さぬき商標問題 県が早期解決訴え

 台湾の冷凍食品会社が「さぬき」などの名称を商標登録していた問題で、川池秀文観光交流局長が28日、台湾政府の知的財産局を訪れ、「さぬき」の名称に対する県民の思いを伝え、商標問題の早期解決を求める要望書を提出した。…(以下略)

 何だかあちこちで「要望書の提出」が行われているようですが(笑)、「『さぬき』の名称に対する県民の思いを伝え…」という記事を見ると、厳格なルールで行われているはずのビジネスの世界に少なからず“情緒”でアプローチしているように見えて、外から見ていると実にもどかしい印象があります。そうこうしているうち、このたびの事件の発端になった台北市の南僑化学工業が、今度は中国でも「SANUKI」などの2種類の名称を商標申請していたことが発覚しました。

(9月30日)

台湾の食品メーカーが「SANUKI」「讃岐」を中国で商標登録 県が対応検討

 台湾で「さぬき」などの名称を商標登録していた同国の大手冷凍食品メーカーが、中国で「SANUKI」など2種類の名称を商標申請していたことが29日分かった。…(中略)…この企業は南僑化学工業(台北市)。同社は、日本から進出した讃岐うどん店との間で商標問題が表面化した今年3月、中国商標局に「SANUKI」と「讃岐」の2種類を、飲食店と麺類の商品名として商標登録申請していた。

 今回の事案は、県が海外の商標トラブルなどに専属的に対応するために設置した「糖質バイオ・知的財産グループ」が、中国商標局のデータベースを調べる中で見つけた。同グループによると、出願された商標が同局の審査を通れば「公告期間」(2~3ヶ月程度)が設けられ、異議申し立てが可能になる。ただ、出願から公告まで平均で2~3年かかるという。このため、県は当面、中国商標局のデータベースで審査状況を注視しながら、関係企業や団体、専門家を交えて対応策を協議していく。

 5月に知事が「香川に縁のある名称が海外で商標登録されているかどうかを県が把握することについては、膨大な人員と経費が必要で、なかなか困難」と発言していましたが、さっそく新たな案件が見つかりました。ちなみに、台湾と中国で「さぬき」を商標登録しまくっている台湾の南僑化学工業は当時の日本の大手冷凍食品会社とも浅からぬ交流があったそうなのですが、南僑化学工業が「さぬき」の名称を商標登録していることを知らなかったのか、あるいは何か意図あって静観していたのか、残念ながら事前に歯止めをかけることはなかったようです。

「世界麺フェスタ」が開幕

 前年から盛んに事前PRが行われていた「世界麺フェスタ2008inさぬき」のイベントの全貌が発表され、5月3日に開幕しました。

(4月24日)

「世界麺フェスタ2008inさぬき」5カ国・地域、12道県参加 来月3日開幕、イベント概要決まる

 5月3日に開幕する「世界麺フェスタ2008inさぬき」の実行委員会が23日、高松市内のホテルであり、イベント概要を発表した。主会場の高松市のサンポート高松では、世界5カ国・地域と国内12道県から計20種類の麺料理が集結する他、シンポジウムやファッションショーなどを通じた文化交流を展開。フィナーレとなる善通寺市など各市町でも多彩な催しを繰り広げ、県内全域で麺の祭典を盛り上げる。期間は6月15日まで。

 幕開けを飾るサンポート高松では期間中、国内外の麺を一度に味わえる「麺食堂」を多目的広場と大型テント広場に設置。中国、新疆ウイグル自治区、韓国、イタリア、トルコの伝統の麺料理を販売する他、稲庭うどん(秋田)や福岡とんこつラーメン(福岡)といった国内有数の麺が勢揃い。県内からは、さぬきうどん協同組合が本場の味を提供する。…(以下略)

世界麺フェスタ2008inさぬき

 「世界麺フェスタ」は、5月3日~6日はサンポート高松会場が中心、6月13日~15日は総本山善通寺をメイン会場に、「シルクロード」に関わる各国の音楽や芸能イベント、学術フォーラム、バザール等々を集めて行われました。開幕後、新聞紙上では各催し物が開催される度に多くの紙面を割いてレポート記事が載っていましたが、ここでは割愛。そして、イベント終了後にまとめ記事が載っていました。
 

(6月16日)

世界麺フェスタ2008inさぬき 予想上回る23万人来場 善通寺でフィナーレ うどん法要、音頭花添える

 「シルクロードは麺ロード」をテーマに約1ヶ月半にわたって県内各地で繰り広げられた麺の祭典「世界麺フェスタ2008inさぬき」は、善通寺エリア最終日の15日、主会場の総本山善通寺でうどん法要などが行われ、閉幕した。高松、善通寺両会場の来場者は計7日間で約23万人(主催者発表)と、当初予想の10万人を大きく上回った。…(中略)…

 最終日は、うどん文化の定着に感謝する「うどん法要」があり、幼稚園児らが弘法大師空海に讃岐うどんをはじめ15種類の麺を献上。おたき上げでは読経の中、関係者がせいろや割りばしを次々と炎に投げ入れ、郷土が誇る食文化に感謝するとともに、今後のさらなる発展を願った。市民ら約420人は「讃岐うどん音頭」で境内を練り踊り、園児は法被に前掛け姿でうどん鉢飾りを頭に乗せ、かわいらしい踊りで花を添えた。…(以下略)

 当初予算1億3000万円をかけた行政絡みの一大イベントでした(決算報告は新聞には載っていませんでした)。空前の「讃岐うどんブーム」を背景に行った大イベントでしたが、「一大讃岐うどんイベント」ではなく、「世界麺フェスタ」(といってもシルクロード関連だけですが)という方向に持って行くあたり、やはり行政や組合をはじめとする“権威筋”のやることは一味違うようです(笑)。

小規模うどん店の排水規制が「日量10トン以上」に

 平成16年(2004)に勃発した「小規模うどん店の排水規制問題」が、4年経ってようやく県の条例にまとまるようです。

(6月19日)

うどん店排水規制 日量10トン以上が対象 県条例改正案 公衆浴場なども

 県は18日、3月に改正した県生活環境保全条例(旧県公害防止条例)のうち、継続審議としていた水質保全対策と地盤環境対策の規制措置案を明らかにした。水質保全対策の中で、うどんのゆで汁などによる河川の水質悪化問題を受けて行う排水規制は、日量平均10トン以上(うどん玉約500~600玉製造に相当)を排水する事業所への適用を提案。業種はうどん店の他、国の法律で規制されていない自動式鶏卵洗浄施設や厨房を備える公衆浴場などを対象としている。…(以下略)

 まず、規制を受ける店の条件が「日量平均10トン以上」という方針が出ました。4年前に排水問題が出てきた時は、それまで排水規制の対象外だった「日量50トン未満」の店全部に網がかかりそうな話になっていましたが、日量50トン未満の店のうち、日量平均10トン未満の店はこれまで通り規制の対象外というところに落ち着きそうな気配になってきました。

(10月1日)

うどん店排水規制 透視度10センチが目安 県、条例に盛り込みへ

 県は30日、県生活環境保全条例で継続審議となっている水質保全対策について、排水量が日量平均10トン以上のうどん店などを対象とした排水規制の基準値を1リットル当たりの全有機炭素量(TOC)160ミリグラムとする方針を示した。基準の目安は排水の透視度が10センチ程度。今年7月の実態調査では、事業所50カ所のうち34%に当たる17カ所が基準値を超えていた。…(以下略)

 続いて、その規制の基準値として「1リットル当たりの全有機炭素量(TOC)160ミリグラム」という数字が出てきました。素人には何のことだかわかりませんが(笑)、目安は「透視度が約10センチ」という“目視”です。そして11月に、県が排水処理設備を導入する事業者への救済措置を打ち出しました。

(11月28日)

うどん店などの排水規制 県が利子全額補助へ

 水質保全対策として、うどん店などの排水規制を導入している県は27日、排水処理設備の整備で融資を受ける事業者に対し、利子分を全額補助する方向で検討を進めていることを明らかにした。…(中略)…

 県生活環境保全条例の改正内容を協議する県環境審議会が、小規模・零細事業者への排水規制を盛り込むことを答申。規制対象はうどん店や製麺業者、厨房を備える温浴施設などのうち、排水量が1日平均10トン以上の事業者で、適用に3年程度の猶予期間を設けるとしている。これを受け、県は小規模・零細事業者の経営に配慮し、対策を検討。現在、大気汚染や騒音などを含む公害防止施設を整備する際、県と百十四銀行が協調融資している年利1.95%の低金利融資制度を拡充する。具体的には、排水処理設備の導入で融資を受ける場合、利子分を県が全額補助。…(中略)…処理設備の導入には現在、400万円ほどが必要。…(以下略)

 適用に3年の猶予を設けるとともに、設備導入に伴う借入金の利子を全額補助するという措置です。ちなみに、このうどん店の排水規制問題は当初から「ゆで汁に含まれる高濃度のでんぷん」が“やり玉”に挙げられていたのですが、水質汚染の“主犯”である「重金属」や化学製品由来の「窒素」と「リン」ではなく、海洋生物の“エサ”になりうる「でんぷん」が問題視されていることについては明確な理由が今ひとつはっきりしないままで、後に「瀬戸内海の魚が減っている理由の一つが“栄養不足”ではないか」という学説も発表されました。

「年明けうどん」が提唱される

 「さぬきうどん振興協議会」が発足し、「年明けうどん」が初めて提唱されました。

(8月7日)

さぬきうどん振興協発足 「年明けうどん」を提唱 展示資料館整備構想も

 香川の味・さぬきうどんの関係団体が、業界の垣根を越えてうどんやそうめんの発展について話し合う「さぬきうどん振興協議会」が発足した。6日、県庁に真鍋知事を訪ねて設立と今後の活動を報告。年始にうどんを食べる「年明けうどん」の普及に取り組むことや、さぬきうどん展示資料館(仮称)の整備を進める構想を明らかにした。

 振興協議会は今年開かれた「世界麺フェスタ」の実行委員会のうち、さぬきうどん協同組合や県製粉製麺協同組合、小豆島手延素麺協同組合などで構成する麺関係分科会を継承して7月に発足。会長には真部正敏さぬきうどん研究会長が就いた。この日は県庁訪問に先立って高松市内で会合を開き、今後の活動目標などを協議。「年明けうどん」提唱や資料館整備の他、商標問題などに連携して取り組むことを決めた。

 振興協議会によると、「年明けうどん」は「年越しそば」にならって、年始にうどんを食べる習慣を全国的に広めるのが狙い。来年の正月から消費者に食べてもらおうと、早急にPR法などを検討する。資料館は世界麺フェスタのテーマ館に展示したパネルなどを活用して、大勢の人にさぬきうどんの歴史などを紹介。高松市サンポートの高松港ターミナルビル1階での整備を計画している。…(以下略)

 「年明けうどん」のスタートは、平成21年(2009)の正月からです。それにしても、「さぬきうどん協同組合」に「県製粉製麺協同組合」に「さぬきうどん振興協議会」と、讃岐うどん関連の団体がたくさんできますね(笑)。そして、「年明けうどん」の定義も発表されました。
  

(10月3日)

全国展開目指す「年明けうどん」 紅白にトッピング さぬきうどん振興協が定義 

 県内の麺製造団体などが立ち上げた「さぬきうどん振興協議会」(真部正敏会長)は2日、業界活性化の一環として提唱していた「年明けうどん」の基本的な定義を発表した。食べる時期は元日から15日までとし、トッピングにはえび天など赤い物を添え、紅白の縁起物として食べることで「1年の幸せを願う行事」として全国で定着を図っていく。…(以下略)

 「年明けうどん」の定義が「トッピングに赤い物を添える」と決まり、「紅白の縁起物として1年の幸せを願う行事」という位置づけも合わせて発表されました。

「さぬきの夢2000」の後継品種が2種に絞られる

 「『さぬきの夢2000』の後継品種が2種類に絞られた」という記事がありました。

(3月20日)

「さぬきの夢2000」後継品種、2010年度から本格生産

 県は18日、県産のうどん小麦「さぬきの夢2000」の後継品種の実用化について、早ければ10年度の作付け分から本格生産を始める方針を明らかにした。同日開かれた「さぬきの夢推進プロジェクトチーム検討会」(座長・北川博敏香川短大名誉学長)で提示した3ヵ年計画案(08~10年度)に盛り込んだ。後継品種は、これまで県農業試験場で研究が進められ、有望系統に「香育20号」と「香育21号」が挙がっている。既に昨年11月には農家での試験栽培も始まった。計画によると、08、09年度は製麺方法の研究や消費者アンケートの実施、栽培に適した土地の検討などを行い、後継品種を選定。10年度の夏をめどに農水省へ品種登録を出願し、秋から作付面積を拡大する。…(以下略)

 「さぬきの夢2000」は平成3年(1991)に研究が始まり、平成12年(2000)に品種登録が出願されて「さぬきの夢2000」という名前になり、平成13年頃からうどん店で使われ始めました。しかし、当初から関係者や識者の間では高評価のコメントがたくさん出ていたものの、うどん製造の現場では扱いにくさが露呈。あげくに「不正表示事件」まで起こるなど問題も多く(「平成16年」等参照)、早々に改良型の後継品種の開発が進められていたようです。この年に後継品種の有望系統として絞られた「香育20号」と「香育21号」は、翌平成21年(2009)に「香育21号」が選ばれ、それが「さぬきの夢2009」と命名されて市場に出ることになります。

廃棄うどんの飼料化計画は、「豚」から試験飼育開始

 前年の新聞記事で出てきた「廃棄うどんの飼料化」の研究が1段階進み、平成20年度から「豚」で試験飼育が始まったようです。

(3月11日)

廃棄うどんで高級豚 県が代替飼料研究 来年度から試験飼育

 家畜用飼料の主原料となるトウモロコシの高騰を受け、県は代替品として、うどんやオリーブを飼料化する研究を進めている。製造過程などで廃棄処分される部分(食品残さ)を有効活用し、コスト低減と県畜産物のブランド化を目指す取り組み。2008年度からは県内の養豚、養鶏農家に委託し、うどんやオリーブの飼料を使った試験飼育を始める。県によると、配合飼料の価格は、農家の実質負担分で前年同期と比べ2割近く上昇。このため、食品残さを飼料化するエコフィードが全国的に研究されている。

 県は、時間が経過したり規格外のために廃棄されるうどんのゆで麺や、剪定したオリーブの葉に着目。乾燥させて粒状にし、うどんは讃岐三畜の「讃岐夢豚」に、オリーブは同じく「讃岐コーチン」に与える試験を、05年度から三木町の県畜産試験場で実施してきた。これまでの研究で、うどんやオリーブを一般の配合飼料に混ぜても、発育や肉質に問題がないことが分かっている。今後は、餌にするための処置の効率化や、原料の安定確保が課題という。県は、08年度当初予算案に地域資源飼料化推進事業(400万円)を計上。農家で試験飼育を始める他、原料の収集や飼料化、輸送などシステムを検討する。…(以下略)

 廃棄うどんを飼料にして県の畜産物のブランド化を目指すため、05年度から三木町の県畜産試験場で「うどんを讃岐三畜の『讃岐夢豚』に与える試験」を実施してきたそうです。ちなみに、オリーブを飼料に混ぜたのが「オリーブ牛」や「オリーブハマチ」なら、廃棄うどんを飼料にした豚は「うどん豚」か? と思ったら、県のHP等には香川の“ブランド豚”の名前として「讃岐夢豚(さぬきゆめぶた)」「オリーブ夢豚(おりーぶゆめぶた)」「オリーブ豚(おりーぶとん)」が出てくるものの、やはり「うどん豚」は見当たりませんでした(笑)。

土庄の「子安観音寺」に中国の青龍寺から「うどん大師像」が送られる

 小豆島・土庄町の「子安観音寺」は長年にわたって参拝客にうどんの接待を行っているそうですが、そこにかつて空海が密教を修得したとされる中国の青龍寺から「うどん大師像」が贈られたそうです。

(1月13日)

「うどん大師像」開眼供養 土庄の子安観音寺 中国・青龍寺から贈呈

 うどんの接待で知られる土庄町大部の子安観音寺はこのほど、昨年12月に中国西安、青龍寺の寛旭(かんきょく)管長から贈られた「うどんご本尊さま弘法大師像」の開眼供養を行った。…(中略)…うどん御大師像は、高さ35センチ、幅30センチの座像。…(以下略)

 「うどんご本尊さま弘法大師像」は35センチ×30センチという小さい座像で、うどんのお接待を受けるお堂に鎮座されているそうですが、同寺のHPに載っている写真を見ると、座像のお大師さんは特にうどんを持ったり食べたりはしていないようです(笑)。

「源平の里むれ」が、うどん用小麦粉の袋のデザインをあしらった「讃岐うどん前掛け」を販売

 空前の「讃岐うどん巡りブーム」を背景に「うどん関連グッズ」もいろいろと作られる中、なかなかマニアックな商品が登場しました。

(5月10日)

「うどん前掛け」いかが 源平の里むれ、新土産として販売

 うどん粉専用袋のデザインをあしらった「さぬきうどん前掛け」が、高松市牟礼町の道の駅「源平の里むれ」で販売されている。…(中略)…前掛けは「うどん粉を販売して欲しい」という観光客の要望を受けてうどん粉について調べていた難波駅長が専用袋のデザインに感動し、商品化を企画。坂出の製粉会社「吉原食糧」の絵柄を使用した。サイズは縦57センチ、横45センチ、藍色の布に紅白の帯が付いた腰巻きタイプ。昭和を代表するうどん粉「ナンバードアー」のうどん職人、県産小麦を使った「さぬきの夢2000」の飯野山と讃岐平野、最高級品「白鳳」の二羽の鳳凰を描いた3種類がある。…(以下略)

 讃岐うどん用小麦粉は、かつてより「金魚」とか「雀」とか「緑あひる」とか「紫駱駝」とか、マニアが食いつきそうな“怪しい”ネーミングがいくつもありました。そんな中、ブームに乗って「緑あひる」の袋のデザインをそのまま使った前掛けとTシャツが商品化されてマニアの間で出回ったのですが、この「ナンバードアー」もなかなかのマニアックな着眼! 讃岐うどん巡りブームは、底知れぬ展開力を見せ始めています(笑)。

うどん関連のイベントや行事も花盛り

 うどん関連の定例イベントでは丸亀お城まつりの「全日本うどん選手権」と「丸亀素人手打ちうどん味自慢大会」、高松まつりの「さぬきうどん大食い選手権」、さぬき市の「どじょ輪ピックinさぬき」、こんぴらの「三麺交流」等々が例年通り開催。前年に始まった宇髙連絡船記念イベントの「まんでがん宇髙連絡船」と吉原食糧の「讃岐うどんタイムカプセル」も第2回が開催されました。その他、うどん店単位の小さなイベントもあちこちで行われているようで、いくつかが新聞で紹介されていました。また、数が多いので当欄では個別紹介を割愛していますが、うどんを使った慰問や接待、体験教室等はますます盛況のようで、この年も20件以上が新聞紙上で紹介されていました。

うどん関連広告は“新聞離れ”が定着してきた?!

 この年のうどん関連の新聞広告は、過去最低の62本でした。平成に入ってからのうどん関連広告本数の推移は、以下の通り。

平成元年(1989)…252本
平成2年(1990)…244本
平成3年(1991)…205本
平成4年(1992)…378本
平成5年(1993)…374本
平成6年(1994)…112本
平成7年(1995)…157本
平成8年(1996)…125本
平成9年(1997)…105本
平成10年(1998)…120本
平成11年(1999)… 85本
平成12年(2000)… 88本
平成13年(2001)… 66本
平成14年(2002)…102本
平成15年(2003)…120本
平成16年(2004)… 88本
平成17年(2005)… 76本
平成18年(2006)… 87本
平成19年(2007)… 68本
平成20年(2008)… 62本

 平成元年(1989)~5年(1993)にかけてが最多で、平成6年(1994)から一気に半減。平成11年(1999)に100本を切って、この2年は連続60本台まで減っているという数字です。この推移の背景については、

(1)90年代前半の広告ラッシュは、平成3年(1991)春のバブル崩壊で大手・中堅企業の新聞広告が激減し、その売上減をカバーするために地方の広告代理店が小口の広告を必死に集め始めたのが主原因ではないか?
(2)平成6年(1994)から広告本数が半減したのは、平成5年(1993)に『恐るべきさぬきうどん』第1巻が発行され、讃岐うどんの人気店がそれまで新聞広告に付き合ってきた「一般店」から新聞広告をほとんどしない「製麺所型うどん店」に移ってきたのが主原因ではないか?
(3)平成16年(2004)以降の広告本数の低迷は、情報発信媒体に「インターネット」が普及し始めて新聞広告の“氷河期”が始まったのが主原因ではないか?

というのが筆者の推測ですが、どうでしょう。

<県内うどん店>
【高松市】

「うどん田中」(高松市林町)…………5本
「さぬき麺業」(高松市松並町)………2本
「ふる里」(高松市春日町)……………2本
「ヨコクラうどん」(高松市鬼無町)…2本
「88うどん」(高松市常磐町)…………1本
「かな泉」(高松市大工町他)…………1本
「川福」(高松市大工町)………………1本
「うどん棒」(高松市亀井町)…………1本
「山田家」(高松市牟礼町)……………1本
「ふるかわうどん」(高松市木太町)…1本
「愉楽家」(高松市林町)………………1本
「たも屋」(高松市林町)………………1本 6月1日・林店オープン
「もり家」(高松市香川町)……………1本
「さぬきや」(高松市塩上町)…………1本
「てら屋」(高松市檀紙町)……………1本
「つるいち」(高松市鶴市町)…………1本
「のぶや」(高松市鶴市町)……………1本
「名もないうどん屋」(高松市香西東町)1本
「むら家」(高松市香西東町)…………1本
「北山うどん」(高松市鬼無町)………1本
「玉よし」(高松市国分寺町)…………1本
「玉吉」(高松市国分寺町)……………1本

【東讃】

「郷屋敷」(牟礼町)……………………1本
「陣内うどん」(東かがわ市松原)……1本

【中讃】

「てっちゃん」(坂出市西庄町)………9本
「めりけんや」(宇多津町)……………1本
「いきいきうどん」(坂出市京町)……1本
「まごころ」(丸亀市蓬莱町)…………1本
「さぬき麺輝屋」(丸亀市原田町)……1本
「一代」(善通寺市原田町)……………1本
「玉吉」(綾川町)………………………1本
「うどん家一」(丸亀市土器町)………1本
「塩がま屋」(宇多津町)………………1本

【西讃】

「将八」(観音寺市他)…………………2本
「まき」(観音寺市植田町)……………2本
「かなくま餅」(観音寺市植田町)……1本
「七宝亭」(観音寺市吉岡町)…………1本
「西野」(三豊市詫間町)………………1本

【県外うどん店】

さぬきめん坊(京都市中京区)…………1本

<県内製麺会社>

「藤井製麺」(三木町)…………………3本
「合田平三商店」(観音寺市豊浜町)…1本
「日糧」(三豊市詫間町)………………1本

<その他うどん業界>

「さぬきうどん協同組合」………………1本

(平成21年に続く)

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